妊娠が進むと、自分の体の変化に戸惑いを感じ、不安になることもあるかと思います。そんなときに、お腹の中の赤ちゃんがどんなふうに成長しているのかが分かれば、赤ちゃんのために頑張ろうと前向きな気持ちになれるかもしれません。
今回は胎児のおおまかな成長が分かる胎児発育曲線と、妊娠3~10ヶ月までの胎児の成長過程をご紹介します。
胎児発育曲線とは?
胎児発育曲線とは、正期産に正常体重で生まれた赤ちゃんたちの妊娠中のデータをもとに作られた、胎児の発育状態を確認するための曲線です。正常な体重で生まれる赤ちゃんの約95.4%が、胎児発育曲線が示す上下2本の曲線の間に入ります(※1)。
例えば、妊娠36週目であれば、およそ1,900~3,100gの間に入っていれば、正常体重で生まれることが期待できるということです(※1)。
ただし、これはあくまで目安の数値であり、発育には性差や個人差があります。1回の結果に一喜一憂する必要はありません。胎児が順調に発育しているかはかかりつけの医師に確認するようにしましょう。
胎児発育曲線は母子手帳にも記載されているので、気になるときにぜひチェックしてみてくださいね。それでは、胎児が具体的にどのように成長していくのかを、妊娠3~10ヶ月まで月ごとに見ていきましょう。
妊娠3ヶ月目(8~11週)の胎児の成長は?
妊娠3ヶ月末の赤ちゃんの大きさは、頭殿長で約3.5〜6cm程度、体重は約10〜20gです(※2,3)。
この時期は器官形成期と呼ばれ、心臓や呼吸器、消化器など、体の器官がどんどん作られています。エコー検査では、手足が動いている姿が見えるかもしれません。
お腹の赤ちゃんは「胎芽」から「胎児」と呼ばれるようになり、胴体や手足が発達して、2頭身から3頭身になり始めます。
ママの体の中では、栄養や酸素などを届ける胎盤が作られていますよ(※4)。
妊娠4ヶ月目(12~15週)の胎児の成長は?
妊娠4ヶ月末の赤ちゃんの大きさは身長約16cm、体重約100gです(※4,5)。
この時期には、骨や筋肉が急速に発達して、エコー検査でさまざまな動きが見られるようになります。赤ちゃんは羊水を飲み込んで、おしっこを出せるようになっていますよ。外生殖器が作られていますが、性別がわかるのはもう少し先です。
ママの体のなかでは胎盤がほぼ完成して、赤ちゃんとへその緒でしっかりとつながれ、栄養や酸素を送るようになります(※4)。
妊娠5ヶ月目(16~19週)の胎児の成長は?
妊娠5ヶ月末の赤ちゃんの大きさは、身長約25cm、体重約300gです(※4,5)。
赤ちゃんは子宮の中で活発に動き回りながら、呼吸や嚥下などの動作の練習をしています。エコー検査では、赤ちゃんの姿勢や成長具合にもよりますが、性別がわかるかもしれません。
この時期には胎盤が完成して、早い人では胎動を感じることもありますよ(※4)。
妊娠6ヶ月(20~23週)の胎児の成長は?
妊娠6ヶ月末の赤ちゃんの大きさは、身長約30cm、体重約650gです(※4,5)。
赤ちゃんには髪の毛や産毛が生え始めます。骨格や筋肉が発達してくるので、胎動を感じやすくなりますよ。
赤ちゃんは活発に動き回るので、妊婦健診のときに逆子と言われるかもしれません。ただし、赤ちゃんは大きくなっていくと自然と頭が下向きになっていくことが多いので、妊娠後期に入る頃には逆子が治っていくことが多いですよ(※4)。
妊娠7ヶ月目(24~27週)の胎児の成長は?
