産後しばらくは、体を回復させながら赤ちゃんのお世話に追われて大変ですよね。そんななかで、夫婦生活は産後いつから再開してもいいのか気になる人も多いかもしれません。
今回は、産後の夫婦生活について、再開してもいい時期や気をつけたいこと、痛みや出血があったときはどうしたらいいかなどをご紹介します。
産後の夫婦生活はいつから大丈夫?
産後に夫婦生活を再開できる時期の目安は、1ヶ月健診で「体の回復経過が順調で妊娠前と同じ生活をしてもいい」と医師から許可が出た後です。
産後の体の回復には個人差があり、分娩時にできた傷が治っていなかったり、悪露が続いていたりするときは、妊娠前と同じ生活をするのはまだ難しいと診断されることもあります。
そういった場合は、いつからなら夫婦生活を再開してもいいか確認し、医師の指示に従うようにしてくださいね。
なお、母体が妊娠前の状態に戻るまでの6〜8週間を「産褥期」といい、1ヶ月健診の時点でも、まだ完全に回復はしていません。
1ヶ月健診で許可が出たとしても、体調がすぐれないときは無理をしないようにしましょう。
産後は夫婦生活をしても妊娠しにくい?
一般的に、産後数ヶ月の間は、ホルモンの影響で妊娠しにくい状態といえます(※1)。
生理が再開するために必要なホルモンは、産後8週間ほどで妊娠前の状態に戻ります。
ただ、母乳を作るホルモンである「プロラクチン」は排卵を抑制する働きがあります。そのため、母乳育児をしているとプロラクチンの分泌量が増えて、ミルク育児の場合に比べて生理再開が遅くなり、妊娠しにくい期間が長くなる傾向があります。
産後の生理の再開時期は個人差が大きいですが、大まかな目安は以下のとおりです。
● 完全母乳育児
約1/3の人が産後4ヶ月までに再開します(※2)。ただし個人差が大きく、産後6ヶ月以降に再開する人もいます。
● 混合育児
母乳を与える頻度が多いほど完全母乳育児の場合と近い時期に、少ないほど完全ミルク育児に近い時期に、生理が再開します。
● 完全ミルク育児
平均で産後2ヶ月ほどで、9割以上の人が産後4ヶ月までに生理が再開します(※2)。
しかし、生理が再開する前や授乳中であっても、妊娠する可能性はゼロではありません。産後初めての生理は無排卵性のことが多いものの、なかには排卵を伴うケースもあるからです(※1)。
また、プロラクチンの分泌量には個人差があり、母乳育児をしていても早めに生理が再開する人もいます。
妊娠を望まない場合は、生理が再開しているか母乳育児をしているかに関わらず、必ず避妊をして夫婦生活を行いましょう。
産後はピルで避妊をしてもいいの?
避妊方法のひとつに低用量ピルがありますが、母乳育児中に低用量ピルを服用するのはやめてください。
日本産科婦人科学会は、母乳育児中に低用量ピルを飲むと、母乳が出にくくなったり、母乳が出る期間が短くなったりして赤ちゃんの成長に影響が及ぶ可能性があるため、少なくとも産後6ヶ月は低用量ピルを服用しない方がいいとしています(※3)。
なお、母乳育児をしていない場合でも、産後4週間は低用量ピルを服用してはいけません(※4,5)。妊娠前に低用量ピルを服用していて産後に再開するときは、必ずかかりつけの婦人科を受診してからにしてくださいね。
産後の夫婦生活についてパートナーと話すべきことは?
いざ夫婦生活を再開しようとしても、産後はホルモンバランスの変化や育児疲れで性欲が減退し、「それどころじゃない…」ということもあります。同時にパートナーも、子どもが生まれた後の夫婦生活について、どうしたらいいのか疑問や悩みを持っているかもしれません。
なかには、子どもの誕生を機に、ママよりもパパの方が夫婦生活に消極的になるケースもあります。また、産後の時期によっても、ママ・パパそれぞれの性欲や気持ちは変化していくものです。
赤ちゃんのお世話に追われて忙しい時期ですが、産後の夫婦生活をどのようにしていきたいか、家族計画も含めてパートナーと話す時間を作るようにしましょう。お互いの気持ちや悩みなどを伝えながら、一緒に考えていけるといいですね。
産後の夫婦生活で出血や痛みがあったら?
出産によって、腟の内側は軟らかくなり伸びています(※1)。また、個人差はありますが、妊娠前と比べて腟内の潤いが少なくなる人もいます。
そのため、産後の性交渉によって、痛みを伴ったり、傷ついて出血したりすることがあります。
一時的な痛みや軽い出血であれば、産後特有のもので病気によって起こっているわけではないため、それほど心配する必要はありません。
ただし、以下のような症状が出た場合は、婦人科系の病気の可能性もあるので、早めに病院を受診してください。
- 性交渉後に出血が止まらない
- 性交渉のたびに腹痛がある、もしくは強くなっていく
- 性交渉後に腹痛を伴った出血が起こる
産後の夫婦生活は体の回復を優先して
産後の夫婦生活を再開する際は、まずはママの体の回復具合を優先しましょう。
出産後しばらくはホルモンバランスが不安定で、排卵や生理の再開も個人差があります。産後の夫婦生活や次の妊娠などについて不安や疑問があるときは、かかりつけの産婦人科で相談してみてくださいね。
監修専門家:助産師 佐藤 裕子
日本赤十字社助産師学校卒業後、大学病院総合周産期母子医療センターにて9年勤務。現在は神奈川県横浜市の助産院マタニティハウスSATOにて勤務しております。妊娠から出産、産後までトータルサポートのできる助産院では、日々多くのママたちからの母乳相談や育児相談を受けています。具体的に悩みを解決でき、ここにくると安心してもらえる、そんな助産師を目指しています。
※1 株式会社メディックメディア『病気がみえるvol.10 産科 第4版』pp.366,370
※2 メジカルビュー社『プリンシプル産科婦人科学 産科編 第3版』p.172
※3 日本産科婦人科学会「低用量経口避妊薬の使用に関するガイドライン(改訂版)」
※4 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 トリキュラー錠21/トリキュラー錠28 添付文書 p.1
※5 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 マーベロン21/マーベロン28 添付文書 p.1