妊活を進めるときには、妊娠に関する基礎知識として、精子についても知っておきたいですよね。精子が作られる仕組みや、妊娠するために大切な要素である数や質についてわかれば、妊活もスムーズにいくかもしれませんよ。今回は、精子とは何か、その数や作られ方などについてまとめました。
精子とは?
精子とは、男性の生殖細胞の一つで、妊娠・出産になくてはならない存在です。
遺伝情報を含んだ細胞核からなる頭部、ミトコンドリアを含みエネルギーを生成する中片部、推進運動を行う尾部から構成されています。
ミトコンドリアをエネルギーに鞭毛が動き、前に進むことができます。この精子の運動機能によって、膣内に射精された精子が卵子の元まで移動し、受精につながります。
精子はどうやって作られるの?
精子は睾丸の中にある「精巣」で作られます。元の原料はたんぱく質で、およそ74日間かけて精原細胞から精子になります。作られた精子は、精子の通り道(精管)を成長しながら通って射精され、体外に排出されます。
「精子の数によって精液の濃度が変わって、匂いや見た目が変化するのでは?」と思う人も多いようですが、精子は顕微鏡で見なければならないほど小さいので、数による違いはないとされています。
匂いや見た目の変化は、男性の体調や精液を構成している前立腺液と精嚢分泌液の割合や混ざり具合によって生じます。
精子の数はどれくらい?
男性は一日に、5,000万~1億個の精子を作っています。
卵子はもともと卵巣に貯蔵されている原始卵胞が排卵されて、卵子の元になる原始卵胞はどんどん在庫が減っていくのですが、精子は毎日新しく作り続けています。
精巣には最大10億個の精子を保存でき、一回の射精で1億~4億個の精子を出すことができます。精子の質を保つという意味でも、2~3日に1回の射精がちょうど良いといわれていますが、毎日射精しても問題はありません。
精子の数だけが妊娠に重要なの?
精子は数が適切にあれば良いというわけではなく、精子の質が良いかどうかが妊娠しやすいかどうかに深く関わっています。一般的に精子の質とは、精子の運動率のことをいいます。
射精された後、子宮内をしっかりと前進して卵子にたどり着けるかどうかは、とても重要ですよね。運動率が低いときには、いくら数があっても卵子までたどり着けないという可能性もあります。
精子の寿命は?
健康な精子は、射精後に腟内に入ると、そこから数日間の寿命があることがわかっています。卵子の寿命が約1日であることを考えると、精子の方が生存期間が長くなります。
妊娠には卵子と精子の受精が必要ですが、妊娠しやすい期間を考えると、排卵日直前に性交を行って、先に精子を女性の体内に注入しておくのが妊娠をめざすコツです。
健康な精子であれば、女性の体内で2日間は生きているので、排卵日前後で最低限1日おきに性交渉をすることが望まれます。
精子の寿命については、最近では精子の冷凍保存ができるようになりました。病気の方などが将来赤ちゃんを授かることを目的として精子凍結をすることがありますが、ある一定数は解凍時に死んでしまいます。
精子凍結を希望する場合は、担当の専門医に十分相談の上、行うようにしましょう。
精子の数は加齢で減るの?
年齢を重ねるごとに、体や臓器だけでなく精子も劣化します。劣化は35歳頃から始まるといわれていて、子供を希望しているときには、早めの妊活が重要です。
卵子は生まれたときから数が決まっていて、精子は毎日新しく作られていますが、その「新しい精子」も老化と無関係ではなく、質も落ちていってしまうのです。
具体的には、精子の数が減少するだけでなく、精液量も減少して、精子の運動率も低下するといわれています(※1)。不妊は男性側にも原因があることが多いため、なかなか妊娠できないと感じたときには、女性だけでなく男性も不妊検査を受けるようにしましょう。
精子の数はどうやって検査するの?
男性の不妊検査としては、精液検査を行うのが一般的です。男性が自宅や病院にて精子を採取し、検査に提出します。精子の数だけでなく、血液や膿が混ざっていないか、色はどうか、精液の量や濃度、精子の運動率・奇形率といった数値をチェックします。
検査内容によって保険適用内、適用外が異なり、料金もまちまちです。事前に、検査を行う病院に確認しましょう。
精子の数を増やすには?
妊娠率を高めるためにも、精子の数を増やしたり運動率を高めたりして、質を良くしておきたいですよね。男性の生活習慣によって、精子の質は左右されることが知られています(※2)。次のようなポイントに注意して、生活習慣の改善を心がけてくださいね。
● アルコールの摂取量を控える
● 栄養バランス良く、果物や野菜を食べる
● 運動を心がける
● 肥満を解消する
● 禁煙する
● 精巣を温めないようにする
● 陰嚢を締めつけない
● 精神的なストレスをためすぎないようにする
妊活中は精子の数を意識しよう
妊娠には精子の数も大切になります。なかなか妊娠できないのは女性だけが原因とは限りません。お互いの体の仕組みを学び、喫煙や飲酒を控えることや肥満の解消といった生活習慣の改善を、パートナーと一緒に取り組んでくださいね。
監修医師:泌尿器科 小堀善友先生
プライベートケアクリニック東京 東京院院長。2001年、金沢大学医学部卒業。金沢大学泌尿器科、米・イリノイ大学シカゴ校泌尿器科、獨協医科大学埼玉医療センター泌尿器科准教授を経て、2021年より現職。日本泌尿器科学会専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医、日本性機能学会専門医、日本性感染症学会認定医、日本性科学会セックス・セラピスト。著書に『オトコの「性」活習慣病』(中公新書ラクレ)、『妊活カップルのためのオトコ学』(メディカルトリビューン)、『今日の診断指針第8版「男子性発育の異常」』(医学書院)など。
※1 日本生殖医学会「不妊症Q&A よくあるご質問 年齢が不妊・不育症に与える影響」
※2 Food intake and social habits in male patients and its relationship to intracytoplasmic sperm injection outcomes