誤飲に注意!赤ちゃんや子供が誤飲したときの対処法は?

生後6ヶ月ごろになると、赤ちゃんは口の中に物を入れるようになります。大人にとって想像できないものまで入れようとすることも多いので、驚くママやパパも多いことでしょう。

今回は、赤ちゃんや子どもが誤飲しやすいものや、もし誤飲してしまったときの対処法をご紹介します。

赤ちゃんや子どもの誤飲とは?

「誤飲」とは、一般に食べ物以外のものを誤って飲み込んでしまうことをいいます。

赤ちゃんや子どもは体が小さいので、大人より喉にものがつまりやすいです。以下のように子どもは成長に応じて誤飲しやすいものがあります(※1)。

生後6ヶ月~1歳半頃

身近にあるものは、何でも手に取って口に運んで確かめる時期です。明らかに食べ物ではないものも、口に入る大きさであれば、何でも誤飲してしまう可能性があります。

1~2歳頃

周りのことへの興味や関心が高まり、ママやパパと同じ行動をしたくなります。

椅子の上にのぼって高いところにある薬箱から薬を取り出して飲んだり、醤油を飲んだりといったこともあります。

2~3歳頃

自分自身の興味で行動することが増えます。そのため、甘くておいしかった薬用シロップを大量に飲んだり、錠剤をお菓子と勘違いして食べたりすることもあります。

赤ちゃんや子どもが誤飲しやすいものは?

厚生労働省による、小児の家庭用品などの誤飲事故の調査によると、誤飲事故の原因になった主な製品は以下の通りです(※2)。

● タバコ(20.8%)
● 医薬品・医薬部外品(17.4%)
● 食品類(12.3%)
● 玩具(10.7%)
● プラスチック製品(7%)
● 金属製品(6.5%)
● 硬貨(3.0%)
● 洗剤類(2.9%)
● 文具類(2.6%)
● 電池(1.8%)

赤ちゃんや子どもが誤飲したときの対処法や注意点は?

それでは、赤ちゃんや子どもが上記のようなものを誤飲してしまったら、どうすればいいのでしょうか。ここでは、代表的なものの対処法をご紹介します。

タバコ

タバコの誤飲は最も報告数が多いです。タバコに含まれるニコチンは子どもの体内に吸収されやすく、1本分でも致死量に達してしまいます(※3)。

タバコそのものだけでなく、タバコの吸い殻を入れておいた空き缶に残った水分を子どもが誤飲するというケースも多くあります。

電子タバコの場合は、ニコチン以外に金属片による物理的な影響があるおそれもあります。

もし赤ちゃんや子どもがタバコを誤飲してしまったら、口の中からかきだしてください。

飲み物を飲ませると、体内にニコチンが吸収されやすくなってしまうこともあるので、誤飲したあとに水分は取らせないように注意しましょう。

摂取してしまってから、顔色が悪い、嘔吐や腹痛、皮膚が冷たい・紫色などの症状がある場合は、速やかに病院を受診してください。

医薬品・医薬部外品

自分でフタや包装を開けられる1~2歳に比較的多く、食事のあとにママやパパが飲んだ薬の残りを興味から誤飲したというケースも多くあります。

赤ちゃんや子どもにとって大人の薬は影響が強すぎるため、すぐに病院を受診することが必要です。

プラスチック製品、玩具

プラスチック製品の誤飲はビニールやペットボトルの包装などが多いです。

一方、玩具の誤飲は指でものをつかめるようになった子どもに多く、おはじきやビー玉のような小さなものを飲み込んでしまう事例が多くなっています。

また、お兄ちゃんやお姉ちゃんが遊んでいるおもちゃの小さな部品を赤ちゃんが飲み込み、窒息してしまったという事例もあります。

明らかな咳込みがあったり、呼吸が苦しそうな場合や吐き出さない場合は、早急に病院を受診しましょう。

金属製品、硬貨

ママやパパのアクセサリーやホッチキスの針、画鋲、ヘアピンなどを飲み込んでしまうことがあります。

金属などの場合にはレントゲン検査などを行いますが、位置や痛みがなければ経過観察となるため、数日間は便に出てくるかを確認します。

腹痛やどこかにひっかかってしまっている場合には、手術を行うこともあります。

ボタン電池

玩具やキッチンタイマーなど、子どもの身の回りの多くの電化製品にボタン電池が使われています。

玩具で遊んでいるうちにボタン電池が取れて飲み込んだ、という事例も多くあります。

ボタン電池を飲み込んでしまうと、胃液などで電池の金属部分が溶かされてしまいます。電池の中の物質が胃の粘膜を侵食して、症状がひどい場合は胃に穴が開いてしまうこともあります(※3)。

できるだけ早く処置が必要なので、疑われれば速やかに受診するようにしてください。

洗剤類、化粧品

ママやパパが使った洗剤や化粧品のフタが、開きっぱなしになっていたことが原因で起こることが多くなっています。

洗剤類や化粧品を誤飲すると、嘔吐や胸やけ、呼吸困難などの症状を訴えることがあります。何か症状がある場合は速やかに病院へ行きましょう。

少量を舐めた程度であれば、水を口をゆすがせて様子を見てくださいね。

誤飲して窒息したときの応急処置はどうすればいい?

