出産がはじめての妊婦さんは自然分娩と聞いても、どのような分娩方法なのかイメージしづらいですよね。他の出産方法と比べるとどんなメリットやデメリットがあるのでしょうか。
今回は出産にあたって知っておきたい自然分娩の定義や流れ、費用、メリット・デメリットなどをご説明します。
自然分娩とは?経腟分娩とは違うの?
実は、「自然分娩」にはっきりとした定義はありません。一般的には、経腟分娩で痛みを和らげる麻酔や、赤ちゃんが出てくるときに手助けする吸引処置などの医療行為を行わず、自然の流れに沿った出産のことをいいます。
ただし、「経腟分娩であれば自然分娩である」という捉え方もあり、陣痛が長引いて陣痛促進剤を使う場合などでも自然分娩であると考える医師もいます。
なお、無痛分娩も経腟分娩のひとつですが、無痛分娩は麻酔などの医療介入があるため自然分娩には入らない、と捉えられるのが一般的です。
自然分娩の流れは?始まり方は?
自然分娩の流れは人それぞれですが、お産の始まりの主なサインは「陣痛」「破水」「おしるし」の3つです。
こそだてハックの読者アンケート(※)によると、「陣痛」から始まったという人が最も多く、ついで「破水」と「おしるし」が同数という結果でした。
陣痛から始まる場合
陣痛とは、赤ちゃんを押し出そうと子宮が収縮することで感じる痛みです。陣痛らしきものを感じたら、痛みが治まって次の痛みが来るまでの時間を計りましょう。
定期的に起こる痛みがだんだん強くなり、間隔が狭まってきたら、陣痛の可能性があります。
産院によって異なりますが、基本的に初産婦の場合は間隔が5〜10分、経産婦の場合は間隔が10〜15分程度になったら連絡をすることが多いようです。
体験談
陣痛の間隔が空いていたので、「前駆陣痛かもしれない」と思い、しばらく家で耐えていました。しかし、あまりにも長く続くので「これはもしや陣痛かも」と思い病院に向かうと、子宮口がすでに4cm開いており、そこからあっという間に生まれました。(かおるママさん・30代)
破水から始まる場合
破水とは、赤ちゃんを包んでいる卵膜が破れ、中に入っていた羊水が外に出てくることをいいます。
破水は自分の意思とは関係なく、透明もしくは薄い黄色の液体が流れ出てきます。ちょろちょろと少量ずつ出ることもありますし、バシャっと勢いよく流れ出ることもあります。
多くの場合は陣痛の後に破水が起こるのですが、「前期破水」といって陣痛の前に破水が起きることもあります。このような場合は、感染の恐れがあるため、すぐに連絡して病院に向かいましょう。
破水したときのために、事前に大きめのバスタオルや夜用ナプキンを用意しておくと安心です。尿漏れと勘違いしやすいですが、破水の場合は無臭あるいは生臭い匂いがあることが多いですよ。
体験談
夜中に破水しましたが、尿漏れとの区別がつかず、とりあえず寝ました。だんだんお腹が痛くなり、朝方におしるしがあったので、「あ、始まるんだな」とようやく気がつきました。(ジェニさん・30代)
おしるしから始まる場合
おしるしとは、子宮頸管の粘液などが、赤ちゃんを包む卵膜からの出血と混ざって出てくるものです。見た目は「ピンク色の血の混じったおりもの」という感じです。
おしるしがきてすぐに陣痛が始まり、数時間で出産する人もいますが、おしるし後に特に何もないまま1週間以上経ってから出産したという人もいます。
体験談
おしるしから出産まで20時間と長くかかったため、夫も私も初めて感じる緊張と寝不足のうちに、初のお産を迎えました。(ソウくんママさん・30代)
自然分娩の方法は?
