閉経したはずなのに不正出血があると、「これって生理なの?」「何かの病気かもしれない?」と、心配になると思います。そもそも閉経した後で生理になることはあるのでしょうか?また、どんな病気の可能性があるのでしょうか?
今回は閉経後に不正出血が起きる原因と、特に気をつけたい病気の可能性についてご説明します。
そもそも閉経とは?
閉経とは、卵巣機能が低下し、卵子の元となる卵胞がすべてなくなることで、排卵も生理(月経)も永久に起こらなくなる状態をいいます。
生涯にわたって排卵される卵子の数は生まれたときから決まっており、思春期に初潮を迎えて排卵・生理が始まったあとは、だんだんと卵子が減っていきます。
40代後半以降に迎えることが多い、いわゆる「更年期」に入ると、卵巣機能が低下していき、生理周期が不規則になってきます。やがて排卵が起こらなくなり、50歳前後で閉経を迎えます。
閉経はある日突然起こることもありますが、多くは生理不順が2~5年続いたあと1年以上生理が来なくなったときに、閉経と見なされます。
閉経後の出血は、生理の可能性もあるの?
閉経は「生理がなくなること」を意味しているので、出血があったとしても、それは生理によるものではありません。基本的に、閉経後の出血は「不正出血」とみなされ、場合によっては何らかの病気の可能性が疑われます。
しかし、生理が何ヶ月も来なくて閉経したと思っていたのに、実は閉経はしていなかったという可能性もあります。
閉経が近づいてくると、経血の量が減って生理が早く終わるようになったり、生理周期が数ヶ月に1回など長くなったりと、生理不順になります。そのため、「閉経後なのに生理になった」わけではなく、かなり間隔が空いて生理が来ただけ、というケースも考えられます。
出血の症状だけでは、病気が原因の不正出血なのか、それとも生理なのかを見分けるのは難しいので、40歳を過ぎて不正出血があった場合は、念のため婦人科で検査を受けることをおすすめします。
閉経後の不正出血の原因は?
完全に閉経したあとに出血があった場合、以下のような原因による不正出血と考えられます。
治療の必要がないものもありますが、できるだけ早期に治療が必要なケースもあるので、放置せず婦人科で相談しましょう。
子宮の病気
閉経後に不正出血があった場合、まず検査で確かめるべきなのは、子宮体がんや子宮頸がんなどの悪性腫瘍の可能性です。
子宮体がんは50代を過ぎてからの発症率が高く、症状として不正出血や下腹部痛が見られます(※1)。早く治療するほど生存率も高くなるので、早期発見が肝心です。
1回の検査で正確に診断できない場合もあるので、医師のアドバイスを聞きながら、子宮がん(子宮頸がん)検診も定期的に受けることが大切です。医師が必要と判断した際に、子宮体がんの検査を行うこともあります。
また、エコーで子宮内膜や卵巣に異常がないかどうかも調べる必要があります。
そのほか、子宮頸管ポリープや子宮筋腫、子宮脱、子宮下垂などが原因で、下着につく程度の少量の不正出血が起こることがあります(※2)。
萎縮性腟炎
閉経後の出血の原因として多いのが「萎縮性腟炎」です。
閉経するとおりものが少なくなり、腟内を清潔に保つ力が弱まります。そのため、ちょっとしたきっかけで腟内の細菌が繁殖しやすくなり、腟が炎症を起こすのです。
また、腟内の水分量が少なくなるので、性交時に腟が擦れやすく、小さな傷から炎症が広がるケースもあります。
萎縮性腟炎が起きると、不正出血のほかに膿(うみ)っぽいおりものが出たり、デリケートゾーンがかゆくなったりすることもあります(※1)。
腟炎は再発しやすく、細菌性腟症に移行することもあるので、エストロゲン製剤などできちんと治療することが大切です。
卵巣機能の低下
先述のとおり、閉経に至るまでの数年間で女性の卵巣機能は徐々に低下していきます。
卵巣の機能が不安定になるとホルモンバランスの分泌が乱れ、子宮内膜を維持することができず、剥がれ落ちて少量の不正出血が起こることがあります(※3)。
特に病気ではないため、経過観察となることもありますが、不足している女性ホルモンを補うためにエストロゲン製剤などを使うこともあります。
閉経後の不正出血は少量でも放置しないで
閉経後に出血があったとして、それだけでは原因を判断することはできないので、まずは婦人科できちんと診てもらいましょう。特に、子宮体がんや子宮頸がんの場合は、早期に治療できれば子宮以外の部位への転移を防げたり、命に及ぶ危険性が少なくなったりするため、早期発見が不可欠です。
病気が重いほど出血量が多くなる、とは必ずしも言えません。少量の出血でも子宮がんを発症している可能性は十分考えられます。出血の程度を見て「これくらいなら問題ないだろう」「すぐに止まるので大丈夫」といった思い込みは禁物です。万が一のことを考えて早めに検査を受けてくださいね。
監修医師:産婦人科医 間瀬徳光先生
2005年 山梨医科大学(現 山梨大学)医学部卒。板橋中央総合病院、沖縄県立中部病院などを経て、現在は医療法人工藤医院院長。産婦人科専門医、周産期専門医として、産科・婦人科のいずれも幅広く診療を行っている。IBCLC(国際認定ラクテーション・コンサルタント)として、母乳育児のサポートにも力を注いでいる。
※1 メジカルビュー社『プリンシプル 産科婦人科学1 婦人科編』pp.532-534,pp.616-618,631
※2 日本産科婦人科学会「不正(性器)出血」
※3 株式会社メディックメディア『病気がみえる Vol.9 婦人科・乳腺外科 第4版』pp.33,104