出産後すると、生活スタイルは赤ちゃんが中心となり大きく変わりますよね。夫婦の関係も変化して「二人で話す時間が減ってすれ違いが多くなった」「家事や育児の分担のことで喧嘩が増えた」という産後クライシスを引き起こすケースも少なくありません。
今回は、産後クライシスとは何か、原因や対処法などについてご紹介します。
産後クライシスとは?
「産後クライシス」とは、出産をきっかけに夫婦仲が悪化する現象のことを指します。
産後クライシスの特徴は、ママがパパに対して一方的に不満や嫌悪感を抱くだけでなく、パパもママに対して不満や物足りなさを感じる、ということです。
起こる時期は各家庭によってさまざまですが、一般的には出産して2年以内が多いようです。
産後、一時的に夫婦仲が冷え込むという現象自体は、昔から多くの家庭でよく見られるものでしたが、テレビ番組やネット、SNSなどによって「産後クライシス」という言葉が広まってからは、出産後に起こる夫婦の危機という意味としてよく使われています。
この言葉をきっかけに、子どもが生まれることは幸せであると同時に、夫婦仲が悪くなってしまうきっかけにもなり得るということが一般的に知られるようになったともいえます。
産後クライシスの原因は?
それでは、なぜ出産後に夫婦仲が悪くなりやすくなるのでしょうか。ここでは、産後クライシスの主な原因についてご説明します。
ママのホルモンバランスの変化
産後はホルモンバランスが大きく変動するので、精神的に不安定になったり気分が落ち込みやすくなったりする人もいます。
赤ちゃんが生まれて嬉しい気持ちはあっても、「なんでもないことにイライラする」「わけもなく涙が出る」ということも珍しくありません。
そのため、パパに対して出産前までは気にならなかったことでイライラしたり、不安な気持ちをパパに理解してもらえずすれ違いを感じたりすることがあるのです。
家事や育児の分担に対する不満
家事や育児の分担が思うようにいかず、不満を感じたり苛立ったりして仲が悪くなるケースもあります。
特に家事に関しては、より一層協力して行わないと産前のようにスムーズに終わらせることはできません。
のんびりテレビを見ていたりスマホを触ったりしている姿をみると、イライラしてしまいますよね。
また、パパに育児や家事をやりたい気持ちはあっても、仕事の都合がどうしてもつかず時間がとれない、いざやったら間違えを指摘されてやりにくい、といった理由でうまく分担できず、そこからすれ違いが生じることもあります。
産後の疲れやストレス
妊娠・出産を経た体が妊娠前の状態に戻るまでには、経腟分娩の場合で一般的に6〜8週間ほど、帝王切開で出産した場合は更に長い時間がかかります。
また、年齢や体力によっても回復するまでの時間には個人差があり、産前の体の状態に戻るまで1年かかったというママも珍しくありません。
このような体が回復していない時期のママは疲れやストレスが溜まりやすく、気持ちに余裕がなくなって、ついパパに冷たく接したりイライラしたりしてしまいがちです。そのような状態が続くと、夫婦間に亀裂が入るきっかけにもなりかねません。
コミュニケーション不足
子育てに追われて慌ただしい生活が続くと、どうしても夫婦の会話が減ってしまいがちです。お互いの状況や気持ちを共有できない状態が続くと、すれ違いや喧嘩が起こる原因となります。
例えば、ママはその日のできごとをパパに話したい思っていても、赤ちゃんを寝かしつけてようやく夫婦二人の時間が持てる頃にはお互い疲れ果てて話せないことも。
パパも今後の子育てや教育のことなどゆっくり話し合いたいと思っているのに、ママは赤ちゃんにかかりっきりで相手にしてもらえないというケースもあるかもしれません。
夫婦生活の減少
パパはホルモンバランスや体調の変化がないため、性欲も以前と変わらない人が多いようです。一方で、産後のママの多くは、「それどころじゃない」「そんな気分になれない」と感じやすい時期です。
夫婦生活が自然と減少してスキンシップが減ることにより、二人の間に溝ができてしまうことも少なくありません。
産後クライシスは離婚の原因になる?
