妊娠悪阻とは?原因や症状、治療法は?重症だと入院や点滴が必要?

妊娠初期に起こることが多い「つわり」はほとんどの場合が一過性で、自然になくなっていきます。ただ、まれにつわりの症状が悪化して「妊娠悪阻(にんしんおそ)」という状態になるのはご存知でしょうか。

今回は、妊娠悪阻の原因や症状、治療法などをご説明します。

妊娠悪阻の症状って?つわりとはどう違うの?

つわりとは、妊娠初期に起こる吐き気や嘔吐、食欲不振などの消化器症状の総称です。

つわりの症状が悪化して、食べ物を食べられなくなることで栄養障害や体重減少、代謝異常などのさまざまな症状が起こり、治療が必要な状態のことを「妊娠悪阻」といいます。

つわりと妊娠悪阻を明確に区別する基準はありませんが、つわりでは吐き気に波があるのに対し、妊娠悪阻の場合は1日中吐いてしまい食事を摂るのが難しくなり、体重が減っていきます。

十分な水分や栄養がとれないため、脱水や疲労感などの症状が現れます。嘔吐で喉が荒れてしまい痛みを感じたり、胃酸が増えて胃が痛くなったりすることもあります。

更に悪化すると肝臓や腎臓に障害がおきたり、意識障害や小脳の障害などがおこるウェルニッケ脳症になったりして、命に危険が及ぶ可能性があります。

約50〜80%の妊婦さんがつわりを経験するのに対して、妊娠悪阻が見られる頻度は約0.5〜2%と、それほど一般的ではありません(※1)。

妊娠悪阻になりやすい条件って?

妊娠悪阻の原因は明らかになっていません。ただ、次のようなリスク要因が考えられています(※2)。

妊娠に関するリスク要因

  • 絨毛性疾患がある
  • 前回の妊娠でも妊娠悪阻があった
  • 多胎妊娠(双子など)である
  • 初産婦である

病気の既往歴

  • 糖尿病
  • 甲状腺機能障害
  • 精神疾患
  • 喘息

妊娠悪阻で病院を受診する目安は?

病院で治療を受ける必要があるのかどうかを自己判断するのは難しいですが、「1日に何度も嘔吐している」「水すら飲めない」「体重が急激に減少している」「トイレの回数が極端に減った」といった症状が見られたときには、できるだけ早く産婦人科を受診しましょう。

病院では、どれくらい体重が減ったかや検査の結果から、妊娠悪阻かどうかを診断します。

自分では気づかないうちに、脱水や飢餓状態に陥ってしまうこともあるので、迷ったらかかりつけの産婦人科を受診してください。

妊娠悪阻の治療法は?重症なら点滴や入院が必要?

妊娠悪阻になると、水分やビタミンなどが十分に摂れないため点滴で補う必要があり、入院で治療されることが多いです(※1,2)。

入院して休養する

妊娠に対する不安や、仕事や家庭でのストレスが妊娠悪阻の症状を悪化させていることもあります。

その場合、まずは入院してしばらく穏やかに過ごしたり、カウンセリングを受けたりすると、症状が改善されることもあります。

食事療法を受ける

吐き気や嘔吐があっても、少しでも食事ができるのであれば、食べられるときに食べられるものを数回に分けて少しずつ食べることになります。

点滴で栄養を補う

入院しても症状が良くならず、嘔吐が頻繁にあり、自分で食事を摂ることが難しい場合は、点滴でブドウ糖やビタミンB1などを補います。

また、つわりや妊娠悪阻の緩和に効果があるとされるビタミンB6を補給することもあります。

症状が強いときは薬が考慮される

食事療法や点滴で症状が改善されない場合、吐き気や胃痛などを軽減する薬を投与することもあります。

妊娠初期は胎児の様々な器官が作られる重要な時期なので、薬を飲むことによる影響が気になるかもしれませんが、妊娠中も安全性が認められている薬も多くあります。

症状が辛いときは医師に相談しましょう。

妊娠悪阻の赤ちゃんへの影響は?

妊娠悪阻でなかなか食事ができないと、「赤ちゃんに栄養が行かなくなるのでは?」と心配になるかもしれません。しかし、妊娠初期の赤ちゃんはまだ小さく、妊婦さんの体に蓄えられている栄養で成長できるので、心配しすぎないでくださいね(※1)。

ただし、妊娠悪阻がひどくなって脱水症状や飢餓状態に陥ると、先述のとおり母体が命の危険にさらされてしまうので、できるだけ早く治療をしたほうが良いことには変わりありません。

妊娠悪阻の兆候があればすぐに病院を受診しよう

つわりの症状が重くても「これくらいで病院に行ってもいいのかな」と思ってしまいがちですが、水分や食事が摂れないほど嘔吐が続いたり、体重が激減したりするときは、速やかに産婦人科を受診しましょう。

妊娠悪阻の場合、入院して治療を受けることが、ママにとっても赤ちゃんにとっても大切なので、無理に我慢をしないでくださいね。

監修医師:産婦人科医 間瀬徳光先生

産婦人科医 間瀬徳光先生
2005年 山梨医科大学(現 山梨大学)医学部卒。板橋中央総合病院、沖縄県立中部病院などを経て、現在は医療法人工藤医院院長。産婦人科専門医、周産期専門医として、産科・婦人科のいずれも幅広く診療を行っている。IBCLC(国際認定ラクテーション・コンサルタント)として、母乳育児のサポートにも力を注いでいる。

【参考文献】
※1 株式会社メディックメディア『病気がみえるvol.10 産科 第4版』pp.83, 88
※2 メジカルビュー社『プリンシプル 産科婦人科学2 産科編』pp.290-293

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