【妊婦の血圧】妊娠中の平均値や正常値は?高血圧・低血圧のリスクは?

妊婦健診では毎回、血圧測定が行われます。血圧を測って「高い」「低い」といわれても、そもそも妊娠中の血圧の平均値や正常値がわからない妊婦さんも多いのではないでしょうか。

今回は妊娠中の血圧について、平均値や正常値、血圧が高い・低いの基準、高血圧・低血圧のリスクなどを説明します。

妊婦健診で血圧を測る理由は?

血圧

妊婦健診で血圧を測定する主な目的は、「妊娠高血圧症候群」の早期発見です。

妊娠高血圧症候群とは、妊娠中になんらかの原因で高血圧になる疾患で、妊婦さんの20人に1人の割合で起こるとされています(※1)。

発症すると血管障害や臓器障害を起こし、悪化した場合、母子の命に関わる危険があるため、健診時に血圧が高くなっていないかを調べるのです。

妊娠高血圧症候群は、むくみや頭痛といった自覚症状、尿たんぱくが出るなどの兆候が現れるため、血圧以外の項目と合わせて管理します。

妊婦の血圧の平均値・正常値は?高血圧の数値は?

妊娠中の血圧の平均値には個人差や妊娠週数ごとの違いがありますが、収縮期血圧が113〜117mmHg、拡張期血圧が61〜67mmHgという研究結果が報告されています(※2)。

妊娠中の血圧は「至適血圧」「正常値(正常血圧)」「正常高値血圧」「妊娠高血圧症候群」に分類され、ここから正常値や注意が必要な数値を知ることができます(※3)。

至適血圧:120/80mmHg未満

妊娠中に一番望ましい血圧です。

● 収縮期血圧...120mmHg未満
● 拡張期血圧...80mmHg未満

母体や赤ちゃんに負担をかけず、脳梗塞や心臓病、肝臓病といった病気を引き起こすリスクが低い状態です。ただし、あまりにも値が低いと低血圧になるため気をつけましょう。

正常値(正常血圧):120〜129/80〜84mmHg

妊娠中の血圧の正常値と定められています。

● 収縮期血圧...120〜129mmHg
● 拡張期血圧...80〜84mmHg

この範囲内であれば問題ないので、安心してくださいね。

正常高値血圧:130〜139/85〜89mmHg

妊娠高血圧症候群の一歩手前とされる血圧です。

● 収縮期血圧...130〜139mmHg
● 拡張期血圧...85〜89mmHg

注意しなければならない値なので、食事など日々の生活に気をつけましょう。

妊娠高血圧症候群:140/90mmHg以上

妊娠中に以下の数値であると、「妊娠高血圧症候群」と診断されます。

● 収縮期血圧...140mmHg以上
● 拡張期血圧...90mmHg以上

妊娠高血圧症候群には、妊娠20週以降に初めて高血圧を発症し分娩後12週までに正常に回復する「妊娠高血圧」や、妊娠前または妊娠20週までに高血圧と蛋白尿がみられ妊娠20週以降に両症状あるいはどちらかが悪化する「加重型妊娠高血圧腎症」など、いくつかの種類があります(※4)。

収縮期血圧が160mmHg以上か、拡張期血圧が110mmHg以上かのどちらかに該当すると、重度の妊娠高血圧症候群と診断されます(※5)。

妊婦の高血圧のリスクや胎児への影響は?

血圧が少し高いくらいであれば、すぐにママの体や赤ちゃんに悪影響を与えることはありません。

ただし、妊娠高血圧症候群を発症すると、前述の通り、ママの脳や肺、肝臓、腎臓など重要な臓器に障害が起こります。また、常位胎盤早期剥離や赤ちゃんの発育不全・機能不全などで妊娠を維持できなくなる恐れがあります。

妊娠高血圧症候群と診断された場合は、基本的に血圧の経過観察を行います。

食事内容も1日のカロリー摂取量を踏まえて配分し、食べ過ぎないことが大切です。

妊娠中に高血圧になると出産後も高血圧が続く可能性があるため、妊娠中から血圧管理には気をつけましょう。

妊婦の低血圧のリスクは?予防法は?

妊娠初期はホルモンの働きで血管が広がり、血圧が下がりやすくなります。特に立ち上がったときなどに、立ちくらみやめまいが起きてしまい、転倒してお腹をぶつける危険があります。

妊娠初期に血圧が下がるのは生理的な変化のため予防するのは難しいですが、立ちくらみやめまいを起こさないために、長時間立ち続けるのは控え、起き上がりなどの動作はゆっくりするように心がけましょう。

また、妊娠中期から後期は、仰向けでいるときに、大きくなった子宮によって下大静脈が圧迫され血圧が低下する「仰臥位低血圧症候群」を起こすことがあります。

仰向けで寝ているときに、脈が早くなる、吐き気や冷や汗が出る、などの症状が出たら、体の左側を下にして寝ると改善します。

仰向けになるときは、まっ平ではなく上半身を少し起こした姿勢にすると、仰臥位低血圧症候群を防ぐことができますよ。

低血圧だけでなく、妊娠中の健やかな生活のためにも、バランスのとれた食事と適度な運動も大切です。体調と相談しながらできる範囲で取り組んでみてくださいね。

妊娠中の高血圧で病院へ行く目安は?

妊娠高血圧症候群は母子ともにリスクがある疾患なので、血圧が高めの人は以下のような症状が現れたら、かかりつけの産婦人科を受診してください。

● むくみがひどい
● 体重が急激に増加した
● 赤ちゃんの胎動を感じにくい
● 頭痛がする
● 目がチカチカする

医師から自宅でも血圧を測定するようにと指示を受けた場合は、自動血圧計などで1日3回食前に測定して、急な低下や上昇があったときは早めに相談することを心がけましょう。

妊婦健診で定期的に血圧をチェックしよう

血圧の数値が前回の健診時より高かったり低かったりして心配なときは、かかりつけの医師や助産師に相談しましょう。

血圧測定は血圧異常の早期発見につながるので、妊娠中は定期的に妊婦健診を受けることが大切です。母子手帳の記録を確認して、妊娠中の血圧数値を意識していけるといいですね。

監修専門家:助産師 佐藤 裕子

助産師 佐藤裕子さん
日本赤十字社助産師学校卒業後、大学病院総合周産期母子医療センターにて9年勤務。現在は神奈川県横浜市の助産院マタニティハウスSATOにて勤務しております。妊娠から出産、産後までトータルサポートのできる助産院では、日々多くのママたちからの母乳相談や育児相談を受けています。具体的に悩みを解決でき、ここにくると安心してもらえる、そんな助産師を目指しています。

※1 日本産科婦人科学会「妊娠高血圧症候群」
※2 東京医療保健大学「高年初産婦と35歳未満初産婦の妊娠期の血圧および体重の相違」p.36
※3 国立成育医療研究センター「妊娠と高血圧」
※4 日本妊娠高血圧学会「妊娠高血圧症候群の診療指針2021」p.8
※5 株式会社メディックメディア『病気がみえるvol.10 産科 第4版』p.104

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