産後クライシスの状況が進み、お互いの愛情がなくなると、一緒にいることがつらくなって離婚に至るケースもあります。
厚生労働省の「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査結果報告」によると、母子家庭になったときの子どもの年齢は0〜2歳が一番多いという結果が出ています(※1)。
このことから、出産後2年以内に起こりやすい産後クライシスが原因で離婚に至ったケースが多いことが推測できます。
それでは、どうしたら産後クライシスを解消できるのでしょうか。次からは、産後クライシスの対処法を、ママ編・パパ編に分けてお伝えします。
産後クライシスの解決法!ママ側の心得は?
お互いの不満やモヤモヤを解消できるように、ママは以下のようなことを試してみるといいでしょう。
一人で家事・育児を抱え込まない
パパが仕事などで忙しくて家事や育児を分担できないときは、実家や託児サービスなどを頼るようにしましょう。
家事や育児に追われない時間を少しでも持つことで心にゆとりができると、パパに対しても感情的になりにくくなるはずですよ。
パパの家事や育児を否定しない
パパが家事や育児をしたときに、「もっと丁寧にやってほしい」「自分のやり方と違っている」などと思うことがあるかもしれません。
しかし、そこで思ったままに注意をしてしまうと、パパは嫌な気分になり、すれ違いにつながってしまいます。
否定するのではなく、「こうしたら、もっと簡単だよ」などと、さりげないアドバイスのように伝えるといいでしょう。お互い、得意とする育児や家事があるはずなので、うまく分担していけるといいですね。
積極的にコミュニケーションをとる
育児や家事で疲れていると、すぐに寝たいと思ってしまいますよね。
そういったときでも、毎日少しでも良いので話す時間を作ることを意識しましょう。
普段から密にコミュニケーションをとることで、お互いの状況や気持ちを共有でき、すれ違いや喧嘩を防ぐことができるはずですよ。
スキンシップをとる
夫婦生活が減ったことで仲が悪くなったと感じた場合は、マッサージをしあうなどさりげなくスキンシップをとることを意識すると、お互いの気持ちが離れていくのを防ぐことができるはずですよ。
ママがまだ夫婦生活を再開する気持ちになれないときは、無理に行うことはありませんが、パパにできない理由をきちんと伝えるようにしましょう。
産後クライシスの解決法!パパ側の心得は?
パパは以下のようなことを意識してみると、産後クライシスの解消につながるはずですよ。各家庭によって状況は違うので、試せることから始めてみてくださいね。
「手伝う」という考えを捨てる
家事はもちろん、育児は「母乳を与えること」以外、パパができないことはありません。
もし家事や育児を「手伝う」と考えているのであれば、「一緒にする」という意識を持ちましょう。
家事や育児は、二人で話し合って分担できるといいですね。
産後のママの体や心を理解する
妊娠・出産を経たママの体は大きなダメージを受けていて、体力が落ちて疲れやすい状態です。
また、出産のホルモンバランスの変化によって、イライラしやすくなったり気持ちが不安定になることもあります。
こういった産後の体や心の状態をパパがしっかり理解し、育児・家事の分担やママの体調を気づかうことができると、すれ違いも少なくなりますよ。
夫婦生活についてママの状況を理解する
ママは産後の体のダメージやホルモンバランスの変化、育児の疲れなどで、しばらくは性欲が減退することがあります。
夫婦生活が減ったことで、仲が悪くなったと感じたら、ママの状況を理解しておくと、心の負担が軽くなるはずですよ。
ママが一人になれる時間を作る
平日はママだけが育児や家事をしていることがほとんど、という場合は、パパが休みの日にママが一人で過ごせる時間を作るようにするといいでしょう。
ママは一人の自由な時間を持つことで、育児や家事の疲れやストレスから解消されたり、パパへの気持ちを見直すことができたりして、夫婦仲を取り戻す良いきっかけになるはずですよ。
ママが美容院や買い物など一人で行きたい場所があるときは家で赤ちゃんと留守番をする、ママが家で過ごしたいときは赤ちゃんを公園に連れて行くなど、相談しながら実行してみてくださいね。
産後クライシスはどの家庭でも起こり得ること
産後クライシスはどの家庭でも起こり得ることですが、夫婦で協力することで乗り越えることができます。
産後クライシスをネガティブに考えるのではなく、むしろ「夫婦の絆が強まる」「成長することができる」と捉えて、二人で前向きに対処していけるといいですね。
※1 厚生労働省「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査結果報告」2ひとり親世帯になった時の親及び末子の年齢