妊娠を希望している女性の多くが、基礎体温を測っているといわれています。基礎体温を正しく測ることはもちろんですが、基礎体温の変化がわかるように「基礎体温表」に記入して排卵日を予測することが、妊娠するためには大切です。そこで今回は、基礎体温表や見方、どんな基礎体温表があるのかについてご説明します。
そもそも基礎体温とは?
妊娠を考え始めたばかりの人には、「基礎体温」という言葉も聞きなれないかもしれませんね。
基礎体温とは、人間が生きていくための必要最低限のエネルギーだけを使っているときの体温をいいます。目が覚めた直後の、体がもっとも安静な状態で、基礎代謝だけが反映された体温です。
その基礎体温の変化がわかるようにグラフ化したものが、「基礎体温表」です。
基礎体温はふだんの体温とは違うの?
女性の基礎体温は、約1ヶ月の周期の中で排卵時期を境目として、体温が低い「低温期」と体温が高い「高温期」の二相にわかれます。基礎体温表をつけることで、この二相がわかりやすくなります。
二相の体温差がより正確にわかるのが、寝起き直後で体がもっとも安静な状態で測る基礎体温です。起きてから時間が経ったり動いたりすると体は活動を始め、体温が上昇してしまいます。
基礎体温の正しい測り方は?
基礎体温表は、体温の細かい変化がわかるように0.05度単位で記入できるようになっていることが一般的です。そのため、一般的な体温計ではなく、0.01度単位で測れる婦人体温計を用意しましょう。
1. 基礎体温計を枕元に置いておく
2. 毎朝同じ時間に起きるようにする
3. 起きたら布団のなかで寝たままの状態で測る
測り終わったら、その日の基礎体温を基礎体温表に記入しましょう。
基礎体温表とは?つける目的は?
測定した基礎体温を点で記入し、その点をつないでグラフにしたものが基礎体温表です。
上の基礎体温表では、低温期の終わりのほうで基礎体温がガクンと下がっている日があります。この日を中心として、低温期から高温期に移る数日間の間に排卵が起きているとされています(※1)。
排卵日の前後はいちばん妊娠しやすいため、このタイミングで性行為をすると妊娠する可能性が高まるとされています。
低温期の体温の落ち込みは、毎回の周期で起きるわけではありません。そのため、継続して基礎体温表をつけることが大切です(※1)。
また、高温期が続く日程や生理周期を基礎体温表で把握すれば、次回の生理が始まる日を予測することもできます。
基礎体温表の見方は?
女性ホルモンが正常に分泌され、排卵が起きていたら基礎体温表が二相に分かれます。このように、基礎体温表をつけて基礎体温の傾向を把握することで、今の健康状態がわかります。
基礎体温表の見方
1. 基礎体温が低温期と高温期の二相に分かれているかどうか
2. 低温期と高温期の差が0.3度以上あるかどうか
3. 高温期の体温が安定しているかどうか
4. 高温期が10日以上続くかどうか
上記を満たしているときは、ホルモンバランスが正常に分泌され、排卵が起きているといえます(※1)。
続いて、基礎体温表をつけたときに上記と違うグラフを描いたとき、体がどのような状態にあるのかをご説明します。
基礎体温表からわかること
1. 基礎体温が二相ではなく一相のとき
低温期が続くときは、排卵していないことが考えられます。生理のような出血があったとしても、これは正確には生理ではなく、子宮内膜が剥がれ落ちたことによる出血です。
2. 高温期に体温があまり上がらず、安定しない
低温期と高温期の体温差が0.3度以内、体温が安定しない、高温期が10日以内で終わるというときは、黄体機能不全が疑われます。
女性ホルモンの「プロゲステロン(黄体ホルモン)」の分泌が不十分なことが原因で、不妊や不育、生理不順の原因となります。
3. 高温期が17日以上続くとき
妊娠が成立するとプロゲステロンの分泌が続き、高温期が続きます。生理がこない場合は産婦人科を受診し、妊娠しているかどうか確認しましょう。
基礎体温表はどれくらいつければいい?
基礎体温表から基礎体温の変化の全体像を把握するには、最低3ヶ月、できれば半年は基礎体温表をつけるように指導されることが多いようです。
「朝の忙しい時間に基礎体温表をつけるのは面倒だな」と思う人もいるかもしれませんね。
しかし最近は、たった10秒で計測できる婦人体温計もあります。さらに、通信機能を搭載してパソコンやスマートフォンに測定した基礎体温を転送し、基礎体温表を自動で作成してくれる商品もあります。
基礎体温表をつけるのができるだけ負担にならないように、自分にとって使いやすい婦人体温計を選ぶといいですよ。
基礎体温表はどこで入手できるの?
基礎体温表をつけるときは、大きく分けて、手書きタイプとアプリタイプのどちらかを選ぶことになります。
手書きタイプの基礎体温表
手書きタイプの基礎体温表は市販されているものもありますが、生理用品のメーカーなどのサイトから無料ダウンロードすることもできます。
市販の基礎体温表は手帳タイプのものが多く、前の周期と比較しやすいことがメリットです。
また婦人科を受診すると、医師から基礎体温を測るよう指示されるとともに、基礎体温表を渡されることもあります。
アプリタイプの基礎体温表
最近は、基礎体温表を自動で作成してくれる無料のアプリを使っている人も増えています。
基礎体温だけでなく、体重や体調、性行為の有無などをタップやスクロールするだけで入力できるアプリもあります。
さらに、自動で基礎体温表を作成してくれるだけでなく、妊娠のしやすさも表示してくれるので、妊活している人の強い味方ですよ。
基礎体温表をつけようと思っている人は、ぜひ、無料のアプリをダウンロードして使ってみてください。
基礎体温表をつけて妊娠の可能性を上げよう
妊娠を希望している女性で、基礎体温表をつけてみようか検討している人も多いのではないでしょうか?なかには、周りのひとから「面倒で続けられなかった」と聞いてためらっている人もいるかもしれませんね。
しかし、基礎体温表をつけると妊娠のしやすさだけでなく、自分の健康状態もわかります。
手軽に基礎体温表を作成できる無料のアプリもあるので、上手に活用して妊活や健康な体づくりに役立ててくださいね。
監修医師:産婦人科医 藤東淳也先生
日本産科婦人科学会専門医、婦人科腫瘍専門医、細胞診専門医、がん治療認定医、日本がん治療認定医機構暫定教育医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医で、現在は藤東クリニック院長。専門知識を活かして女性の快適ライフをサポートします。
※1 株式会社メディックメディア『病気がみえる Vol.9 婦人科・乳腺外科 第4版』pp.24-25