出産したらやってみたいことがたくさんありますよね。産後の体の回復具合や外出できる時期などが気になっているのではないでしょうか。
そこで今回は、一般的な産褥期の経過や、外出するときに気をつけるポイントについてご説明します。
【産後の週別】産褥期の過ごし方って?外出はいつから?
産褥期とは、出産後にママの体が妊娠前の状態に戻るまでの産後6~8週間の時期をいいます(※1)。
妊娠〜出産を通してママの体は大きく変化していて、妊娠前の状態に戻るまでには時間がかかります。
ここでは、産後の週別に産褥期の過ごし方についてご説明します。産褥期の回復スピードには個人差があるので、あくまでも目安として参考にしてくださいね。
産後1週目
病院や産院を退院し、自宅で赤ちゃんとの生活がスタートします。
産褥期の回復を早めるのには、赤ちゃんのお世話や身の回りのこと以外は、横になって休むことが大切です。いつでも横になれるように布団やベッドメイクはそのままにしておき、安静にして過ごしましょう。
産後2週目
夜中の授乳などで、疲れが溜まる頃です。家事はなるべくパートナーや家族に任せたり、自治体のサポートや産後ケア施設を使用したりして、体を休めることを優先させましょう。
産後3週目
体調がよければ、短時間の軽い家事を行えるようになります。疲れを感じたらすぐに横になれるように、この頃もまだ布団やベッドメイクはそのままにしておいてもいいでしょう。
1ヶ月健診後
産後の1ヶ月健診後は、無理のない範囲で徐々に普段の生活に戻してもいい時期です。健診で許可が出たら、浴槽に浸かったり、買い物や散歩などの外出をしたりすることができるようになります。
しかし、夜間の授乳による寝不足などで疲れを感じやすく、子宮もまだ回復の途中段階にあります。激しい運動などは避け、体調を最優先にした生活を送るようにしましょう。
産褥期の外出で気をつけるポイントとは?
ここでは、1ヶ月健診以降の産褥期に外出するときに、気をつけるべきポイントについてご説明します。
短時間で済ませる
産後1ヶ月が経っていても、ママの体は完全に回復しきったわけではありません。
少しでも体調が優れないときは外出を控え、体調に合わせて2〜3時間で切り上げるようにしましょう。体に負担がかかりすぎないようにしてくださいね。
はじめはパートナーや家族と一緒に出かける
外出中に急に体調が悪くなるなど、思わぬハプニングが起こることもあります。万が一に備えて、はじめはパートナーや家族に付き添ってもらって外出するのがおすすめです。
赤ちゃんも一緒に外出する場合は、抱っこやお世話も必要になるのでサポートがあると安心ですよ。
重い荷物は持たない
女性は妊娠・出産によって骨盤まわりにトラブルが起こりやすいといわれています。
重い荷物を持つとさらに体に負担がかかるため、産褥期はパートナーや家族に協力してもらったり、ネットスーパーを利用したりなど工夫をしてくださいね。
車の運転はなるべく控える
車の運転中に具合が悪くなっても、すぐに停車できるとは限りません。
そのため、産褥期を過ぎて体調が安定するまでは車の運転を控え、タクシーを利用したり、パートナーや家族に送り迎えをお願いしたりする人が多いようです。
体の回復を早める産褥期の過ごし方とは?
育児には体力が必要なので、少しでも早く体調を回復させたいですよね。ここでは、産後の回復を早めるための過ごし方をご紹介します。
産後の体の回復スピードには個人差があるので無理はせず、できることから取り入れてみてくださいね。
産褥体操をする
産後しばらくは運動できませんが、「産褥体操」であれば産後すぐから始められます。
産褥体操とは、呼吸方法や寝ながらできる足の運動のことで、体への負担が小さく血行を良くして体の回復を早めてくれますよ。
バランスのいい食事をする
栄養バランスの取れた食事も、産後の体力を回復する秘訣です。特に母乳育児の場合は、妊娠前と比べて1日350kcal多く摂取する必要があります(※2)。
惣菜や冷凍食品なども活用しながら、1日2回以上、主食・主菜・副菜の3つを揃えた食事ができるように意識してみましょう(※3)。
陰部を清潔にする
産後すぐは体力がなく免疫力も落ちているので、感染症や病気にかかりやすくなっています。弱っている産褥期に感染症にかかると、普段よりも回復に時間がかかってしまうことも。
特に、出産時の会陰切開や帝王切開の傷口から細菌が入らないように、清潔を保つように心がけてください。
産褥パッドの交換は2〜4時間が目安ですが、商品によって異なるため確認しておきましょう。トイレのあとは、清浄綿やトイレの温水洗浄を使用してくださいね。
産褥期に性行為はしてもいい?
産後の回復を早めるためにも、性行為を行うのは産後の1ヶ月健診を終えて医師の許可が出てからにしましょう。
健診で問題がなければ再開してかまいませんが、もし回復が遅れているなどの問題があるときは、完治するまで控えてください。
産褥期に起こりやすいトラブルは?
産褥期では、過ごし方に気をつけていても、以下のような心身のトラブルが起きることがあります。
子宮復古不全
妊娠・出産によって大きくなった子宮は、一般的に通常1ヶ月ほどで妊娠前の大きさに戻ります(※4)。
しかし、産後に子宮が元の大きさや硬さに戻らず回復が悪い状態を、「子宮復古不全」といいます。
子宮復古不全の場合、赤褐色の悪露が1ヶ月過ぎても続いたり、ときにはレバーのような大きな血の塊が出たりすることもあります。
悪露の状態が改善されないときは早めに産婦人科を受診してくださいね。
マタニティブルーズ
産後はホルモンバランスが急激に変化するため、心が不安定になりやすいです。産褥期に一時的に起こる情緒不安定な状態のことを「マタニティブルーズ」といいます(※1)。
「涙もろくなる」「気分が落ち込む」「疲労、不安、緊張を感じる」などの症状が出やすく、多くの場合は2週間ほどでおさまることが多いとされています(※1)。
産後うつ
産後に「何に対しても興味や喜びを感じない」といったひどく憂うつな気分が2週間以上続く状態を「産後うつ」といいます(※1)。
産後の急激なホルモンバランスの変化や育児へのプレッシャー・不安によるストレス、周囲のサポート不足などが原因で、産後2〜4週頃に発症することが多いと言われています(※5)。
眠れない、食欲がない、不安が続くというときは、1ヶ月健診を待たずに産院やサポートセンターなどへ相談するようにしてくださいね。
産褥期はしっかり休もう!
産後すぐは、ママになった自覚から「赤ちゃんのために頑張ろう!」と肩に力が入ってしまいがちですよね。
しかし、産褥期のママは出産という大仕事を終えたばかりで、体も心もまだまだ回復途中です。
育児や家事を無理にがんばろうとせず、パートナーや家族と協力しながら、しっかり体と心を休めながら過ごしてくださいね。
監修医師:産婦人科医 藤東 淳也
日本産科婦人科学会専門医、婦人科腫瘍専門医、細胞診専門医、がん治療認定医、日本がん治療認定医機構暫定教育医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医で、現在は藤東クリニック院長。専門知識を活かして女性の快適ライフをサポートします。
【参考文献】
※1 日本助産師会「妊娠中の標準的な健康教育」
※2 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2015年版) エネルギー・栄養素」
※3 厚生労働省「妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針 ~妊娠前から、健康なからだづくりを~」
※4 日本産科婦人科学会「D. 産科疾患の診断・治療・管理 13. 産褥異常の管理と治療」
※5 日本産科婦人科学会「産婦人科診療ガイドライン産科編2020」