妊娠中のむくみは、特に妊娠後期にひどくなりやすいですが、妊娠初期から悩まされる妊婦さんもいるのではないでしょうか。むくみの症状が進むと、歩きづらくなって転んでしまうなど日常生活に支障をきたす恐れもあります。
今回は妊娠初期のむくみについて、原因と症状、解消法をご紹介します。
妊娠初期のむくみとは?
妊娠中は、多くの妊婦さんが「むくみ」を経験します。特に妊娠後期はむくみが出やすいといわれていますが、妊娠初期にむくみに悩まされる妊婦さんもいます。
むくみがひどくなると痛みを感じることもあるので、足や顔など広範囲にむくみが見られるときには、産婦人科の医師に相談しましょう。むくんでいる部位は触ると跡が残り、目で見ても分かりやすいため、妊婦健診の触診で調べてもらうことができます。
なぜ妊娠初期はむくみやすいの?
妊娠初期のむくみの原因には、下記のようなことが考えられます。
血液量の増加
妊娠中、お腹の中の赤ちゃんは、胎盤を通して母体から血液を送ってもらうことで栄養を得ています。血液が不足しないように、母体では常に血液が多い状態になります。
血液の中の血漿(けっしょう)は、妊娠20週後半には妊娠前の約1.5倍にもなりますが、妊娠6週目頃からすでに増え始めています(※1)。
血液の多くは水分でできているので、その水分が皮下組織に溜まることによって、むくみが起こりやすくなります。
プロゲステロンの分泌量の増加
妊娠するとプロゲステロンの分泌量が増えます。プロゲステロンには子宮内膜を厚くしたり、基礎体温を上げたりする作用以外にも、水分を体内に蓄えようとする働きがあるため、むくみやすくなります。
運動不足
運動不足で血行が悪くなると、むくみを引き起こしやすくなります。妊娠初期のつわりであまり体を動かせなくなり運動不足になる妊婦さんも多くいます。
塩分の摂りすぎ
つわりで味覚が変わり、味が濃いものや塩気が強いものばかりを食べたくなる妊婦さんもいます。必要以上に塩分を摂取すると、体内のナトリウム濃度を薄めるために水分を多く取り込もうとして、むくみが起こります(※2)。
このほかにも、冷えによる血液の循環不良や衣類の締め付けによる圧迫がむくみの原因になることもあります。
妊娠初期は足がむくみやすい?手や顔は?
妊娠初期に特にむくみを感じやすい場所は手足です。普段、人間は立って活動をするため、体の水分が下に落ちて手や足に溜まり、むくみとして現れやすいのです。
手足のむくみの初期症状としてあげられるのが、「指輪のサイズが小さいと感じる」「靴が小さく感じる」といったものです。また、朝起きた直後などは、顔にむくみが見られることもあります。
むくんでいるかどうかをチェックするには、気になる部分を指で30秒ほど押してから離してみましょう。押した部分がすぐ元に戻らないときは、むくんでいる状態です。
妊娠初期のむくみの解消法は?
妊娠初期のむくみ対策には、血流をよくして、むくみの原因になっている水分を循環させたり、排出したりすることが大切です。下記に具体的なむくみ解消法をご紹介するので参考にしてみてくださいね。
妊娠初期むくみ解消法1:同じ姿勢を続けない
デスクワークをしていたり、つわりが重くて体を動かせなかったりすると同じ姿勢になりがちなので、水分が滞ってしまいます。
仕事をしている妊婦さんは、休憩時間に伸びやストレッチをして、むくみやすい部分をほぐすことを心がけましょう。体調が悪くてベッドで横になっているときも、足首だけぐるっと回したり、前後に動かしたり、両手を頭の上に伸ばしたりすると、むくみが解消されていきますよ。
足つぼボードや青竹を使ってマッサージするのも効果的です。また、「着圧ソックス」や「五本指ソックス」は履くだけで足の血行をよくすることができると妊婦さんに人気ですよ。
妊娠初期のむくみ解消法2:マタニティウェアを着る
お腹の大きさがそれほど目立たない妊娠初期は、今まで着ていた服をそのまま着てしまいがちですが、細身の服は体を締め付けて血行を悪くしてしまいます。
いきなり全てをマタニティウェアに変えるのは難しいですが、できるだけゆったりとした服を着るように意識して、徐々にマタニティウェアを取り入れていきましょう。
妊娠初期のむくみ解消法3:血行をよくする
血行をよくすることで手足の冷えが解消され、血液の流れがよくなります。ウォーキングや水中歩行などの全身運動も効果的ですが、動くのがつらいときには足湯がおすすめです。
足を温めることでリラックス効果も期待できるので、テレビを見たり本を読んだりしながら、足湯でリラックスしてみましょう。
体調が良いときには無理のない範囲で軽い運動をすると、さらに血行がよくなりますよ。ただし、飛び跳ねたり激しく動いたりする運動や球技、筋トレなどは避けてくださいね。
妊娠初期のむくみ解消法4:むくみに効く食べ物を食べる
妊娠中に塩分を控えた方がいいといわれるのは妊婦高血圧症候群の予防のためですが、これはむくみ対策としても効果があります。塩分はなるべく控えて、出汁や薬味、柑橘類、酢などで味付けをするように工夫しましょう。
塩だけでなく、醤油や味噌、ソースなども塩分が高いので、注意してくださいね。
また、むくみ対策として効果がある食べ物は、塩分を排出する効果があるカリウムを多く含んだものです。カリウムは、バナナやメロン、とうもろこしなどに多く含まれているので、妊娠中には積極的に摂取しましょう。
妊娠初期のむくみは赤ちゃんに影響する?
妊娠初期のむくみで気になるのは、お腹の中の赤ちゃんへの影響ですよね。基本的には、むくみだけであれば赤ちゃんへの影響はないといわれています。過去には、「妊娠高血圧症候群」とむくみが関係しているとされていましたが、現在では、高血圧や尿タンパク等を併発していなければ心配ないとされています(※3)。
とはいえ、妊娠初期から痛みを感じるほどのむくみが続くと、マタニティライフを穏やかな気持ちで過ごせなくなってしまいます。むくみがひどいときには、早めに産婦人科の医師に相談してくださいね。
妊娠初期からむくみにくい生活習慣を
妊娠中は、多くの妊婦さんがむくみに悩まされます。妊娠初期のむくみがつらいときは、今回ご紹介した解消法や食べ物などを積極的に取り入れてみてくださいね。
むくみにくい生活習慣を心がけることは、ママの健康にもつながります。むくみを解消して快適なマタニティライフを過ごせるといいですね。
【参考文献】
※1 国立循環器病研究センター「[86] 妊娠・お産と循環器病」
※2 新星出版社『図版オールカラー 栄養成分の事典』pp.82-84
※3 メジカルビュー社『プリンシプル 産科婦人科学2 産科編』pp.320-338