妊娠1ヶ月目とは妊娠0~3週までの4週間で、受精卵が子宮内に着床するまでの期間です。体の中ではどのような変化が起きているのでしょうか。
今回は妊娠1ヶ月の自覚症状や体の変化、赤ちゃんの状態についてご説明します。
妊娠1ヶ月目の妊婦さんの状態は?
妊娠1ヶ月目は、精子と卵子が出会って受精卵になり、着床して妊娠が成立するまでの期間です。
まだ妊娠していない時期を妊娠期間に含むことに違和感があるかもしれませんが、これはWHO(世界保健機関)が定める妊娠期間の定義によります。
最後の生理が始まった日を妊娠0週0日とし、その280日後(妊娠40週0日)を出産予定日と定めます。
妊娠0週目
生理が始まった日を妊娠0週0日とするので、妊娠0週目は生理が続いている状態です。妊娠のもととなる卵子の準備が始まっていますが、お腹の中ではまだ何の変化も起きていません。
妊娠1週目
妊娠1週目は、卵巣内にある卵胞が成熟して、排卵する卵子の準備をしている時期です。個人差はありますが、卵子の寿命は24時間、精子の寿命は72時間といわれているので、排卵日の1〜2日前がもっとも妊娠しやすいです(※1)。
妊娠2週目
生理周期が28日で安定している人は、2週目のはじめあたりで排卵が起こります。
妊娠2週目には、卵子と精子が出会い、受精卵ができます。その後、受精卵は細胞分裂を繰り返しながら、子宮へと向かって進んでいきます。
妊娠3週目
妊娠3週目は、受精卵が子宮内膜に着床する時期です。受精卵は受精後6~7日に着床を開始して、数日かけて着床を完了します(※1)。
ここでようやく妊娠が成立し、体が変化し始めます。
着床をきっかけにhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)と呼ばれるホルモンが活発に分泌されるようになり、次の排卵を止めて、妊娠・出産に向けた体作りを進めます。
このhCGの分泌量が多くなっているかどうかを検知することで、妊娠検査薬による妊娠判定ができるようになります。
妊娠1ヶ月目に症状は現れる?
妊娠3週目にようやく着床が起こるので、妊娠1ヶ月の間では妊娠による自覚症状はほとんどありません。
ただし、早い人は妊娠1ヶ月目の終わり頃に「妊娠超初期症状」が現れる可能性があります。
妊娠超初期症状が現れるかどうかは個人差があり、風邪や月経前症候群とも間違えやすいので、参考程度に考えてくださいね。
妊娠超初期症状の例
● 高温期が2週間以上続く
● 胸が張る、痛くなる
● 体がだるい、眠い
● おりものが変化する
● 頭痛がする
● 胃がムカムカする
● 頻尿、便秘、下痢になる
● 味覚、嗅覚が変わる
着床したときに「着床出血」や「着床痛」が起こることもありますが、どれも注意していないと見逃してしまうような症状ばかりです。
もし、生理以外の時期に多量の出血やひどい腹痛、腰痛などが現れた場合は、異所性妊娠(子宮外妊娠)などの可能性もあるので、早めに病院を受診するようにしましょう。
妊娠1ヶ月目の体の中の変化は?
妊娠1ヶ月目では外見上は目立った体の変化はありません。
ただし、妊娠3週目の後半で着床が起こると、体の中ではさまざまな変化が起こりはじめます。
着床で活発になるhCGの影響で女性ホルモンである「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」の分泌量が増加します(※1)。
この2つのホルモンの影響で、妊娠を維持しやすくなるように基礎体温の高温期が維持されたり、子宮内膜が厚くなったりするなどの変化が続きます。
ただし目に見える変化ではないので、自覚症状としては現れません。
妊娠1ヶ月目に妊娠判定はできるの?
妊娠を希望している人は早く妊娠しているかどうかを知りたい気持ちになりますよね。
ただ、妊娠1ヶ月目では自覚症状もほとんどなく、妊娠検査薬も使えないので、妊娠判定はできません。
市販されている一般の妊娠検査薬の場合は、妊娠4〜5週目を迎えるまでは正確な妊娠判定ができないので、もう少し待ってくださいね。
妊娠1ヶ月目の赤ちゃんの状態は?
妊娠1ヶ月目では受精卵が何度か細胞分裂をしただけで、まだ数mmの大きさです。
赤ちゃんを包む袋である「胎嚢」は妊娠5週目頃、赤ちゃんの元になる「胎芽」は妊娠6週目頃に、超音波検査で確認できるようになるので、もう少し成長するのを待っていてくださいね(※1,2)。
妊娠1ヶ月目の過ごし方は?注意することって?
