子どもを育てるうえで気になるのが「食物アレルギー」ですよね。「子どもがなったらどうしよう?」と不安を抱いているママやパパは多いのではないでしょうか。
今回はそもそも食物アレルギーとは何なのか、症状や検査方法、治療法などについてご紹介します。
食物アレルギーとは?
食物アレルギーは、特定の食べ物に対してアレルギー反応が起きることです。アレルギーとは、異物から体を守るための免疫機能が、体に害を与えないものに対して過剰に反応してしまうことをいいます。
小さい子どもによく見られる食物アレルギーには、湿疹などを伴う乳児アトピー性皮膚炎を合併したものや、蕁麻疹・アナフィラキシーなどを引き起こす即時型のアレルギー反応、口の中や周りだけに症状が現れる口腔アレルギー症候群などがあります(※1)。
特に乳児期に発症する確率が高く、日本における食物アレルギー有病率は0〜1歳児で7.6〜10%、2歳児で約6.7%、3歳児で約5%、学童期以降が1.3~4.5%とされています(※1)。
食物アレルギーの原因となる食べ物は?
0〜1歳までの赤ちゃんの食物アレルギーでは、アトピー性皮膚炎を合併することが多く、何かを食べさせた後にアレルギーの存在に初めて気づくケースがよくあります(※1)。
年齢が進むにつれて、アレルゲン(アレルギーの原因となる物質)は変わることがあります。以下は年齢別のアレルギーの原因になりやすい食べ物です。以下は年齢別のアレルギーの原因になりやすい食べ物です(※2)。
卵・牛乳・小麦は「3大アレルゲン」と呼ばれ、1歳までの赤ちゃんでアレルギー反応が起こることが多い食品です。最近では、1〜2歳以降のナッツ類によるアレルギーの増加が著しく増えてきています。
ただし、食物アレルギーを起こすことを心配して離乳食を遅らせる必要はありません(※1)。赤ちゃんの成長にあわせて、5〜6ヶ月ごろからはじめましょう。
もし、離乳食をはじめる前に何かアレルギーが判明している場合は、医師と相談しながら離乳食を進めるようにしてくださいね。
食物アレルギーはどんな症状が出るの?
アレルギー症状が出現する時間は、アレルゲンを摂った直後〜数時間以内と幅広く、症状の進み方も様々です。体調不良と見分けがつきにくいため、アレルギー反応が起きているのに気づかず見過ごしてしまうことがあります。
体調に変化が見られたら、その前に何を食べさせたかを思い返して記録していくと、アレルギーによって症状が現れているのか診断しやすくなります。
食物アレルギーの主な症状は、次の通りです(※1)。
皮膚の症状
皮膚のかゆみや赤み、じんましん、湿疹
呼吸器の症状
咳、声がかすれる、呼吸困難
粘膜の症状
充血、くしゃみ、鼻水、唇や舌の違和感、喉のかゆみ
消化器の症状
吐き気、腹痛、嘔吐、血便
全身性の症状
アナフィラキシー、アナフィラキシーショック
アレルギーの原因や症状、程度は人によって異なります。アレルギーのような症状が起こった場合や、特定の食べ物を食べたあとに機嫌が悪くなったり、元気がなくなったりといった普段と異なるような気になる症状がある場合は、かかりつけの医師に相談しましょう。
すぐに救急車を呼んだ方がいい症状は?
もし、以下のような症状が1つでも見られた場合は、赤ちゃんの命にかかわる危険があります。速やかに救急車を呼びましょう(※3)。
● 繰り返し吐き続ける
● 我慢できない腹痛
● 喉や胸が締め付けられる
● 声がかすれる
● 犬が吠えるような咳
● 持続するひどい咳
● ゼーゼーする呼吸
● 息を吐きにくい
● 唇や爪が青白い
● 脈が不規則で触れにくい
● 意識がもうろうとしている
● ぐったりとしている
● 尿や便をもらす
食物アレルギーは治るの?
食物アレルギーであっても、一生その食べ物が食べられないとは限りません。赤ちゃんの頃に起こる卵・小麦・牛乳の食物アレルギーは大きくなるにつれて治ることが多いです(※5)。
食物アレルギーの検査方法は?
