それまでなんの問題もなく元気だった赤ちゃんが、突然亡くなってしまう乳幼児突然死症候群(SIDS:Sudden Infant Death Syndrome)をご存知でしょうか。できることなら乳幼児突然死症候群の前兆をつかみ、原因を解消して予防したいところ。
そこで今回は、乳幼児突然死症候群を予防するための3つのポイントについてご紹介します。
乳幼児突然死症候群(SIDS)とは?
乳幼児突然死症候群(SIDS:Sudden Infant Death Syndrome)は、これまでに目立った病気もなく健康に過ごしていた赤ちゃんが、眠っている間に突然死してしまう病気です。
生後2~6ヶ月の赤ちゃんに多く見られ、日本では約4,000人に1人の割合で起きています(※1)。厚生労働省によると、2019年には年間で78名の赤ちゃんが発症しており、乳児の死亡要因の上位を占めています(※2)。
乳幼児突然死症候群(SIDS)の原因や前兆は?
乳幼児突然死症候群は、いまだに原因が分かっていません。前兆のようなものも一切ないため、予防方法も確立していません。
ただ、リスク因子を調べた研究によると、乳児突然死症候群は早産児、人工栄養児、低出生体重児に多く見られるほか、うつぶせ寝や両親の喫煙なども関係しているといわれています(※3)。
これらの関連性の深い要因に注意することで、乳幼児突然死症候群の発症リスクを抑えることができるのではないかと期待されています。
そこでここからは、乳幼児突然死症候群の発症リスクを下げるというデータがある、3つの予防ポイントをご説明します。
乳幼児突然死症候群(SIDS)の予防ポイント1. うつぶせ寝をやめる
乳幼児突然死症候群は、赤ちゃんをうつぶせに寝かせているときの方が発生率が高い傾向にあります(※2)。
そのため、医師から持病のためにうつぶせ寝を勧められているような場合を除いて、できるだけ仰向けで寝かせてあげましょう。
また、赤ちゃんを1人で寝かせているときは、様子をこまめにチェックするように心がけてくださいね。
乳幼児突然死症候群(SIDS)の予防ポイント2. 受動喫煙をさせない
乳幼児突然死症候群の発症率は、両親がタバコを吸っていると、喫煙しない場合に比べて約4.7倍に増加するといわれており、受動喫煙は乳幼児突然死症候群に大きく影響すると考えられています(※1)。
もし同居している家族や友達がタバコを吸う場合には、赤ちゃんのいる場所での喫煙はしないように協力してもらいましょう。
乳幼児突然死症候群(SIDS)の予防ポイント3. 母乳育児で育てる
母乳育児の赤ちゃんの方が、ミルク育児の赤ちゃんよりも乳幼児突然死症候群の発症率が低い傾向があります(※2)。
これは、母乳による免疫力の向上や舌や顎などの口腔の発達、お腹が空きやすいので授乳が頻回になり抱っこをする回数が増えることなどが理由ではないかと考えられています。
ただし、ミルク育児が乳幼児突然死症候群に直結するわけではないので、必要以上に神経質にならないでくださいね。
窒息事故を防ぐために知っておいてほしい3つのポイント
乳幼児突然死症候群は窒息などの事故とは異なるものですが、0歳児における不慮の事故死のなかで割合の高い「就寝時の窒息事故」にも注意が必要です。
窒息事故から赤ちゃんを守るために大切なポイントを3つご紹介します(※4)。
できるだけベビーベッドに寝かせる
大人用の布団やベッドで赤ちゃんと朝まで添い寝したいと思うかもしれませんが、赤ちゃんはできるだけベビーベッドで寝かせましょう。
深く寝入ってしまうと、赤ちゃんへ注意を向けることができません。たまたま赤ちゃんの上に手や足などが乗ってしまったり、赤ちゃんのいる方へ寝返りを打って赤ちゃんを下敷きにしてしまったりする可能性もあるため、ママと赤ちゃんは別々に眠る方が安心です。
またベビーベッドと柵の間に顔が埋まったり、うつ伏せのまま寝て窒息するリスクもあるので、ベッド柵とベビーベッドの間の隙間は埋めるようにしましょう。
寝具は硬めのものを使い、掛け布団は軽いものを使用する
マットレスや枕などが柔らかいと、うつぶせになった時に赤ちゃんの顔が埋まってしまい、鼻と口がふさがってしまうことがあります。寝具はなるべく硬めのものを使いましょう。
また、もし顔に被ってしまっても赤ちゃんの力で払いのけられるように、掛け布団は軽いものを使いましょう。
ベビーベッドの周りには何も置かない
赤ちゃんは寝ている間も動きまわります。赤ちゃんの枕やシーツの代わりに敷いているタオルや、よだれかけ、ぬいぐるみなどが口や鼻を覆ってしまうと窒息のリスクにつながります。
また、おもちゃについている紐が赤ちゃんに巻き付いてしまうことも。
ベビーベッドの周りには何も置かないようにして、寝ている時にはよだれかけなども外してあげましょう。
乳幼児突然死症候群(SIDS)予防のために生活を見直そう
乳幼児突然死症候群(SIDS)に完全な予防法はありませんが、日常生活で注意をすることでリスクを軽減することはできます。
赤ちゃんが眠っているときは、乳幼児突然死症候群のリスクを減らせるようにできるだけパパとママで協力しながら優しく見守ってあげてくださいね。
監修医師:小児科 武井 智昭
日本小児科学会専門医。2002年、慶応義塾大学医学部卒。神奈川県内の病院・クリニックで小児科医としての経験を積み、現在は神奈川県大和市の高座渋谷つばさクリニックに院長として勤務。内科・小児科・アレルギー科を担当しています。感染症・アレルギー疾患、呼吸器疾患、予防医学などを得意とし、0歳から100歳まで「1世紀を診療する医師」として診療を行っています。
【参考文献】
※1 厚生労働省eヘルスネット情報提供「乳幼児突然死症候群(SIDS)について」
※2 厚生労働省「乳幼児突然死症候群(SIDS)について」
※3 厚生省心身障害研究「乳幼児死亡の防止に関する研究 平成9年度 研究報告書」
※4 消費者庁「0歳児の就寝時の窒息死にご注意ください!」