妊娠後期になり、「体重増加量が大きくなった」「健診で初めて体重を指摘されてびっくりした」など、体重の増加に悩んだり疑問を感じたりする妊婦さんも多いのではないでしょうか。
そこで今回は、妊娠後期の体重増加について、増える理由や増えすぎた場合に起こりうるリスク、対処法をご紹介します。
妊娠後期に体重が増える理由は?
妊娠後期は、主に以下のような理由から体重が増えやすい時期といえます。
お腹の中の赤ちゃんの成長
妊娠後期は、いよいよ赤ちゃんが外の世界で生きる準備をする時期です。特に妊娠9ヶ月頃は赤ちゃんの体重増加が顕著で、皮下脂肪が増えて丸みのある体つきになります。
妊娠後期に入った28週頃の赤ちゃんの体重は約1,000gです。生まれてくる赤ちゃんの体重には個人差が大きいですが、一般的に3,000g前後となることが多いので、赤ちゃんの体重だけで約2,000gも増えることになります(※1)。
胎盤の成長
胎盤の機能は妊娠15週頃までに完成していますが、赤ちゃんの成長とともに大きくなり、出産直前には重さ約500gになります(※1)。
羊水の増加
羊水の量は妊娠8週頃から増えていき、妊娠20週頃は約350mL、妊娠34週頃にピークを迎えて700〜1,000mLとなります。その後は徐々に減少しますが、出産を迎える妊娠40週頃でも約500mLあります(※2)。
血液の増加
妊娠中は赤ちゃんに栄養を送るためや出産時の出血に備えるため、母体で大量の血液が作られ血液量が増えます(※2)。
特に妊娠後期は、赤ちゃんの成長に合わせてさらに血液量が増えていきます。
子宮の増大
妊娠後期には、子宮が大きくなることでどんどんお腹全体がせり出していきます。子宮底長は約36cm、赤ちゃんを除いた子宮だけの重さは約1,000gに達します(※1)。
乳房の増大
産後に母乳を出すために妊娠後期も乳房は増大し続け、妊娠40週頃には500gほど増えます(※2)。個人差はありますが、バストは初期に比べて2カップほど大きくなるといわれています。
貯蔵脂肪の増加
妊娠中の体は、お腹の赤ちゃんを守るためや産後の体力回復に備えるため、ホルモンバランスの変化によって脂肪を貯め込みます。
妊娠40週頃には約4,000g増加し、妊娠中の体重増加の内訳では赤ちゃんの体重と同じほどの割合を占めます(※2)。
運動不足や食欲増加
妊娠後期に入ってお腹がますます大きくなると、体を動かすのが大変なのでどうしても運動不足になりがちです。
また出産が近づいてくると、子宮の位置が下がることで胃の圧迫が開放され、食欲が増して体重増加につながることも。
妊娠後期の体重増加の目安は?
このように、妊娠後期に体重が増加するのは自然なことなので、適正な範囲内であれば体重が増えてもあまり心配しすぎる必要はありません。
とはいえ、妊娠中の適正な体重増加はどのくらいまでなのか気になりますよね。一つの目安として、日本産科婦人科学会が次の表のように推奨しています(※3)。
妊娠中の体重増加の目安を知るためには、まず妊娠前の体重からBMI値を算出してみましょう。
たとえばBMI値が18.5以上25.0未満であれば、妊娠前の体格は普通体重の区分となり、妊娠中は10〜13kgの体重増加が適正範囲といえます。
しかし、上記の体重増加の範囲はあくまで目安に過ぎません。個人差があるので自己判断はせず、医師に相談してみてくださいね。
妊娠後期に体重が増えすぎるとどんなリスクがある?
妊娠後期に体重が増えるのは自然なことですが、過度に増えてしまうと、以下のようなリスクが高くなります。
妊娠糖尿病
妊娠糖尿病は、妊娠中のホルモンの変化によって血糖をコントロールするインスリンの働きが弱まってしまい、血糖値が高くなりすぎる病気です(※1)。妊娠糖尿病は肥満が引き金となって発症することがあるため、注意が必要です。
妊娠糖尿病になると、流産・早産や胎児機能不全、胎児死亡の危険性も高まります(※1)。また、生まれた赤ちゃんが将来的に肥満や糖尿病、高血圧を発症しやすくなることもあります。
医師の指導による食事制限やインスリン注射による治療が行われることがあります。
巨大児
妊娠中に体重が増えすぎると、赤ちゃんが巨大児(出生体重が4,000g以上)となったり、在胎週数の平均値よりも大きく生まれたりするリスクが高まります(※1)。
赤ちゃんが巨大児となると、帝王切開で分娩となるケースが多いです。
妊娠後期に体重が増えすぎた場合の対処法は?
妊娠後期に入って健診時に医師から「体重増加に気をつけて」と言われた場合は、以下のことを意識してみましょう。
● 食事の栄養バランスを見直す
● 一度の食事の量を減らし、回数を増やす
● 塩分・糖分が多いものを控える
● 間食やおやつはカロリーオフのものにする
● 散歩やマタニティヨガなどの適度な運動をする
● 水分補給は積極的に
ただし、過度なダイエットは母体や赤ちゃんに影響を及ぼす危険もあるため、決して無理はしないようにしてくださいね。
妊娠後期に体重が増えるのは自然なこと
妊娠後期に体重が増加するのは、赤ちゃんをお腹のなかで育むために必要なことといえます。
「体重が増えすぎているかも」「体重管理をした方がいいの?」など不安になることも多いかもしれませんが、気になることは遠慮なくかかりつけの医師や助産師に相談してみてくださいね。
監修医師:産婦人科医 藤東 淳也
日本産科婦人科学会専門医、婦人科腫瘍専門医、細胞診専門医、がん治療認定医、日本がん治療認定医機構暫定教育医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医で、現在は藤東クリニック院長。専門知識を活かして女性の快適ライフをサポートします。
※1 株式会社メディックメディア『病気がみえるvol.10 産科 第4版』 p.10-11,30,38-39,81,200-205,274
※2 メジカルビュー社『プリンシプル 産科婦人科学2 産科編』p.85,94,397
※3 厚生労働省「妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針~妊娠前から、健康なからだづくり」