妊娠7ヶ月末の赤ちゃんの大きさは、身長約35cm、体重約1,100gです(※4,5)。
この時期には、赤ちゃんの脳は急成長し、聴覚はほぼ完成してママの声や心音が聞こえるようになります。ほっそりとした体つきだった赤ちゃんは、着々と皮下脂肪を蓄えるようになり、子宮の中で元気に動き回ります。
一方ママの体では、大きくなった子宮が周りの臓器を圧迫し、便秘や頻尿、むくみといった症状が現れやすくなります(※4)。
妊娠8ヶ月(28~31週)の胎児の成長は?
妊娠8ヶ月末の赤ちゃんの大きさは、身長約40cm、体重約1,800gです(※4,5)。
赤ちゃんの骨格や臓器はほぼできあがり、目は光を感じるようになりました。外の世界で生きていくために必要な機能がどんどん完成していきます。見た目も新生児とほぼ変わらない状態に近づいてきました。
この時期のママは、血液量も増えることで貧血やむくみが起きやすくなります。
妊娠9ヶ月(32~35週)の胎児の成長は?
妊娠9ヶ月末の赤ちゃんの大きさは、身長約45cm、体重約2,500gです(4,5)。
発育の最終段階に入り、皮下脂肪が増えて丸みを帯びて赤ちゃんらしくふっくらとしてきます。
ママは、子宮の中で赤ちゃんが下に降りてくるので、マイナートラブルの種類が変わることも。胃がすっきりする代わりに、頻尿になったり、恥骨が痛くなったりしやすいです。
また、症状に個人差はありますが、体調変化に注意が必要な時期になります(※4)。
妊娠10ヶ月(36~39週)の胎児の成長は?
妊娠10ヶ月末の赤ちゃんの大きさは、身長約50cm、体重約3,100gです(※4,5)。
臨月と呼ばれるこの時期には、胎児の内臓や器官が完成して、いつ生まれてもいい状態になっています。赤ちゃんは骨盤の中に頭を固定して、あごを胸につけ、ひざをお腹に引き寄せた状態でお腹の中にいます。出産後の体温保持のために、赤ちゃんは毎日脂肪を蓄えています。
体が大きくなることで、子宮内で自由に動けるスペースが少なくなり動きづらくなりますが、赤ちゃんの胎動は生まれるまで続きます。この時期になると、おしるしや破水といった出産兆候が現れる可能性があるので、できるだけ早めに入院の準備をしておきましょう。
胎児の成長曲線はあくまで参考程度に
妊娠中に「赤ちゃんが正常に成長しているかどうか」が気になるのは当たり前のことです。そして、お腹の赤ちゃんの推定体重が胎児成長曲線の基準値にあてはまらないと、心配な気持ちになるかもしれません。
しかし、赤ちゃんの成長には性差や個人差があり、胎児の成長曲線通りに体重が増えないからといって、必ずしも問題があるというわけではありません。不安なことがあるときは、かかりつけの医師と相談し、赤ちゃんの成長を温かく見守っていってくださいね。
監修専門家:助産師 佐藤 裕子先生
日本赤十字社助産師学校卒業後、大学病院総合周産期母子医療センターにて9年勤務。現在は神奈川県横浜市の助産院マタニティハウスSATOにて勤務しております。妊娠から出産、産後までトータルサポートのできる助産院では、日々多くのママたちからの母乳相談や育児相談を受けています。具体的に悩みを解決でき、ここにくると安心してもらえる、そんな助産師を目指しています。
【参考文献】
※1 平成23年度厚生労働科学研究費補助金 地域における周産期医療システムの充実と医療資源の適正配置に関する研究「推定胎児体重と胎児発育曲線」保健指導マニュアル
※2 篠塚憲男 他『超音波胎児計測における基準値の作成』
※3 医歯薬出版株式会社『ムーア人体発生学』p.111
※4 メジカルビュー社『プリンシプル産科婦人科学 産科編 第3版』pp.14-16,298
※5 株式会社メディックメディア『病気がみえるvol.10 産科 第4版』pp.7-11