一口に自然分娩といっても、その方法はさまざまです。呼吸法によって陣痛の痛みを和らげるもの、産む姿勢にこだわらず自由な姿勢で産むものなど種類が豊富なので、出産に対する自分の考え方に合ったものを選べるといいですね。
ラマーズ法
「ヒッ、ヒッ、フー」というリズムが有名な「ラマーズ法」は、分娩の痛みを和らげる効果があるとされています(※1)。
病院によって呼吸法が多少異なることがあるので、助産師さんの誘導に従って呼吸を整えてくださいね。
リーブ法(RIEB法)
リーブ法とは、Relaxation(リラックスすること)、Imagination(イメージすること)、Exercise(効果的に身体を動かすこと)、Breathing(しっかり呼吸すること)の頭文字をとった、中国気功法をもとに考案された呼吸方法です。
ゆったりとした腹式呼吸を学び、分娩のときは赤ちゃんと子宮口に意識を集中させます(※2)。
ソフロロジー法
ソフロロジー法は、自分の心を平安に保つための考え方です。普段から赤ちゃんに話しかけて母性愛を育んだり、イメージトレーニングで陣痛に備えたりすることで、安心して出産に臨めるようになるといわれています。
他の分娩方法と同じく痛みはあるのですが、ソフロロジー法を繰り返すことで、「この痛みを越えれば、赤ちゃんに会えるんだ」と陣痛を前向きに捉えられるようにしていきます。
アクティブバース
アクティブバースは、自分の好きなスタイルで産む方法です。フリースタイルとも呼ばれ、呼吸法や産む姿勢を自分で自由に決めます。
自分が生みやすいと感じるスタイルを選べるので、力をコントロールしやすく、スムーズに出産することができるといわれています。分娩の際に上半身を起こす人、四つん這いになる人、椅子に座る人などもいます。
自然分娩の費用は?
産院によって異なりますが、自然分娩の出産費用の平均はおよそ47.3万円です(※3)。
大きな金額ですが、国民健康保険または健康保険に加入していて、妊娠85日以上(妊娠4ヶ月以上)で出産している場合は、出産育児一時金として50万円(産科医療補償制度の対象外の出産、または制度に加入していない医療機関での出産の場合は48万8000円)が支給されます(※4)。
そのため、実際の自己負担費用は、実際にかかった費用から出産育児一時金を引いた差額となります。出産育児一時金よりも金額が低い場合は、差額を受け取ることができますよ。
自然分娩のメリット・デメリットは?
自然分娩にはメリットだけでなく、デメリットもあります。それぞれを確認した上で、納得した出産方法を選べると良いですね。
メリット
● 帝王切開に比べると、産後の体調の回復が早い
● 立ち会い出産ができる
● 他の分娩方法に比べて費用が安い
● 産院が選びやすい
帝王切開や無痛分娩(和痛分娩)は対応できる病院が限られていますが、自然分娩であればさまざまな産院から選べるのは大きなメリットといえます。
デメリット
● 陣痛の痛みに耐える必要がある
● どれくらいで出産が終わるのかわからない
特に、出産時間には個人差が大きいです。
帝王切開や無痛分娩(和痛分娩)の場合は、ある程度出産にかかる時間がわかりますが、自然分娩では長い時間陣痛を耐える必要があることも多いです。
こそだてハックの読者アンケートの結果(※)では、陣痛開始から分娩まで「18時間以上かかった」という人もいれば、「4時間未満で生まれた」というママもいました。
自然分娩で分からないことがあったら医師に聞こう
自然分娩の定義ははっきりしておらず、医師によって自然分娩の意味が違っていることがあります。説明のなかで「自然分娩」という言葉が出てきて、どの意味で使われているか分からないときは尋ねてみましょう。
疑問に思うことは1人で悩まず、医師に聞くようにして、理想の分娩方法を見つけられるといいですね。
※アンケート概要
実施期間:2017年5月26日~6月4日
調査対象:陣痛・出産の経験がある「こそだてハック」読者
有効回答数:369件
収集方法:Webアンケート
監修医師:産婦人科医 藤東 淳也
日本産科婦人科学会専門医、婦人科腫瘍専門医、細胞診専門医、がん治療認定医、日本がん治療認定医機構暫定教育医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医で、現在は藤東クリニック院長。専門知識を活かして女性の快適ライフをサポートします。
※1 厚生労働省「厚生白書(平成10年版)」
※2 広島県医師会 産婦人科 リーブ法
※3 厚生労働省「出産育児一時金について」
※4 全国健康保険協会『出産一時金について』