「まごわやさしい」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?体によい食材の頭文字を語呂合わせしたもので、産後の体重が気になるときに食生活に取り入れると、健康的に体重を落とすことが期待できますよ。
今回は産後に痩せたいママに向けて、「まごわやさしい」の食材や含まれる栄養素、食生活に取り入れるコツなどをご紹介します。
そもそも産後に体重が落ちない原因は?
産後の体重は、赤ちゃんが生まれてすぐに約3~5kg減少します。これは、主に赤ちゃん(約3kg)と胎盤、羊水(約1〜2kg)などの重さ分です(※1)。
それ以降は、数週間から数ヶ月かけて、妊娠中に増えた子宮や血液、乳腺、脂肪などが妊娠前の状態に戻っていき、少しずつ元の体重に近づきます。
しかし、その間に食生活が乱れたり、食べ過ぎたりすると、なかなか体重が落ちません。
母乳育児中は通常よりも350kcal多く摂ることが推奨されています(※2)。とはいえ、必要なカロリー以上に食べ過ぎると、痩せない原因となってしまうのです。
産後に痩せるための食事のポイントは?
産後に体重を落とすためには、1日に必要なカロリー量を上回らないようにすることが大切ですが、極端な食事制限をしてはいけません。産後に必要な栄養素が不足すると、免疫力が落ちたり疲れやすくなったりして、赤ちゃんのお世話をする体力や気力まで奪われてしまうことがあります。
特に授乳中は、ママの健康と赤ちゃんの成長のために、主に以下の栄養素を積極的に摂ることが推奨されています(※2)。
● たんぱく質(+20g/日)
● ビタミンB1(+0.2mg/日)
● ビタミンB2(+0.6mg/日)
● ビタミンC(+45mg/日)
● ビタミンA(+450μgRAE/日)
● 葉酸(+100μg/日)
● 鉄(+2.5mg/日)
● カルシウム(+0mg/日)
※ カッコ内の数字は授乳中のママが妊娠前よりプラスして摂りたい量
このような栄養素を豊富に含み、かつ、低カロリーの食材を上手に組み合わせることが、産後に痩せるための食事のポイントといえます。
でも、どんな食材に何がどれくらい含まれているのか考えるのは大変ですよね。そこでおすすめなのが、「まごわやさしい」を意識した食生活です。
「まごわやさしい」の食材とは?
栄養素や産後におすすめの理由は?
「まごわやさしい」は、以下の7つの食材の頭文字をとっています。それぞれの食材に含まれる主な栄養素と産後におすすめの理由とあわせてご紹介します(※3,4)。
ま:豆類
良質なたんぱく質が豊富で、ビタミンB群や鉄、カルシウムなどもバランスよく含んでいます。たんぱく質は筋肉量を維持したりエネルギー消費量を増やしてくれたりしますし、ビタミンB2は脂質や糖質の代謝を高めてくれるので、痩せやすい体づくりに欠かせない食材です。
ご:ごまなどの種実類
ビタミンEをはじめ、たんぱく質やカルシウムなども多く含みます。ビタミンEには血流をよくする働きがあるため、新陳代謝が活発になって肌にハリが出たり、冷え性や肩こりが改善したりと、美容や健康にも役立ちますよ。
わ:わかめなどの海藻類
食物繊維、カルシウム、鉄などを含みます。食物繊維は腸内環境を整え、肥満予防や便秘解消に効果が期待できます。鉄は貧血の予防に欠かせません。カロリーが低く、ミネラルが豊富なので、ダイエットをしたい人向けの食材といえますね。
や:野菜類
野菜の種類によりますが、鉄、ビタミンA(βカロテン)、ビタミンE・C・B1・B2、葉酸、食物繊維などを含みます。前述の通り、食物繊維には腸内環境を整える働きがあります。
さ:魚介類
たんぱく質、DHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)、カルシウムなどを多く含みます。たんぱく質は筋肉量を維持し、DHAやEPAといった魚の油は脂肪の燃焼を促すので、痩せやすい体づくりのために主菜を魚にするのもいいですね。
し:しいたけなどのきのこ類
食物繊維、カリウム、ビタミンDが豊富です。食物繊維は便秘予防・解消に、ビタミンDはカルシウムの吸収を促して丈夫な骨をつくるのに役立ちます。低カロリーなのもポイントです。
い:いも類
炭水化物、カリウム、ビタミンCを多く含みます。ビタミンCは、免疫力の向上やストレス緩和、風邪予防に効果的ですよ。
産後に「まごわやさしい」を上手に取り入れるコツは?
栄養価が高く低カロリーな食材が多い「まごわやさしい」ですが、産後しばらくは食材の買い出しや料理をするのが難しく、「どうやって食生活に取り入れたらいいんだろう?」と思うこともあるかもしれません。
そんなときは、以下のコツを参考にしてみてくださいね。
「まごわやさしい」を上手に取り入れるコツ
● 「黒ゴマをご飯にかける」「乾燥わかめを味噌汁に入れる」など、調理せずに食べられる食材を今までの食事にプラスする
● 缶詰(ツナ、鯖、ミックスビーンズなど)、乾物(ひじき、切り干し大根、干ししたけなど)、冷凍食品(枝豆、カット野菜など)といった保存が効く食材を活用する
● 豆・野菜・きのこ・いも類をたっぷり使ったスープを作り置きする
● コンビニやスーパーで惣菜を買うときは、「まごわやさしい」の食材が多く使われているメニューを選ぶ
● 間食をするときは、ナッツ類やいも類を食べる
1日3食すべてで「まごわやさしい」の食材をとろうとする必要はありません。無理のない範囲で、できることから少しずつ始めてみましょう。
産後は「まごわやさしい」で健康的な食生活を
「産後に痩せたいけど栄養もしっかり摂りたい…」と思ったら、今回ご紹介したコツを参考に「まごわやさしい」を食生活に取り入れてみてくださいね。
「まごわやさしい」の食材を上手に活用できるようになると、赤ちゃんの離乳食が進んで献立を考えるときなどにも、きっと役に立つはずですよ。
監修専門家:管理栄養士 渡辺 亜里夏さん
神奈川県立保健福祉大学卒業後、予防医学に興味を持ちドラッグストアへ就職。その後独立し、現在はフリーランスの管理栄養士として特定保健指導、ダイエット指導、コラムの執筆、企業様での研修などを中心に活動。いつまでも体と心を健康に保ち、人生を輝かせられる女性のサポートがしたいという想いで、食の大切さをお伝えしています。
【参考文献】
※1 メジカルビュー社『プリンシプル産科婦人科学 産科編 第3版』p.94
※2 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
※3 文部科学省 「日本食品標準成分表2015年版 第2章 日本食品標準成分表」