妊娠を希望している女性にとって、自分の体が妊娠しやすい状態かどうかは気になりますよね。まずは基礎体温表をつけてみて、体のコンディションをチェックしてみましょう。
今回は、妊娠するために理想的な基礎体温表のほか、4つのタイプ別にどんな不調が隠れているか、妊娠している可能性があるときのグラフはどんな状態かをご説明します。
そもそも基礎体温とは?
基礎体温とは、運動や食事、感情の起伏などの条件を除いた体温のことです。少し動いただけでも体温は上昇してしまうので、寝起き直後の一番安静な状態にあるときに、起き上がらずに測りましょう。
基礎体温の計測には、小数点第2位の単位まで測ることができる「婦人体温計」を使います。枕元のすぐ手が届くところに置いておき、目が覚めたらトイレなどに行く前に、舌の下に入れて基礎体温を測ります。
基礎体温グラフから何がわかるの?
基礎体温グラフをつけると、以下のようなことが推測できます。
● 次の生理予定日
● きちんと排卵されているか
● 妊娠しやすい時期(排卵期)
● ホルモン分泌が正常か
● 妊娠の有無
自分の体のリズムがある程度つかめてくると、体調管理やスケジュール調整をしやすくなり、妊娠を希望している人は性交のタイミングを考えることができます。まだ基礎体温を測ったことがないという人は、ぜひ記録を始めてくださいね。
妊娠しやすい正常な基礎体温とは?
上のグラフは、次の条件が揃った正常な基礎体温表の例です(※1)。
● 高温期が10日間以上続く
● 高温期と低温期の体温差が0.3度以上ある
● 高温期の途中で体温が落ちない
● 低温期から高温期に3日以内で移行する
上のグラフのように、基礎体温が低温期と高温期の二相に分かれていると、より妊娠しやすい時期(排卵期)を把握しやすくなります。
ただし、基礎体温はちょっとした体調の変化などにも影響を受けるため、上のグラフと多少差があっても、心配しすぎないでくださいね。3周期くらいは基礎体温を記録してみて、自分の基礎体温や生理周期を把握するようにしましょう。
基礎体温のタイプ別に不調をチェック!
さっそく基礎体温表をつけてみたけれど、理想的な形のグラフにならない…という人は、もしかすると妊娠しにくい体の状態になっているかもしれません。
以下、4つのタイプの基礎体温表をご紹介しますので、自分の基礎体温表に近いタイプについて、原因をチェックしてみましょう(※1)。
1. 低温期が長く、高温期が短い
排卵後に分泌される黄体ホルモン(プロゲステロン)には、子宮内を妊娠しやすい環境に整える役割があります。プロゲステロンには体温を上昇させる作用があるため、排卵後に基礎体温が上がって高温期が訪れます。
高温期が10日以上続かないということは、黄体機能が低下していて、プロゲステロンの分泌量が早く減少してしまっている可能性があります。そのため、月経による出血のタイミングが早くなることもあります。
生殖器や子宮内膜が冷えて血流が悪い状態が続くと、妊娠しづらくなったり、流産しやすくなったりといった可能性があります。冷えを予防する食事や半身浴などで体を温めて、体質を改善していきましょう。
2. 高温期が不安定
高温期を保ちきれず、体温が上がったり下がったりと不安定な波形を描く場合も、黄体機能不全により、プロゲステロンが正常に分泌されていない可能性があります。また、排卵以前に、卵胞の発育が遅れていることもあります。
黄体機能不全があると、子宮内膜が十分に厚くならず、せっかく受精しても着床が起こらず、なかなか妊娠できない原因にもなりうるので注意が必要です。
3. 二相に分かれているが、全体的にガタガタである
基礎体温がガタガタでも、高温期と低温期の二相に分かれていれば、排卵は起こっていると考えられます。しかし、妊娠を考えている人にとっては、排卵日が予測しづらいのは困りますよね。
基礎体温が安定せず、グラフがガタガタになる場合、ストレスで自律神経が乱れている可能性があります。引越しや転職など、環境の変化による一時的なものであれば問題ありませんが、普段から疲れを溜めこみすぎないように気をつけましょう。
4. 一相しかない(高温期であるはずなのに体温が低い)
本来であれば高温期であるはずの時期に0.3度以上の体温上昇が起こらない場合、卵胞が黄体へと変化しておらず、プロゲステロンが十分に分泌されていないことが考えられます。
人によっては、高温期と低温期の差がほとんどなく、一相だけのグラフになってしまうこともあります。この場合、子宮内膜に対するプロゲステロンの作用が少なく、受精卵が着床するために必要な子宮内膜の状態を保つことができません。
また、生理が起きていても、排卵が起こっていない「無排卵月経(無排卵周期症)」の可能性もあります。生理不順になりやすく、不妊につながる恐れがあるので、早めに婦人科で相談しましょう。
基礎体温で高温期が長いときは妊娠している?
通常、高温期は14日前後ですが、もし17日以上続く場合は、妊娠している可能性があります(※1)。上のような基礎体温表になっており、生理開始予定日から1週間以上過ぎても生理が来ない場合は、妊娠検査薬を使って確認してみましょう。
しかし、「高温期がずっと続いているけれど、妊娠検査薬は陰性で、生理が来ない」というケースも稀にあります。なかなか低温期に戻らないときは、自分の基礎体温を記録したグラフを持って、婦人科で相談してみましょう。
妊娠しやすい基礎体温かどうかチェックしてみましょう
妊娠したいと願う女性にとって、生理周期が整っていることと、きちんと排卵が起こっていることはとても大切です。普段生活していると、自分の体のささいな変化に気づかないかもしれませんが、基礎体温表をつけてみると見えてくることがたくさんあります。
まずは2~3周期ほど記録をつけてみて、妊娠しやすい状態かどうかチェックしてみましょう。
監修医師:産婦人科医 城 伶史先生
日本産婦人科専門医。2008年東北大学医学部卒。初期臨床研修を終了後は、東北地方の中核病院で産婦人科専門研修を積み、専門医の取得後は大学病院で婦人科腫瘍部門での臨床試験に参加した経験もあります。現在は産科・婦人科および不妊治療と産婦人科全般にわたって診療を行っております。
【参考文献】
※1 株式会社メディックメディア『病気がみえる Vol.9 婦人科・乳腺外科 第4版』pp.24-25