赤ちゃんの離乳食には、初期から食べさせて良いものと、一定の時期まで「危険」とされているものがあります。「はちみつ」もその一つとして有名ですが、詳しい理由を知らないママやパパも多いのではないでしょうか。
そこで今回は、はちみつが赤ちゃんにNGな理由や、いつからあげていいのか、食べてしまったときの症状や対処法をご説明します。
赤ちゃんにはちみつを食べさせてはいけない理由は?
赤ちゃんにはちみつを食べさせてはいけない理由は、はちみつに含まれる「ボツリヌス菌」により、「乳児ボツリヌス症」という病気を引き起こしてしまうリスクがあるからです(※1)。
ボツリヌス菌は自然界に広く存在している菌の一つです。食中毒の原因となる菌の一種で、酸素の少ない環境を好む性質があります。
はちみつに含まれるボツリヌス菌は極微量で、大人が食べても何の問題もありません。しかし、赤ちゃんの腸内環境は大人と異なり未熟のため、1歳未満の赤ちゃんだけが乳児ボツリヌス症を発症してしまいます。
ボツリヌス菌は、100度程度の熱では長時間加熱しても殺菌することはできません。少量であっても、加熱したとしても、赤ちゃんのうちははちみつを食べさせないようにしましょう。
赤ちゃんはいつからはちみつを食べていい?1歳なら大丈夫?
赤ちゃんにはちみつを食べさせていいのは、赤ちゃんが1歳になってからです。
厚生労働省発行の「授乳・離乳の支援ガイド」にも、「はちみつは乳児ボツリヌス症予防のため満1歳まで使わない」と記載されています(※2)。
赤ちゃんが1歳になる頃には、離乳食などを食べて腸内細菌の環境が整ってきます。そうすると、微量のボツリヌス菌では乳児ボツリヌス症を発症することはなくなってきます。
しかし、赤ちゃんに他の食材にアレルギーがある場合は、はちみつを食べさせる前にかかりつけの小児科医に相談した方が安心です。
赤ちゃんに食物アレルギーがない場合でも、はちみつを初めて食べさせるときは体調が良い日を選びましょう。小児科や病院が開いている曜日の午前や昼にはちみつを少量与えて、様子をみながら慣れさせることが大切ですよ。
満1歳は、やっと食べものに慣れてきたころです。赤ちゃんの普段の体調を考慮して、はちみつを与える判断をしましょう。
赤ちゃんがはちみつを食べるとどんな症状が出るの?
赤ちゃんがはちみつを食べて乳児ボツリヌス症にかかると、便秘が5〜7日間続きます。これは、菌が腸管内で増殖して、毒素を出すためと考えられています。
その後、手足を動かさない、おっぱいやミルクを飲む力が弱くなる、泣き声が弱くなるといった症状が現れます。
顔の表情機能が低下して無表情になったり、首の筋肉が弛緩して頭を持ち上げられなくなったり、呼吸困難があるといった症状が現れることもあります。
ほとんどの場合は適切な処置によって症状は治まりますが、乳児ボツリヌス症が重症化して亡くなるケースもあります(※3)。
赤ちゃんがはちみつを食べてしまったときの対処法は?
ここでは、赤ちゃんがはちみつを食べてしまったときの対処法を含め、ボツリヌス菌の潜伏期間や、注意点をご説明します。
厚生労働省の平成14〜16年の調査によると、日本で市販されているはちみつからボツリヌス菌が検出された割合は、最大で6.7%と低い数値でした(※4)。
しかし、平成29年に東京都内において、はちみつを混ぜたジュースを飲んだ1歳未満の乳児が乳児ボツリヌス症を発症し、死亡した事例がありました(※1)。
はちみつにボツリヌス菌が含まれていることはまれであっても、赤ちゃんが乳児ボツリヌス症を発症しないとは言い切れません。
万が一、赤ちゃんがはちみつを食べてしまった場合は、すぐに以下の対処をしましょう。
赤ちゃんがはちみつを食べたときの対処法
● 口内や体、手についたはちみつを拭く
● 母乳やミルク、水などを飲ませる
● 無理やり吐かせない(咳込みの原因になる)
● できるだけ早く小児科を受診し、医師の指示を仰ぐ
ボツリヌス菌の潜伏期間は様子をしっかり見る
赤ちゃんがはちみつを食べて乳児ボツリヌス症を発症するまでの潜伏期間は、3~30日(※5)と長期にわたります。
この間は、便秘が続く、元気がないなど、先にご説明した乳児ボツリヌス症の症状が現れないかを、継続的にチェックする必要があります。便秘の期間が長いなど少しでも普段と違う症状があれば、すぐに小児科を受診しましょう。
赤ちゃんが満1歳になるまでははちみつを控えよう
外食メニューや市販の食品には、思いがけずはちみつが原材料として含まれている場合もあります。はちみつ単体だけでなく、はちみつを含んだ食品にも注意が必要ですよ。
赤ちゃんはまだ消化器官が未発達で、大人と同じようには食べ物を消化することはできません。はちみつは健康に良いものですが、1歳未満の赤ちゃんには、くれぐれも食べさせないように気をつけてくださいね。
監修協力:武井 智昭先生 小児科/高座渋谷つばさクリニック
日本小児科学会専門医。2002年、慶応義塾大学医学部卒。神奈川県内の病院・クリニックで小児科医としての経験を積み、現在は神奈川県大和市の高座渋谷つばさクリニックに院長として勤務。内科・小児科・アレルギー科を担当しています。感染症・アレルギー疾患、呼吸器疾患、予防医学などを得意とし、0歳から100歳まで「1世紀を診療する医師」として診療を行っています。
【参考文献】
※1 厚生労働省「蜂蜜を原因とする乳児ボツリヌス症による死亡事案について」
※2 厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド」
※3 消費者庁「ハチミツによる乳児のボツリヌス症」
※4 厚生労働省「ボツリヌス菌汚染実態に係るデータ」
※5 内閣府 食品安全委員会「ボツリヌス症について」