友達付き合いや習い事などで忙しい毎日を送る子どもたちはストレスを溜め込んでいることがあります。周りの大人はどのように対処すればいいのでしょうか。
今回は子どものストレスについて、原因や症状、発散方法、対処法などをご紹介します。
そもそもストレスとは?
ストレスとは、体もしくは心が刺激を受けて起こる生体反応に伴う症状です。
日常生活を送るだけでもさまざまなストレスを受けますが、適度に休息を取れば体は自然と回復していきます。
ボールを指で強く押すとペコッとヘコみますが、指を離すと自然に戻るのと同じ考え方です。
しかし、このヘコんだボールが元に戻らなくなるほどの強い、もしくは弱いけれど持続的なストレスがかかると、身体的もしくは精神的な不調が現れます。
子どものストレスの原因は?
ストレスは決して悪いものばかりではありません。夢や目標に進むなかで立ち向かう困難を克服する精神力は、適度なストレスとして精神発達に良い影響を与えます。
一方で、不安や人間関係の不和などは、子どものやる気を削いで、精神的に悪影響を及ぼすこともあります。
ある子どもにとっては良いストレスが、別の子どもにとっては悪いストレスになることもあるため、どういったストレスが子どもに良いのか悪いのかは、個人差があります。
ここでは、子どもたちに比較的共通したストレスの例をご紹介します。幼児期と学童期でストレスになりやすいものに少し違いがあるので、それぞれ分けて見ていきましょう。
幼児期(0~5歳)のストレスの例
幼児期は日常生活でのコミュニティが狭く、精神的にも未成熟なので、主に親やきょうだいとの関係がストレスの原因になります。
- ・ママやパパとのスキンシップが減る
- ・食事やトイレトレーニングがうまくできずに叱られる
- ・弟や妹ができて、ママやパパと接する時間が短くなる
- ・きょうだい喧嘩が絶えず、親から叱られる
- ・ママとパパの言い争いやケンカが多い など
学童期(6~12歳)のストレスの例
小学校に入学すると、子どもは家庭の枠を飛び出し、友人や教師との関わりを深めます。幼児期同様に家庭内問題のほか、新たな人間関係や生活環境が複雑に絡んできて、それがストレスの原因になることがあります。
- ・友達や教師と仲良くできない
- ・仲間はずれやいじめを受ける
- ・苦手な食べ物があり給食を食べられない
- ・勉強についていけない
- ・テストの成績が悪い
- ・親の教育方針が厳しすぎる
- ・塾や習い事が負担になっている
- ・進級や転校などの学校環境の変化 など
子どものストレスの症状は?腹痛はサイン?
子どもがストレスを感じたときに現れる代表的な症状のひとつが腹痛です。
保育園や幼稚園、学校に行くのが嫌なとき、朝に「お腹が痛い」と訴える子どももいます。
ストレスによる腹痛は小児科で診てもらっても原因がきちんと究明されないことがほとんどです。「仮病を使っている」などと思わず、以下のような他の症状が現れていないかをチェックしましょう。
身体的な症状
子どもも大人同様、過度なストレスを感じると体に不調が現れます。
- ・腹痛
- ・頭痛
- ・下痢
- ・吐き気・嘔吐
- ・体重の減少
- ・体重の急激な増加
- ・動悸
- ・睡眠障害(寝つけない、途中で目が覚める、怖い夢を見るなど)
- ・おねしょやおもらし
- ・微熱
- ・喘息やアトピー性皮膚炎の悪化 など
精神的な症状
ストレスが原因で精神的に不安定になった場合、症状の現れ方はさまざまです。攻撃的になる子もいれば、内向きになる子もいます。
反抗期や性格によるものかもしれませんが、気分の浮き沈みが激しい場合にはストレスの影響も疑ってみてください。
- ・イライラして怒りっぽくなる
- ・気分が落ち込む
- ・集中力が低下する
- ・やる気がなくなる
- ・落ち着きがなくなる
- ・物事への興味・関心が薄くなって、ぼーっとする など
行動に現れる症状
いつもと違う行動をしているときも、注意が必要です。無意識に行っていることが多いので、ママやパパがよく見てあげてくださいね。
- ・赤ちゃん返りをする
- ・よく泣く
- ・爪噛みをする
- ・けんかなどの攻撃的な行動をとるようになる
- ・言葉が出にくくなる(吃音)
- ・チックが出る
- ・拒食や過食になる
- ・保育園や幼稚園、学校に行きたがらない
- ・家に引きこもる など
子どものストレスの発散方法・対処法は?
