女性はもともと便秘をしやすい体質と言われていますが、産後、さらに便秘がひどくなったという人もいます。「こんなに便秘がひどいの、私だけ?」と思っている人もいるかもしれません。
とはいえ、便秘事情ってママ友にはなかなか聞きにくいですよね…。
そこで、産後ママの便秘事情とママたちが実践しているケア方法、専門家が勧める産後の便秘対策について迫ります!
3人に1人は産後の便秘に悩まされている!
「便秘の話って、なかなかしにくいよね」という会話から、編集部では全国のママたちに産後の排便事情についてアンケート調査(※)を敢行!
すると、約4割のママが産後の便秘に悩まされていることがわかりました。妊娠前は快便だったのに、産後は急に便秘に悩まされるようになったというママも多数。
「いいえ」と回答したママからも、便秘に悩まされてはいないものの「便が硬くなった」「出にくくなった」「切れて痔になってしまった」という声が聞かれました。
便秘とは思っていなくても、排便がスムーズではなくなった人も含めると、さらに多くの人が悩まされていることになります。
産後の排便、3日に1回の人が多数!
産後の排便の頻度を聞いたところ、3日に1回の人がもっとも多い結果となりました。
「3日に1回排便があれば問題ない」とされることも多いのですが、腸内環境が整っていれば、食べものは24時間で消化・排便されることが一般的。
そのため、約7割のママは腸内環境が乱れている可能性があるのです。
産後、なぜ便秘になりやすいの?
なぜ、産後は便秘に悩まされる人が増えるのか、助産師で看護師の河井先生に教えてもらいました。
河井先生
便秘は産後によく見られるマイナートラブル。便秘になる原因はいろいろあるため、便秘をくり返してしまう人もいます。
産後の便秘は、以下が主な原因と考えられています。当てはまるものがないか、確認しましょう。
母乳を与えていて水分不足になる
成人が1日に必要とする水分は2.5リットル。体内で生成される水分を除くと、食事から1リットル、飲みものから1.2リットル摂る必要があります(※1)。
離乳食が始まる前の赤ちゃんは、1日あたり700〜800ミリリットルもの母乳を飲みます。そのため、母乳を与えているママは、さらに多くの水分を必要とします。
体内の水分が不足すると便が固くなったり、腸内での便の動きが悪くなって便秘を引き起こしやすくなります。
ストレスなどで腸の動きが鈍くなる
排便をするには、腸のぜん動運動(内容物を押し出そうとする作用)が欠かせません。
ですが、育児によるストレスや疲労、運動不足、出産によるホルモンバランスの変化によって腸の動きが鈍くなることがあります。
便を押し出す力が弱くなると、便秘を引き起こしやすくなります。
自分のタイミングでトイレに行けない
赤ちゃんのお世話を優先し、便意をガマンしている人もいるのではないでしょうか?
排便をガマンすると溜まった便で直腸が押し広げられた状態になり、便が溜まることに鈍感になることも。その結果、慢性的な便秘を引き起こしやすくなります。
帝王切開や会陰切開の傷が痛くていきめない
いきむことで帝王切開や会陰切開の傷が痛んだり、傷口をかばって強くいきめずに便秘になってしまう人も少なくありません。
出産によって骨盤底筋が弱くなる
骨盤の中にある子宮などの臓器を支える筋肉を、骨盤底筋と言います。
妊娠中、重い子宮を支え続けることで骨盤底筋に大きな負担がかかり、排便するのに使う筋肉の力が弱まるとされています
産後の便秘、みんなの対処法は?
便秘を予防したり改善したりするために、多くのママが日常生活に対処法を取り入れていました。以下が、多くのママが実践している方法です。
1 | 意識して水分を摂る |
2 | 食物繊維の多い食材を摂る |
3 | 発酵食品や乳製品を摂る |
4 | 便意をガマンせずトイレに行く |
5 | お腹をマッサージする |
6 | 適度に運動をする |
7 | お風呂に浸かって体を温める |
8 | ウォシュレットで肛門を刺激する |
「これらの便秘の対処法は、すべて産後のママに効果的です」と河井先生。次の章では、これらの対処法の効果と注意点を詳しくご紹介します。
助産師ママが徹底解説!
産後の便秘対処法、効果と注意点は?
