子育ての関門の一つともいえる赤ちゃんの「夜泣き」。寝たと思ってもすぐに起きてしまって、再び寝かしつけるのに一苦労。眠くて眠くて、つい放っておきたくなることもあるのではないでしょうか。
今回は、夜泣きをそのまま放置してもいいのか、夜泣きを放置すると赤ちゃんにどんな影響があるのかをご紹介します。
そもそも赤ちゃんの夜泣きとは?
母乳やミルクでお腹は満たされていて、おむつも濡れていない…。ほかに考えられる原因もないのに、寝ている赤ちゃんが夜中に突然泣き出してしまうことを、一般的に「夜泣き」といいます。
夜泣きは、生後6ヶ月から1歳半頃の赤ちゃんに多くみられます。抱っこしてもあやしてもなかなか泣き止まず、寝てもまたすぐ起きて泣く状態が続きます。
夜泣きには個人差があるため、全く夜泣きをしない赤ちゃんや、2歳近くになってから急に始まる子もいます。
赤ちゃんの夜泣きを放置してもいいの?
世界の子育て事情に目を向けてみると、夜泣きという言葉自体や、夜泣きに対する概念がない国もあるようです。
家族一人一人を個人として捉える傾向が強い欧米では、赤ちゃんと親の寝室を分けたり、夜中に泣いてもしばらくは何もせず様子を観察する習慣もあるそうです。
赤ちゃんの夜泣きの原因は明らかになっていませんが、寒暖差や湿度の変化、不安や興奮、睡眠リズムの乱れ、ストレスなどが影響しているのではと考えられています。
朝は日光を浴びさせる、昼寝を長くさせない、寝かしつけの前は光や音の刺激を与えない、といったことで、少しは夜泣きが軽減されるかもしれません。
しかし、どんなに対策をしても夜泣きをするときはするもの。夜泣きは、寝言泣きの可能性もあるので、夜泣きが始まったときには、5分くらい何もせず様子をみてもいいでしょう。
夜泣きを上手に放置する方法は?
夜泣きを放置するというのは、決して「ほったらかしにする」ということではありません。
赤ちゃんが夜泣きをして、しばらく様子をみていても泣き止まないときは、お腹をトントンしたり、手を握って優しく声をかけたり、頭をなでたりしてみましょう。このとき、抱っこはせず、赤ちゃんには泣きたいだけ泣かせてあげてください。
赤ちゃんは、ずっと泣いていれば泣き疲れて自然と寝てしまうことが多いです。「そのうち泣き止む」と腹を決めて、赤ちゃんを見守ってあげましょう。
近所への迷惑や家族の寝不足が心配になるかもしれませんが、夜泣きはしつけでどうこうできるものではありません。近所の人には日中に会ったときに「いつも騒がしくてすみません」と挨拶しておくと、気持ちが少し軽くなりますよ。
夜泣きを放置すると赤ちゃんにどんな影響がある?
泣き続ける赤ちゃんを放っておくと「サイレントベビー」になる、という話を聞いたことがあるかもしれません。サイレントベビーとは、泣いたり笑ったりすることが少なく、無表情な赤ちゃんのことをいいます。
サイレントベビーは、いくら泣いても構ってもらえない、と泣くことをあきらめることで起こると考えられていますが、医学的な根拠はありません。
ただし、夜泣きを少し放置したからといってすぐにサイレントベビーになるわけではありません。また、サイレントベビーにならないかと心配しすぎてママやパパがストレスを溜めてしまうと、子育てにマイナスの影響を与えかねません。
夜泣きをした翌日はコミュニケーションやスキンシップを少し多めにとるなどして、普段から赤ちゃんに愛情を注ぎ、信頼関係を築くことができるといいですね。
夜泣きを放置する=赤ちゃんを見守る
夜泣きの原因や対処法は、科学的にも医学的にもはっきりとしているものではありません。赤ちゃんによって、夜泣きの有無や程度も違います。
夜泣きにそれほど悩みを持たない国では、そのまま泣かせて見守っておくことも、赤ちゃんの成長のために大切だと考えられています。
「夜泣きを放置する=見放すことではなく、赤ちゃんの成長を見守ること」だと捉えると、夜泣きが始まったときも気持ちが楽になりますよ。
監修医師:小児科 武井 智昭
日本小児科学会専門医。2002年、慶応義塾大学医学部卒。神奈川県内の病院・クリニックで小児科医としての経験を積み、現在は神奈川県大和市の高座渋谷つばさクリニックに院長として勤務。内科・小児科・アレルギー科を担当しています。感染症・アレルギー疾患、呼吸器疾患、予防医学などを得意とし、0歳から100歳まで「1世紀を診療する医師」として診療を行っています。