食物アレルギーの検査は、医師が必要と判断した場合に血液検査やプリックテストと呼ばれる検査を行います。
検査は小児科やアレルギー科のある医療機関で受けることができますよ。
血液検査
血液検査では、アレルギー反応を起こすたんぱく質「IgE抗体」の血液中の濃度を調べて、各食品に対するIgE抗体の量を見てアレルゲンを推定します。
プリックテスト
プリックテストは15分ほどで結果がわかる簡便な検査で、皮膚にアレルゲンの疑いのある食品のエキスを接触させて反応をチェックします。
食物アレルギーと診断されたら?対策は?
食物アレルギーと診断されたら、症状が起こる食べ物を「完全に除去」するか、「食べられる範囲まで食べる」などの対策を行います。いずれも自己判断ではなく、必ず医師の指示に従って行いましょう(※4)。
症状が起こる食べ物だけを除去する
食べると症状が起こる食べ物だけを除去することが基本になります。加工食品などにも含まれていることが多いので、原材料を必ず確認してください。
医師が判断した「食べられる範囲」まで食べさせる
アレルゲンによっては、食物アレルギーが起こらない「食べられる範囲」までは食べることを目指します。加熱調理などで症状がなくなる場合は、除去せずに食べさせることもあります。また、アレルゲンとなる食べ物を医療機関で少量ずつ試し、食べられる量を確認する場合もあります。
食物アレルギーのアレルゲンはどう避ければいい?
アレルギー検査によって食物アレルギーがあると分かった場合、基本的にアレルゲンを避けていく必要があるのですが、そのときに役に立つのが食品パッケージのアレルギー表示です。
容器包装された食品には、パッケージに必ず食物アレルゲンの名称を記載しなければならないものが8品目、表示が推奨されていものが20品目あります。
具体的には、以下の通りです(※5)。
表示が義務づけられている食物アレルゲン(特定原材料)
卵・乳・小麦・エビ・カニ・そば・落花生(ピーナッツ)・くるみ(※)
※くるみの表示義務化は2025年4月からになります
表示が推奨されている食物アレルゲン(特定原材料に準ずるもの)
アーモンド・あわび・いか・いくら・オレンジ・カシューナッツ・キウイフルーツ・⽜⾁・ごま・さけ・さば・⼤⾖・鶏⾁・バナナ・豚⾁・まつたけ・もも・やまいも・りんご・ゼラチン
しかし、以下のような場合は、特定原材料でも表示の対象外となります。
● 包装容器に入れずに販売する食品(バラ売りや量り売りなど)
● 設備を設けて飲食させる食品(飲食店で提供される食品や出前など)
購入する際は、販売元や製造元にアレルゲンとなる食べ物が使われていないか必ず確認するようにしましょう。
食物アレルギーの正しい知識を得よう
食物アレルギーは、親と子が食べ物との付き合い方や体調管理について学ぶ、大切なきっかけであるとも考えられます。
アレルギーの知識を深めながら、楽しい食生活を送れるといいですね。
監修医師:小児科 武井 智昭
日本小児科学会専門医。2002年、慶応義塾大学医学部卒。神奈川県内の病院・クリニックで小児科医としての経験を積み、現在は神奈川県大和市の高座渋谷つばさクリニックに院長として勤務。内科・小児科・アレルギー科を担当しています。感染症・アレルギー疾患、呼吸器疾患、予防医学などを得意とし、0歳から100歳まで「1世紀を診療する医師」として診療を行っています。
※1 厚生労働科学研究班『食物アレルギーの診療の手引き2020』
※2 消費者庁『令和3年度 食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業報告書』
※3 成30年度厚生労働行政推進調査事業費補助金(厚生労働科学特別研究事業)アレルギー疾患に対する保健指導マニュアル開発のための研究『小児アレルギー疾患 保健指導の手引き』
※4 厚生労働科学研究班『食物アレルギーの栄養食事指導の手引き2017』
※5 消費者庁『加工食品の食物アレルギー表示ハンドブック』