子どもが3歳の誕生日を迎えると、すっかり赤ちゃんっぽさが抜けて大きくなったなと感じるのではないでしょうか。一人でできることが増えて、さまざまなことを理解するようになるので、「そろそろ、きちんとしつけをしなくては」と思うこともあるかもしれませんね。
今回は、3歳児のしつけのポイントやコツ、注意点をご紹介します。
3歳児にはどんな特徴があるの?
3歳になると身体能力が発達し、一人で歩ける距離が大幅に増えたり、食事をこぼさずに食べられるようになったりします。
また、言語能力も高まってくるので、友達や周りの大人とより複雑なコミュニケーションをとれるようになります。
このようにできることが増えてくると、自立心が芽生えてきます。
個人差はありますが、1歳半~2歳頃からのイヤイヤ期に似た状態が続いていることもあれば、自分の要求をはっきりと言葉に表してママやパパに反抗することもあります。
しつけをしようとしても「イヤ!」「したくない!」と言葉で反発されることも多いので、3歳児は思い通りにしつけをするのが難しい年頃といえるでしょう。
3歳児をしつけるときのコツやポイントは?
3歳のしつけでは、生活習慣、あいさつ、友達や先生との関わり方、公共の場でのマナーといったことを中心に教えていくといいでしょう。
しつけをするときは、次にご紹介するコツやポイントを参考にしてみてくださいね。
しつけをする理由を説明する
子どもが言うことを聞かなかったり、やってはいけないことをやったりしたときに、「何回言ったら分かるの!」と親の気持ちを一方的にぶつけてしまうのはよくありません。
子どもは自分がなぜそう言われているのか理由が分からないままで、同じ行動を繰り返してしまうことにつながります。
3歳になれば、ママやパパが言っていることのほとんどを理解できるようになるので、どうしてだめなのか理由を簡単な言葉で具体的に説明してあげましょう。
たとえば、子どもが近所の人に挨拶をしなかったら、「元気よく『おはよう』と言うと気分がいいよ、明日からは挨拶をしようね」などと言って、挨拶をすることの大切さを説明します。
自分も相手も嬉しい気持ちになることがわかると、自然と習慣になるはずですよ。
約束をする
約束を守ることは人と信頼関係を築くうえでの基礎なので、3歳頃から少しずつ教えていくことが大切です。約束をさせることで、自然としつけができることもあります。
公園で遊ぶ子どもに「ブランコが終わったら家に帰ろうね」、お絵描きに夢中な子どもに「この絵を描き終わったらお風呂に入ろうね」と約束をすると、我慢することや気持ちを切り替えることが身につくようになります。
最初のうちは、約束ごとを忘れてしまったり、真剣にとらえなかったりと、上手くいかないかもしれませんが、根気強く約束を守ることの大切さを伝えてあげましょう。
お手伝いをさせる
3歳になると、少しずつ大人のお手伝いができるようになります。花に水をやる、食事の前にテーブルを拭く、タオルをたたむなど、毎日の習慣となるようなお手伝いに挑戦させてみましょう。子どもが興味を持ったことをやらせるのもいいですね。
お手伝いとして自らやらせることで、基本的な生活習慣やマナーが身についていき、しつけにつながりますよ。
誰かの助けになることの素晴らしさを学ばせるためにも、子どもがお手伝いをした後は、いっぱい褒めてあげてくださいね。
自分の行動が周りの人や環境にプラスの影響を与えたと実感することで、自己肯定感が育まれ、自主的にお手伝いができるようになるはずですよ。
パパ・ママが手本を見せる
しつけをするにあたって子どもにとって一番のお手本は、ママとパパです。
「ごはんの後は歯磨きしようね」と言われても、ママとパパが食後にしていなかったら、子どももやる気にならないものです。
しつけをする前に、まずはママやパパがきちんとできているかチェックしましょう。子どもは大人が示す手本を見ることで、自然とできるようになっていきますよ。
3歳児のしつけはどこまで厳しくしたらいい?「叩く・叱る」はだめ?
3歳になると、それまでよりも厳しくしつけをしたほうがいいのか悩むこともあるかもしれません。家庭によって、しつけについての考え方はさまざまですが、下記のポイントには注意しましょう。
叩かない
いくら言っても悪さを繰り返すときや、友達にひどいことをしたときなどは、ついカッとなってしまうことがあるかもしれません。しかし、叩くようなことは絶対に避けてください。
暴力は子どもに大きな恐怖感を与え、なぜ自分が叱られたのかを考えるチャンスを奪ってしまいます。
暴力でしつけられて育った子どもは、叩かれるのを避けるために他人の顔色ばかりをうかがい、自分の意見が言えない大人になってしまうこともあります。
また、暴力をコミュニケーションの一つとしてとらえてしまい、友達関係などで自分の思うようにならなかった場合など、容易に暴力をふるってしまうことも少なくありません。
叩くのではなく、なぜこうしなくてはいけないのか、どうしてママやパパは叱ったのかなど、理由をしっかり説明しながらしつけをしましょう。
叱らない
しつけをするときは、どうしても子どものことを叱ってしまいがちですが、「しつけをすること」と「叱ること」は別です。
たとえば玄関で靴を揃えていなかったら、「靴がピタっと揃っていると気持ちいいね」などとポジティブな言葉を使いながら、「次からはちゃんと揃えよう」と、次回に向けてチャンスを与える言い方をしてみましょう。
また、褒めることも忘れないようにしてくださいね。
ただし、他人を傷つけることや本人に危険が及ぶことをしたときは、しつけではなく叱ることが必要です。悪いことをしたら本気で叱られるということを覚えさせることは大切です。
叱る際は、子どもの「行動」に対して具体的に分かりやすく叱るように心がけてください。感情的になって子どもの人格や存在を脅かすような叱り方にならないように気をつけましょう。
他の子と比較しない
「●●くん・●●ちゃんはもうできるのに、なんでできないの」と他の子と比較しながらしつけようとすると、子どもは「自分はできない子なんだ」と劣等感やストレスを感じ、自信を失ってしまいます。
成長には個人差があって当たり前なので、我が子の成長ペースに合ったしつけをするよう心がけてみてくださいね。
もので釣らない
「お菓子を買ってあげるから、●●しよう」と、もので釣って何かをさせるのは避けましょう。その方法を続けると、ご褒美をもらわないと何も行動しなくなってしまう可能性があります。
また、子どもが何かを達成したときは、ものを与えるのではなく、いっぱい褒めてあげるようにしましょう。褒められることで子どもは達成感や親からの愛情を感じ、またしてみようという気持ちになりますよ。
温かく見守りながら3歳児のしつけをしよう
好奇心と自立心が強くなる3歳児。しっかりしつけなくてはと思って、つい「これもだめ、あれもだめ」と言ってしまうこともあるかもしれませんが、できるだけ子どもの意思を尊重して、ある程度は自由にさせてあげることも大切です。
ママやパパが手本を見せながら、子どもの性格や興味にあう方法で、温かく見守りながらしつけをしていけるといいですね。
監修医師:小児科 武井 智昭
日本小児科学会専門医。2002年、慶応義塾大学医学部卒。神奈川県内の病院・クリニックで小児科医としての経験を積み、現在は神奈川県大和市の高座渋谷つばさクリニックに院長として勤務。内科・小児科・アレルギー科を担当しています。感染症・アレルギー疾患、呼吸器疾患、予防医学などを得意とし、0歳から100歳まで「1世紀を診療する医師」として診療を行っています。