赤ちゃんや子どもが誤飲をしてしまい、万が一窒息が起こってしまったら、以下の方法で詰まったものを吐き出させましょう(※4)。

すぐに窒息が解除できても、念のため受診をするようにしてくださいね。

1歳未満の乳児の場合

1歳未満 窒息時の対応 ハイムリッヒ法 背部殴打法

1歳未満の赤ちゃんの場合は、以下を繰り返して行います。もし意識がない場合は、胸骨圧迫と人工呼吸を行いながら119番通報し、救急車を呼びましょう。

背部殴打法(右図)

すぐに救護者が膝を曲げ(もしくは椅子に座り)、太ももの上に子どもをうつ伏せに抱きあげ、背中の肩甲骨の間のあたりを手のひらで 5~6回強く叩いて詰まったものを吐き出させます。

胸部突き上げ法(左図)

背部叩打法でも窒息が解除できない場合や意識がない場合には、子どもを仰向けに寝かせ、心肺蘇生と同じように子どものみぞおちの部分を両手拳で上の方に押します。

1歳以上の子どもの場合

1歳以上 窒息時の対応 ハイムリッヒ法

ハイムリッヒ法(腹部突き上げ法)

意識のある1歳以上の子どもに対しては、腹部突き上げ法(ハイムリッヒ法)を行います。

子どもの背中側から救護者の両手を回し、みぞおちの前で両手を組んで勢い良く両手を絞ってぎゅっと押すことで、詰まっていたものを吐き出させます。

意識がない場合は、胸骨圧迫と人工呼吸を行いながら119番通報し、救急車を呼びます。

誤飲したとき吐かせてはいけないものがあるの?

誤飲してしまったら、水や牛乳を飲ませたり、吐き出させるのが一般的な対処法ですが、ものによっては「吐き出させてはいけないもの」「牛乳を飲ませてはいけないもの」があります。

吐かせてはいけないもの

以下のものを誤飲したときは吐かせず、救急車を呼んでできるだけ早く病院に行きましょう(※6)。

● ねずみ駆除薬
● トイレ用洗剤(塩酸、水酸化ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウムなどを含むもの)
● 苛性ソーダ
● ウジ駆除用の殺虫剤(クレゾールを含むもの)
● 業務用漂白剤
● 花火
● 灯油
● ベンジン
● ライター燃料
● マニキュア除光液

特に強酸、強アルカリなど強い成分を持つ洗剤などを誤飲してしまった場合は、吐かせずに大量の牛乳を飲ませましょう。

判断できないものに関しては、吐かせずに急いで病院に行きましょう。

牛乳を飲ませてはいけないもの

以下のものは油(脂)に溶けやすい性質をもつため、誤飲しても牛乳を飲ませてはいけません(※6)。

● ねずみ駆除薬
● 農薬
● 殺虫剤
● 防虫剤

誤飲の対策は?誤飲チェッカーって?

トイレットパーパー 芯

赤ちゃんや子どもの誤飲で一番大切なのは、誤飲する可能性があるものを赤ちゃんや子どもに近づけない・触らせないことです。

タバコや医薬品は、子どもが入ることができない場所や高さに保管しておくだけでなく、使ったらすぐに片付けることを心がけましょう。

また玩具は、小さな部品や電池がないか、部品が壊れて取れていないかなどにも気をつけてください。上の子どものおもちゃにも注意しましょう。

ボタン電池はネジを外さなければ取り出せない仕組みになっていることが多いですが、ネジが緩んでいないか、ネジを閉め忘れていないか確認してみてくださいね。

また誤飲を防ぐため、「誤飲チェッカー」というものがあります。

これは3歳の子どもが口を開けたときの最大口径である直径39㎜に合わせてつくられたもので、チェッカーの中に入ってしまう大きさの食べ物や小物は誤飲する可能性があるという目安になるものです(※7)。

誤飲チェッカーは、一般社団法人の日本家族計画協会で手に入ります。

誤飲チェッカーの代わりとして、直径39mmのトイレットペーパーの芯を使ってもいいですね。

赤ちゃんや子どもの誤飲は事前に対策しよう

誤飲してしまったあとで、とることができる対策はごくわずかですが、事前に想定・対応しておけば大半は防ぐことができます。

赤ちゃんや子どもが飲み込んでしまいそうな小さなものが、触れられる場所に置かれていないか、もう一度部屋のなかを確認してみてくださいね。

監修医師:小児科 武井 智昭

日本小児科学会専門医 武井 智昭先生
日本小児科学会専門医。2002年、慶応義塾大学医学部卒。神奈川県内の病院・クリニックで小児科医としての経験を積み、現在は神奈川県大和市の高座渋谷つばさクリニックに院長として勤務。内科・小児科・アレルギー科を担当しています。感染症・アレルギー疾患、呼吸器疾患、予防医学などを得意とし、0歳から100歳まで「1世紀を診療する医師」として診療を行っています。


【参考文献】
※1 厚生労働省「子どもによる医薬品誤飲事故の防止対策について」
※2 厚生労働省「家庭用品等に係る健康被害 病院モニター報告の概要」
※3 日本医師会 白クマ先生の子ども診療所「誤飲、異物が詰まってしまった場合」
※4 日本小児科学会 こどもの救急「窒息」
※5 日本小児科学会 こどもの救急「薬物誤飲/中毒」
※6 日本小児科学会 こどもの救急「誤飲した時の看病ポイント」
※7 日本家族計画協会「誤飲チェッカー」

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