子ども一人では、ストレス原因を取り除くことも、蓄積されたストレスを解消させることも難しいので、発散させるには親の助けが必要です。
以下のことを意識して、子どものストレスを和らげてあげましょう。
子どもの話を聞く
まずは子どもの言葉に耳を傾けてあげましょう。
子どもはさまざまなストレスを抱えていたとしても、ママやパパが忙しくてじっくり話を聞く時間がなかったり、話すきっかけがつかめなかったりすると、ストレスを吐き出す機会がなくなります。
嫌なことや不安に思っていることがないか、日常会話の中で引き出してあげましょう。普段感じていることを口に出すだけでも、ストレスの軽減につながります。
ただし無理に聞き出そうとすると、かえって話しにくくなることもあるため、子どもが自分から自然と話せる環境を作れるといいですね。
ストレスの原因を取り除く
ストレスの原因がはっきりしている場合は、取り除いてあげましょう。ただし、学校での人間関係などのように、すぐにストレスを取り除くことが難しいケースもあります。
そうした場合は、子どもがストレスを受けていると理解を示したうえで、どうすれば解消できるのかを一緒に考えてあげてください。学校とも連携をとり、担任の先生などと相談することも大切です。
好きなことをとことんさせる
子どもが好きなことをさせてあげるのも、ストレス発散に効果的です。
興味・関心のあるジャンルに関係する習い事を始めたり集まりに参加したりすると、新たな楽しみを見出してストレスが解消されることもあります。気の合う友達や親しい人と遊ぶ時間を増やしてみるのもいいですね。
外で体を動かす機会を作る
体を動かすこともストレス解消につながります。普段から外で思いっきり運動したり、自然の中で遊んだりする機会を作るようにすると、ストレスが溜まりにくくなりますよ。特に、室内で動画をみたりゲームをしていたりする時間が長く続くときなどは、外で体を動かすようにしましょう。
コミュニケーション方法を見直す
「あれもダメ、これもダメ」と子どもを頭ごなしに否定したり、「●●をしなさい」と無理矢理にある行動を強制したりしていると、子どもにストレスを与えることになります。
しつけのために必要な場合もありますが、理由も分からず叱られたり、感情的に怒られたりすると、子どもも息が詰まってしまいます。叱るときは理由をきちんと伝え、その後に抱きしめたり子どもの意見を聞いてあげたりして、親の愛情と理解もしっかり示してあげてください。
ママとパパの間で意見が違うと子どもを困惑させてしまうので、事前に教育方針を話し合っておくことも大切です。
また、子どもを褒めるハードルを下げる努力もできるといいですね。
専門窓口や病院で相談する
専門の窓口で相談することが解決につながることもあります。地域の保健所や保健センター、精神保健福祉センターなどでは、子どもの行動や心の問題が気になるときに相談できます。学校に関係した問題は、都道府県や市区町村の教育センターなどが相談を受けつけています。
また、子どもを対象にした心療内科を受診したりカウンセリングを受けたりするのも、ひとつの方法です。
どこで相談や受診をしたらいいのか迷ったときは、厚生労働省のこちらのページを参考にしてみてくださいね。
子どものストレスにしっかり向き合おう
子どもは強いストレスを感じると、身体的や精神的な症状や行動でSOSを発信します。しかし、普段から子どもの様子をよく見ていないと、サインを見逃してしまうこともあります。
子どもの表情や行動に目を配り、親子でしっかり会話する機会を作りましょう。子どもがストレスを抱えていると感じたときは、そのストレスの原因や解決法を一緒に考え、子どもが少しでも穏やかな気持ちで過ごせるようにサポートしてあげられるといいですね。
監修医師:小児科 武井 智昭
日本小児科学会専門医。2002年、慶応義塾大学医学部卒。神奈川県内の病院・クリニックで小児科医としての経験を積み、現在は神奈川県大和市の高座渋谷つばさクリニックに院長として勤務。内科・小児科・アレルギー科を担当しています。感染症・アレルギー疾患、呼吸器疾患、予防医学などを得意とし、0歳から100歳まで「1世紀を診療する医師」として診療を行っています。