まだ紙やってんの?(なんて、口が裂けても言えません)

2017.09.22

坂上 洋一
メディアプロデューサー

紙の編集を10年以上やってました

はじめまして。2017年7月からメディアプロデューサーとして働いている、坂上です。 まだ入社2ヶ月のペーペーです。まだ「メディアプロデューサー」というカタカナの肩書に慣れません。

大学を出て(≠卒業)から約13年、ずっと紙の雑誌をつくってきました。
物心がついたときからクルマが好きだったのと、雑誌も好きだったので、 「クルマ雑誌の編集部に入ったら、いろんなクルマ乗れていいなあ」みたいな、実に安直な入り方でした。
どのくらい安直だったのかというと、面接のときに 「雑誌の編集って何やるんですか?」って聞いたくらいです。

基本的には、やりたいことをやりたいようにやらせてくれる、とてもありがたい出版社でした。
クルマ雑誌に約10年、アウトドアやそのほかライフスタイル関係の雑誌を約3年 つくらせてもらったのですが、とても自由に「仕事という名の趣味」を続けさせてもらいました。
どのくらい自由だったのかというと、ほとんど下道で日本一周したり(1ヶ月運転しっぱなし)、
屋根も窓もドアもエアコンもないクルマで韓国に行ったり(しかも韓国で壊れた)、
普通ならそうそう会えないような憧れの人に会って取材したり (さすがにサインをもらったことはありません)…といった感じです。


▲日本中、クルマで走ってました(仕事で)。photo by makoto yamada

あまりにも楽しいので、印刷所のある志村坂上駅までデータを運ぶために1日3往復したり、
徹夜明けで大阪までクルマで日帰り取材に行ったり、
会社に何泊もしたり、 月に一度も休みがなくても、全然平気でした。
出版業界以外の人がこんなことを聞くと「それブラックでしょ!」と思われるかもしれませんが、 本人がやりたくてやってる(全部がそうだとは言いませんが)ので、案外平気なんです。

紙→ウェブのワケ

そんなに紙で好き勝手やってた編集者が、なんでまたウェブの世界に? と思われるかもしれません。
実際、僕が転職することを伝えたときも「なんでウェブなの?」って聞かれたことも、けっこうありました。

僕がウェブの業界に入ろうと思った理由は、けっこうシンプルです。

  • 理由1:(いまさらながら)今後はウェブがメディアのフォーマットになると思ったから
  • 理由2:(紙もおもしろいけど)ウェブもおもしろそうだから

この数年間、雑誌づくりにジレンマを感じていました。 おもしろいと思ったこと、伝えたいと思ったことを、 けっこう全力で取材して、けっこう頑張って本にしていたつもりです。
でもそれをきちんと伝えられなかった。その理由は死ぬほどあります。
もちろん、僕の力不足によるところもたくさんあるんですが、 僕にはどうしようもない理由に(超いまさらながら)気づいたんです。

それは、本がアナログであること。

たとえば、ひとつの記事が、1万人にものすごくササる内容だったとして、 その1万人のうち、どれだけの人にリーチできるのか。 その記事にたどり着くには、本屋に行き、僕がつくった本を手に取って、 そのページに目を止めてもらわなければいけません。
それって結構、天文学的確率とまではいかないまでも、ちょっと大変だなあ、と思ったんです。
新聞、雑誌、ラジオ、テレビ。 これらのメディアは、棲み分けできていて共存できる関係です。
テレビと紙媒体は、見る場所も、見方も、伝えられる内容も違います。

でもインターネットは、そのすべてを表現できるフィールドです。 インターネットは、今や新聞より雑誌よりラジオよりテレビより、いつでも手軽に見られます。 インターネットは、出版社やテレビ局のような、既得権益が存在しないフィールドです。
もちろん、新聞、雑誌、ラジオ、テレビにも優位性はありますし、 そう簡単になくなるものではないでしょう。 ただし残ったとしても、それは伝統芸能のような形かもしれません (もちろん伝統芸能が悪いと言っているわけでは全くなく)。

僕がおもしろそうだと感じたのは、紙でやり続けることより、ウェブに挑戦してみることでした。

ウェブならではの醍醐味、あります

SEO、MAU、DAU、クロール、アナリティクス、スニペット…
スマホすら持っていない僕は、入社してしばらくは社内で飛び交う言葉の意味を理解することはおろか、 聞き取ることすら困難でした。

社内の環境も、180度違います。 机には引き出しすらなく、筆記用具はボールペンとマジックが1本ずつ。 自分の持ち物は、布のバスケット1つ分だけ。
(今までは、会社に寝袋を常備し、机にはラフ用紙とプレスリリースと資料本がうず高く積まれていました…)
電話も会社に1つだけ。プリンターも家庭用のちっこいやつが1つだけ。  
最初の一ヶ月は、ほとんどすべてのことが何が何だかわからず、 シマウマの群れに1頭だけ紛れ込んだヌーの気分でした。


▲あれ、オレって、もしかして浮いてる? byヌー

でも2ヶ月経って、ようやく少しだけ慣れてきた気がします。 紙メディアをやってきたノウハウも、けっこう生きる場面があることが、わかってきました(今、生かせているわけではありません)。
想像していたとおり、いや、想像していた以上に、ウェブの世界はおもしろくて、 ウェブにはウェブならではの醍醐味もあります。
(↑気になったあなた、ぜひエバーセンスでお話ししましょう!

唯一いま残念なのは、取材がなく、外の人に会う機会がほとんどないこと(おかげで名刺がまったく減りません)。
でも、近いうちにやりますよ。絶対に実現させます。エバーセンスは、チャレンジは大歓迎!の会社ですから(ですよね?社長!)。

最初に「メディアプロデューサーっていう肩書に慣れない」と書きましたが、実はものすごく的を射た名前だなあとも思っています。 僕が今やっているのは「メディアを作る仕事」。自分でメディアを作り出すことができるのだから、目の前に未開の地が広がっている!ってことです。

もちろん、紙のおもしろさは否定しません。「まだ紙やってんの?」なんて、絶対に言えません。

でも、「紙だけがメディアだ」って考えるのは、違うんじゃないかなあとも思います。
「ウェブで経験を積んだ上で、紙の本をつくったら、どんな本になるんだろう?」なんて、思ったりもします。

僕は今、あらゆることにワクワクし、ごきげんに過ごしています。


▲オフィスはマジで素晴らしい環境。外に出られなくたって全然平気さ(ちょっと強がり)。