出産後、体重がなかなか戻らず「ダイエットしたい」と思う人もいるかもしれません。その一方で、授乳中にダイエットをしても大丈夫なのか疑問に感じることも。
そこで今回は、授乳中にダイエットをしてもいいのか、始めてもいい時期や気をつけたいこと、母乳への影響についてご説明します。
授乳中にダイエットをしてもいいの?
授乳中にダイエットをしても問題はありません。ただし、少なくとも産後1ヶ月間はダイエットは行わないようにしてください。
出産直後は体が疲弊しきっているため、まずは体の回復が最優先です。産後1ヶ月間は体重のことは気にせず、赤ちゃんのお世話やママ自身のケア、身のまわりのことだけを行いましょう。
産後1ヶ月健診でダイエットをしても問題ないか医師に確認し、許可が出れば少しずつ始めてみてもいいですね。
授乳中にダイエットするときに気をつけたいことは?
産後1ヶ月を過ぎて授乳中にダイエットをしたい場合は、以下の2点に気をつけましょう。
極端な食事制限をしない
摂取カロリーや食事の量・回数を極端に減らすのは避けてください。
授乳中はカロリーを多く消費するので、非授乳時よりも1日あたり350kcal多く摂ることが推奨されています(※1)。必要なカロリーや栄養が不足すると、ママの健康状態や母乳分泌にも影響する可能性があるとされています(※2)。疲れやすくなったり免疫力が落ちたりするリスクが高まり、授乳をはじめ、赤ちゃんのお世話をする体力や気力まで奪われてしまうこともあります。
体に負担をかけない
産後1ヶ月を過ぎたからといって、体はまだ完全には回復していません。また、赤ちゃんのお世話で疲労が溜まってくる時期でもあります。激しい運動など、体に過度な負担がかかることはやめましょう。
授乳中に体重を見直す方法は?
授乳中に体重を見直したい場合は、以下のような方法を取り入れてみましょう。
バランスのとれた食事
赤ちゃんの成長とママの健康のためにも、授乳中は栄養バランスのよい食事を心がけることが大切です。
1日3食のうち少なくとも2食は、主食・副菜・主菜を組み合わせて、炭水化物、ビタミン、ミネラル、食物繊維、たんぱく質をバランスよく摂取しましょう(※3)。カルシウム不足を予防するために、乳製品や緑黄色野菜、豆類、小魚なども意識的に食べるようにするといいですね。
間食をとりたい場合は、小さめのおにぎりや焼き芋など腹持ちが良いものがおすすめですよ。
適度な運動
ストレッチ、体操、ウォーキング、ヨガ、散歩など、軽い運動を継続するといいでしょう。産後1ヶ月健診の際に、どんな運動なら問題ないか聞いておくと安心です。
運動中に少しでも疲れや体の異変を感じたら、すぐに休むようにしてくださいね。
ダイエットのために食生活を変えると母乳に影響するの?
ダイエットのために「野菜を中心に食べる」「脂質や糖質が多いものを控える」といった食生活をすると、「母乳の量や質に影響するのでは?」と考えることもあるかもしれません。
食事と母乳の量・質の関係性については十分な調査報告がされていないのが現状です(※4)。また、乳腺炎の原因や予防の観点からも、UNICEF/WHOは「授乳中の女性は特別なものを食べたり、特定の食事を避けたりする必要はない」としています(※5)。
ただし母乳の量や質に影響がないからといって、ダイエットのために偏った食事をするのは体に良いことではありません。授乳中はバランスのとれた食事を意識しましょう。
授乳中のダイエットは無理せずコツコツと
妊娠中に変化した体重や体形は、産後数ヶ月かけて少しずつ元に戻っていきます。ただし個人差があり、消費カロリーや運動量、年齢など、さまざまな要因が影響します。
授乳中にダイエットをしているのに思うように体重が減らなくても心配はいりません。くれぐれも無理なダイエットはせず、栄養バランスのよい食事や軽い運動などを意識しながら健康的な生活を送っていけるといいですね。
監修:看護師・助産師小児科 岡 美雪さん
看護師・助産師を免許を取得後、未熟児病棟、脳神経外科病棟、産科病棟で医療業務に従事。その後、医療現場での経験を活かして、青年海外協力隊の看護職としてアフリカに2年間駐在し、現地の医療技術向上に貢献。日本に帰国後、現在は大学院で助産学の研究活動をしている。
【参考文献】
※1 厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
※2 厚生労働省 「授乳・離乳の支援ガイド 2019年3月」
※3 厚生労働省 「妊娠前からはじめる 妊産婦のための食生活指針」
※4 株式会社南江堂 『エビデンスをもとに答える妊産婦・授乳婦の疑問92』
※5 日本助産師会「乳腺炎ケアガイドライン2020 第2版」