①意識して水分を摂る
母乳を与えていて水分が不足しやすいので、水分を積極的に摂るようにしています
あずきママさん
河井先生
水分はこまめに摂りましょう
大人は1日あたり、2.5リットルの水が必要と言われています。母乳を与えているとより多くの水分が必要になるので、意識して水分を摂るようにしましょう。
一度にたくさん飲むより、こまめに飲む習慣をつけられるといいですね。
②食物繊維の多い食材を摂る
自分の体質にはどんな食材が合うのか、意識しています。私にはごぼうが効果的です。
まなママさん
河井先生
不足しがちなので積極的に摂りましょう
食物繊維には、便のカサを増して排出しやすくしたり、腸内環境を正常に整える作用があるとされています。
食物繊維は豆、野菜、きのこ、海藻などに多く含まれます。これらの食材を食事の中に取り入れていきましょう。
③発酵食品や乳製品を摂る
納豆とヨーグルトは、毎日食べるようにしています。青汁も飲んでいます。
よちよちママさん
河井先生
積極的に摂りましょう
ヨーグルトや納豆に代表される発酵食品には生きた菌がたくさん含まれ、腸内環境を整える働きをします。
なるべく生の状態で、食べるのを習慣化するといいですよ。その際、1種類の食材からではなく、いろいろな食材から摂るのがおすすめです。
④便意をガマンせずトイレに行く
子どもが泣いていても、便意を感じたらすぐにトイレに行くようにしています。
はーちゃんママさん
河井先生
トイレに行く時間を確保しましょう
便意を感じているのにガマンすると、慢性的な便秘を引き起こす恐れがあります。日中、赤ちゃんと2人きりだと難しいこともあるかもしれませんが、ゆっくりトイレに行く時間を確保できるといいですね。
⑤お腹をマッサージする
お腹が張っているときは「のの字」マッサージをして、腸にガスや便が貯まらないようにしています。
ももママさん
河井先生
腸のぜん動運動を促します
お腹のマッサージは、腸の動きをよくするので効果的です。帝王切開で出産したママは、傷をグイグイ押さないように気をつけてくださいね。
⑥適度に運動をする
便秘薬を飲んでも、1日1回排便があるかないかです。水分を多めに摂って、よく歩くようにしています。
とむママさん
河井先生
腸によい影響を与えます
適度な運動は血行をよくし、腸のぜん動運動を活発にします。産後の体力回復のためにも、無理のない範囲で体を動かすようにしましょう。
⑦お風呂に浸かって体を温める
妊娠前から便秘に悩まされています。産後1ヶ月経ったので、毎日湯船に浸かって体を温めるようにしています。
そうちゃんママさん
河井先生
習慣化できるといいですね
血行がよくなると、腸のぜん動運動が活発になるので効果的です。夏場はシャワーで済ませてしまう人もいますが、なるべく湯船に浸かるようにしましょう。
⑧ウォシュレットで肛門を刺激する
授乳の影響か、便が固めです。水分を多く摂って、ウォシュレットで肛門を刺激しています。
なっぱママさん
河井先生
一時的な助けとして活用を
肛門を刺激すると、便が出やすくなります。ただ、習慣性があるとも言われているので、ウォシュレットは常用しないほうがいいでしょう。
また、腟内にウォシュレットの水が入り込み、雑菌に感染する恐れもあります。産後1ヶ月以内の使用は控え、産後の健診で入浴の許可が出てからにしましょう。
今回ご紹介した便秘の解消法は、どれも手軽に取り入れられます。いろいろ試して、ぜひ、体質に合ったものを見つけてくださいね。
健康的な生活でスムーズな排便を
便秘が続くとお腹が張って苦しくなったり、なんだか体が重く感じることもありますよね。
アンケートでは、病院で薬を処方してもらっているママもたくさん見られました。
赤ちゃんのお世話で体へ負担がかかっているからこそ、できる範囲で生活習慣や食事内容を見直して、スッキリ排便できるようになるといいですね。
排便は、健康のバロメーターですよ。
※1 厚生労働省「健康のため水を飲もう」推進運動
取材協力:助産師、看護師/エミリオット助産院 河井恵美さん
看護師・助産師の免許取得後、大学病院、市民病院、個人病院等に勤務。救急、外科外来等も経験し、看護師教育や思春期教育にも関わっていました。助産師の仕事が大好きで、25年以上この仕事をしています。青年海外協力隊でコートジボアールとブルキナファソに赴任した後、国際保健を学ぶために兵庫県立大学看護学研究科修士課程に進学・修了。2008年から夫の仕事関係により、シンガポールに住んでいます。2人の子どもを育てつつ、現地の産婦人科に勤務し、日本人の妊産婦さん方に関わっています。
※アンケート概要
実施期間:2019年5月19日~2019年5月21日
調査対象:子育てアプリ「ninaru baby」利用者
有効回答数:772件
収集方法:Webアンケート