子どもは体温調節機能が未熟なため、2〜3歳くらいまでの間はよく熱を出します。でも、突然40度近い高熱を出したら心配になりますよね。
そこで今回は子どもの高熱について、原因や病院へ行くタイミング、家庭での対処法などをご紹介します。
子どもが高熱を出す原因は?40度近いときは?
2〜3歳頃までの子どもは体温が高くなりやすく、体調が悪いときのサインとして熱を出すことがよくあります。
子どもが発熱する原因は、ほとんどが風邪のウイルスによるものです。体に侵入したウイルスと戦うための免疫反応として熱が出るので、発熱自体は悪いことではありません。
しかし、40度近い高熱の場合はよくある風邪のウイルスによるものではなく、細菌感染症やウイルス感染症といった他の病気が原因の場合があります。
子どもが39度・40度の高熱…疑われる病気は?
ここでは、子どもが39〜40度の高熱を出したときに疑われる病気の代表的なものをご紹介します。
インフルエンザ
39~40度の急な発熱と頭痛、関節痛、倦怠感といった症状があらわれます(※1,2)。その後、喉の痛みや咳、鼻水といった症状が伴い、機嫌が悪くなったり食欲がなくなったりすることもあります。
ヘルパンギーナ
乳幼児が感染しやすい夏風邪の一種で、突然39度以上に発熱し、喉に赤い発疹ができ、やがて水ぶくれになります(※1,3)。
熱がなかなか下がらない場合は、髄膜炎という重い合併症を起こしていることもあるため注意が必要です。
RSウイルス
2歳までにほとんどの子どもが一度は感染し、高熱に加えて鼻水と咳が続きます(※1,4)。
軽い風邪症状で済むこともありますが、生後6ヶ月以下の赤ちゃんや基礎疾患がある子どもが感染すると、細気管支炎や肺炎を引き起こすリスクが高くなります。近年では2〜3歳の子どもでも悪化する傾向があります。
咽頭結膜熱(プール熱)
39~40度の高熱や喉の痛み、目のかゆみや充血などの症状が起こります(※1,5)。夏に流行し、プールでのタオルの共用や接触によって感染することが多いので、プール熱と呼ばれます。
溶連菌感染症
発症すると38~40度の高熱が出るほか、頭痛や喉の痛みなどがあらわれます(※1,6)。喉が赤くなり、舌の表面にブツブツとした赤みができることが多くあります。体に発疹が出ることもあります。
子どもの高熱で受診するタイミングは?救急病院に行く判断は?
高熱が出ていても発熱以外の症状がなく、水分や食事がとれて眠れていて機嫌が悪くなければ、しばらく様子をみて通常の診療時間内に受診しましょう。
ただし、以下のような症状が見られた場合には、速やかにかかりつけの小児科や病院を受診する必要があります。夜間や休日は救急外来を受診してください。
● 水分を受けつけず、尿がほとんど出ない
● 意識がもうろうとしている
● 声をかけたり叩いても反応しない
● 顔色が悪い
● 呼吸が苦しそう
● 痙攣が起こっている
子どもが高熱を出すと焦ってしまうものですが、できるだけ冷静に様子を観察し記録しておき、受診の際に医師にしっかり伝えましょう。
子どもの高熱で観察すべきポイント
● いつ頃から発熱しているか
● 最高で何度くらいまで上がったか
● 熱が上がったり下がったりしているか
● 発熱以外の症状はあるか
● 水分補給はできているか
● 尿が出ているか など
発熱以外の症状がわかると原因を特定しやすく、治療がスムーズに進みます。
子どもが高熱のときの家庭での対処法は?
子どもが高熱で苦しそうにしているときには、家庭でできる対処法を実践しましょう。以下のような方法で、ウイルスと戦う体をサポートしてあげることが大切です。
熱にあわせて環境を整える
熱の上がり始めは、手足が冷たかったり寒気があったりします。厚着をさせたり、掛け布団を重ねたりして体を温めてあげましょう。
熱が上がり切ったあとは、熱が下がり始めます。手足が温かくなったり汗をかいたりするので、薄着をさせたり薄手の布団を掛けたりして調整してください。
体を冷やす
高熱で体力を奪われてよく眠れないときには、氷や保冷剤などを薄いタオルで包んで体を冷やしてあげると、落ち着いて寝れることもあります。
おでこではなく、脇の下や首筋、足首など太い血管が通っているところを冷やすようにしましょう。
直接風を当てなければ、扇風機を使ってもよいですよ。
こまめに水分補給をする
高熱が出ると体が熱くなったり汗をかいたりするため、脱水症状になりやすい状態です。水や白湯、子ども用の経口補水液などで、こまめに水分補給をしましょう。
水などを嫌がるときは、ジュースや果物でもかまわないので、脱水症状には十分に気をつけてください。
体を清潔に保つ
熱が下がり始めると汗をかくため、パジャマをこまめに変えたり体を拭いたりして、皮膚を清潔に保つようにしてあげてください。
また、高熱が出ていると口の中が乾きやすく口内の炎症を起こしやすいので、食後は必ず歯磨きやうがいをして、口の中をきれいに保ちましょう。
子どもの高熱は解熱剤を使ってもいい?
子どもが高熱でつらそうにしていると、解熱剤で熱を下げてあげたくなるかもしれません。
しかし、発熱は細菌やウイルスに対する体の防衛反応なので、解熱剤で無理に下げる必要はありません。自然に熱が下がるまで待つのが一番です。
ただ、高熱が続いて体力の消耗があまりに激しく、食事や水分がとれない、夜に眠れない、ぐったりしているといった場合は、医師に相談し必要に応じて解熱剤を処方してもらいましょう。
用法・用量を守って正しい使い方をすれば、高熱のつらさを緩和してあげられますよ。
自己判断で昔処方された薬や市販の子ども用の解熱剤を使用するのはやめてくださいね。
子どもの高熱には慌てず冷静に対応を
子どもが高熱を出したら、ほかの症状は出ていないか、食欲はあるかなどをしっかり観察しながら、しばらく様子をみるべきなのか病院へ行くべきなのかを判断しましょう。
高熱が出たときに、呼吸が早い、意識がもうろうとするなど「いつもの風邪の発熱とは違う」と気づいた場合は、すぐに小児科や救急病院を受診してくださいね。
監修医師:小児科 武井 智昭
日本小児科学会専門医。2002年、慶応義塾大学医学部卒。神奈川県内の病院・クリニックで小児科医としての経験を積み、現在は神奈川県大和市の高座渋谷つばさクリニックに院長として勤務。内科・小児科・アレルギー科を担当しています。感染症・アレルギー疾患、呼吸器疾患、予防医学などを得意とし、0歳から100歳まで「1世紀を診療する医師」として診療を行っています。
※1 日本小児科学会「学校、幼稚園、保育所において予防すべき感染症の解説」pp.11,19,22,25,30
※2 厚生労働省「インフルエンザQ&A」
※3 NIID国立感染症研究所「ヘルパンギーナ」
※4 国立研究開発法人 国立成育医療研究センター「RSウイルス感染症にご注意ください」
※5 厚生労働省「咽頭結膜熱について」
※6 NIID国立感染症研究所「A群溶血性レンサ球菌咽頭炎とは」