帝王切開での出産を控えたママにとって、手術にかかる費用は気になりますよね。経腟分娩に比べて高額になると心配する人も多いようですが、健康保険による制度を利用して費用を抑えることができるのをご存知でしょうか。
今回は、帝王切開のママを助ける「高額療養費制度」について、返還される金額や手続き方法などをご紹介します。
帝王切開の費用はどれくらい?
帝王切開にかかる手術の費用は、厚生労働省が策定している診療報酬によって決まっています。
診療報酬は2年おきに改定されていますが、令和4年4月時点の診療報酬点数表では、緊急帝王切開が22万2,000円、選択帝王切開(予定帝王切開)が20万1,400円となります(※1)。
これに通常の分娩費用もかかるため、経腟分娩よりも医療費が高くなります。
帝王切開は高額療養費制度の対象になる?
保険が適用される診療で、費用が一定額を超えると「高額療養費制度」と呼ばれる制度が適用されます。
高額療養費制度とは、1ヶ月間に病院や薬局の窓口で支払った世帯内の総医療費が上限額を上回ると、超えた金額分が払い戻される制度です。
手術が必要な帝王切開は健康保険の適用となるため、手術を受けた月の費用は高額療養費制度の適用に必要な額を超えることが多いです(※2,3)。
帝王切開に高額療養費制度を適用したら自己負担額はいくら?
高額医療費制度は、世帯の年収によって自己負担上限額が異なります。
帝王切開を受けた月の医療費(保険適用前)が50万円であった場合、以下のようになります(※3)。
自己負担上限額
● 年収約370万円未満:57,600円
● 年収約370万円〜770万円:82,430円
● 年収約770万円〜1,100万円:166,820円
● 年収1,100万円以上:249,180円
医療費が50万円であった場合、自己負担額は3割負担で15万円となります。
年収約370万円未満の場合は約9万円、770万円未満の場合は約7万円が返還されますが、年収が770万円を超える場合、15万円全額を負担する必要があります。
帝王切開で高額療養費制度を利用するときの注意点は?
帝王切開で出産したママにはありがたい高額療養費制度ですが、いくつか注意点があります(※3)。
出産時の費用で含まれないものがある
高額療養費制度が適用されるのは健康保険対象内の費用になります。そのため、健康保険対象外となる入院時の食費や差額ベッド代などは含みません。
月をまたいだ場合、医療費を合算できない
高額療養費制度は当月1ヶ月の間の高額医療費が対象になるため、2つの月にまたいで入院した場合、医療費を合算しての計算ができません。
そのため、例えば3月31日に手術をしたとすると、手術日が特に高額なため、3月分は高額療養費制度を申請して支給を受けることができますが、4月1日以降の入院費用はそれほど高くならないため、4月分は通常通りの支払いが必要となる場合があります。
帝王切開での高額療養費制度の手続き方法は?
ここでは、帝王切開で出産する場合の高額療養費制度の申請手続き方法をご紹介します。
前もって帝王切開で出産することが決まっている場合は、出産前に申請して「限度額適用認定証」あるいは「限度額適用認定・標準負担額減額認定証」をもらっておくと窓口での負担金が小さくなりますよ(※3)。
高額療養費制度の申請に必要なもの
● 高額療養費支給申請書
● 病院の領収書
上記の他にも健康保険証や印鑑などが必要になることもあるので、事前に加入している公的医療保険の問い合わせ先などに確認しておきましょう。
もし健康保険証としてマイナンバーカードを活用している場合は、自動的に上限額までの請求となり申請は不要となります。
事前に申請するときの流れ(※4)
1. 申請先の窓口で申請書をもらい、記入する
2. 申請書を提出する
3. 限度額適用認定証を受け取る
4. 出産後、病院での支払い前に、限度額適用認定証と保険証を提出する
産後に申請するときの流れ(※5)
1. かかった医療費の総額のうち、3割を医療機関で支払う
2. 申請先に病院の領収書を添付した申請書を提出する
3. 高額療養費が口座に振り込まれる
帝王切開は高額療養費制度で負担額を減らそう
帝王切開というだけで気が重いなか、費用のことも気になってストレスを感じてしまう妊婦さんも多いと思います。しかし、高額療養費制度によって医療費だけでも軽くなるのであれば、非常に助かりますよね。
お産の経過次第では、緊急帝王切開に切り替わることがあります。事前に手続きのやり方を確認しておくと安心ですよ。
※1 厚生労働省「診療報酬情報提供サービス」
※2 法務省「第4章 出産・子育て」
※3 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ(平成30年8月診療分から)」
※4 全国健康保険協会「医療費が高額になりそうなとき」
※5 全国健康保険協会「高額な医療費を支払ったとき(高額療養費)」