胎嚢(たいのう)という言葉をはじめて耳にしたという人は多いのではないでしょうか。産婦人科ではいつから確認できるものなのか気になりますよね。
そこで今回は、胎嚢について確認できる時期や確認が遅くなる原因についてご説明します。
そもそも胎嚢ってなに?
胎嚢とは、受精卵が着床すると作られはじめる赤ちゃんをくるんでいる袋のようなものです。
妊娠初期にお腹のエコー検査をすると、子宮内に白い輪っかを持った胎嚢が確認できます(※1)。
この輪っかは「エンジェルリング」や「ホワイトリング」と呼ばれていて、赤ちゃんのもととなる「胎芽」がくっついてダイヤのリングのように見えることもあります。
胎嚢は赤ちゃんが成長するにつれて一緒に大きくなって、次第に楕円や馬蹄型に形が変わっていきますよ。
胎嚢はいつから見えるの?確認できたら妊娠は確定する?
胎嚢は早ければ妊娠4週目のはじめ頃、遅くとも妊娠5週目にはエコー検査で確認ができるようになります(※2)。
ただし、胎嚢が確認できたからといって妊娠が確定するわけではありません。
産婦人科から妊娠が確定されるのは、「胎芽」と赤ちゃんの「心拍」がしっかりと確認できてからになります。
全て同時に確認できることもありますが、タイミングによっては胎嚢だけが確認できて、翌週以降に胎芽や心拍の確認となることもあります。
胎嚢の週数ごとの大きさって?
胎嚢はエコー検査で測定しますが、誤差がでやすいです。○mmだから小さすぎるかも?大きすぎる?と過剰に心配する必要はありません。
以下はある程度の目安ですが、週数ごとの大きさは研究報告によって違いがあることもあります(※3)。あくまで参考程度にしてくださいね。
- 妊娠4週目:〜18mm
- 妊娠5週目:10〜28mm
- 妊娠6週目:17〜38mm
- 妊娠7週目:24〜48mm
- 妊娠8週目:31〜58mm
- 妊娠9週目:39〜68mm
1週間に10mmずつほど大きくなっていくと考えましょう。
目安の大きさから離れていても、前回の測定結果から大きくなっていれば不安に思いすぎないでくださいね。
胎嚢の確認が遅くなる原因は?
胎嚢が確認できない原因としては以下のようなことが考えられます。
排卵日のズレ
生理周期が安定している人でも排卵日は多少ズレることがあります。
想定していた日よりも遅れていると、受診したタイミングでは胎嚢が確認できないということもあります。
受診のタイミングが早い
受診するタイミングが早すぎると、胎嚢がまだ十分に成長していないため見えない可能性があります。
早期妊娠検査薬で陽性になった場合でも、生理予定日を過ぎてから受診するようにしてくださいね。
腸内にガスが溜まっていて見えにくい
便秘などで腸内にガスが溜まっていると、見えにくくなるため正確に診断できない場合があります(※3)。
子宮内に出血がある
着床出血などで子宮内に出血があると、エコー検査でその部分が胎嚢のような形をしていることがあります(※4)。
妊娠週数が早いときは特に紛らわしく判別がしにくいため、数日おいてから再検査をすることもあります。
子宮外妊娠
「子宮外妊娠(異所性妊娠)」の場合、子宮内膜のなかに胎嚢が確認できません。
子宮外妊娠の場合は妊娠を継続することは難しいため、症状に応じて治療を受ける必要があります。
化学流産
妊娠検査薬では陽性だったものの、何らかの原因で流産してしまう「化学流産(生化学的妊娠)」が起こることもあります。
化学流産の原因ははっきりとわかっていませんが、どんなに気をつけていても防げるものではありません。
胎嚢が確認できなかった場合は、数日〜1週間以内に再度受診するようにといわれます。不安に思うかもしれませんが、なるべくリラックスして過ごすようにしてくださいね。
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監修医師:産婦人科医 藤東 淳也
日本産科婦人科学会専門医、婦人科腫瘍専門医、細胞診専門医、がん治療認定医、日本がん治療認定医機構暫定教育医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医で、現在は藤東クリニック院長。専門知識を活かして女性の快適ライフをサポートします。
※1 メジカルビュー社「プリンシプル産科婦人科2 産科編」p.217
※2 日本産婦人科学会雑誌59巻6号「妊娠初期の超音波診断」
※3 坂元正一 他「胎児発育度の判定と分娩誘導時期に関する研究」
※4 日本産婦人科学会「産婦人科診療ガイドライン 産科編2020」
※5 日本産婦人科医会「<産科一般超音波検査・初期編>正常所見4-7週」