妊娠1ヶ月目は妊娠しているかどうかを判断できない時期ですが、少しでも妊娠の可能性がある場合は、以下のものに気をつけてくださいね。
タバコ
タバコに含まれるニコチンや一酸化炭素といった成分には、血管を収縮させる作用や、酸素を取り込みにくくさせる作用があります。
赤ちゃんに栄養や酸素が届きにくくなって、胎児発育不全や早産などが起きる危険性があります(※1)。
アルコール
妊娠中のアルコール摂取に関して、安全な量ははっきりしていません。飲酒をすることで流産や死産の確率が高まり、胎児の脳や体に障害を与えることもあります(※1)。
妊娠1ヶ月は妊娠を意識していない人も多いので、飲酒を完全に控えるのは難しいかもしれませんが、妊活を始めたらアルコールを飲む頻度や量を減らすことをおすすめします。
カフェイン
カフェインも日本では安全な量の目安が定められていません。カフェインを含んだ飲み物を飲んだからといって、すぐに悪影響を与えるわけではありませんが、流産や低出生体重児につながるリスクもあります(※2)。
妊娠がわかったらできるだけ控えておくと安心ですね。
薬・サプリメント
妊娠1ヶ月の時点では、薬を服用しても胎児に影響を及ぼすことはほぼないとされていますが、赤ちゃんの重要な器官や臓器の形成が始まる妊娠2~4ヶ月頃になると、薬による影響が出やすくなります(※1)。
妊娠の可能性があるとわかったタイミングから、薬やサプリメントの服用は慎重に行いましょう。服用前に、医師や薬剤師に相談すると安心です。
定期的に飲んでいる薬がある人は、妊娠が判明したタイミングでかかりつけの医師に相談するようにしてくださいね。
妊娠1ヶ月目に注意しておきたいことは?
妊娠初期に特に注意しておきたい病気は「風疹」です。
妊婦さんが風疹ウイルスに感染すると、胎児に「先天性風疹症候群」を発症するおそれがあります。先天性風疹症候群にかかると、生まれた後に白内障や難聴、先天性心疾患などの障害が起こることがあります。
風疹ウイルスは、一度感染したり、ワクチンを接種したりして抗体ができていれば、再び感染することは極めて稀です。
ただし、妊婦さんが風疹ワクチンを接種することはできません。もし、抗体がない場合は、手洗い・うがいを徹底し、人混みや子どもが多い場所を避けてマスクを着用するなどして、感染予防を徹底してくださいね。
また、同居している家族にも風疹の抗体があるかを確認しておくと安心です。自治体によっては無料で抗体検査をしてくれますよ。
同居している家族が風疹の抗体を持っていなかった場合は、速やかに予防接種を受けてもらうようにしましょう。
妊娠1ヶ月目は化学流産が起こる可能性も
受精卵ができて子宮内膜に着床したものの、着床が長続きせず妊娠に至らないことを「生化学的妊娠」といい、「化学流産」とも呼ばれます。
妊娠1ヶ月目は、この化学流産が起こる可能性があります。まだ妊娠判定ができないので、受精卵が着床したことに気づかないまま流産になっているケースもあります。
「流産」と聞くと気が重くなるかもしれませんが、化学流産の原因は主に胎児側の染色体異常で、気をつけていても防げるものではありません。
また、腹痛や出血などの症状もなく、手術などを行う必要ありません。あまり考えすぎず、普段通りの生活を送ってくださいね。
妊娠1ヶ月目は妊娠の可能性を意識した生活を送ろう
妊娠1ヶ月は自覚症状もなく、妊娠したかどうかもはっきりしない段階です。妊娠を希望している人なら「妊娠したかな?」とドキドキする時期ですが、妊娠症状が現れるのはもう少し先なので、気にしすぎないで穏やかに過ごしてくださいね。
ただし、妊娠している可能性があることを踏まえて、日々の生活習慣は見直しましょう。
妊娠1ヶ月目ではまだまだ小さな赤ちゃんですが、ここから約9ヶ月間で驚くべきスピードで成長を遂げます。これからのマタニティライフは体調に気遣いながら、赤ちゃんと一緒に毎日を大切に過ごしてくださいね。
監修医師:産婦人科医 藤東 淳也
日本産科婦人科学会専門医、婦人科腫瘍専門医、細胞診専門医、がん治療認定医、日本がん治療認定医機構暫定教育医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医で、現在は藤東クリニック院長。専門知識を活かして女性の快適ライフをサポートします。
※1 メジカルビュー社『プリンシプル 産科婦人科学2 産科編』 p23, 30, 217,763,766
※2 株式会社メディックメディア『病気がみえるvol.10 産科 第4版』p.6,81