春の訪れが近くなるのを感じると同時に、鼻や目のムズがゆさに悩まされている人もいるのではないでしょうか?
花粉症に悩まされる大人は少なくありませんが、赤ちゃんも花粉症にかかるのでしょうか?
今回は、赤ちゃんも花粉症にかかるのかどうか、そして対策はどのようにすればいいのかについてご紹介します。
「風邪じゃないのに鼻水が出る…。
うちの子、もしかして花粉症?」
ある日、編集部メンバーとの会話のなかで、このような話題が上がりました。
「花粉の量が増えてきたら、1歳の息子の肌が突然荒れ始めたんだよね。それまで肌荒れなんて、一度もしたことがなかったのに」と。
「そういえば、上の子は2歳のときから、風邪でもないのに鼻水が出てたなぁ。くしゃみもするし、夜は鼻が詰まって寝苦しそうで…」
それって、それって、花粉症なのでは?
社内のママ・パパに緊急アンケートをとったところ、続々と報告されたのです。「赤ちゃんの頃から花粉症の症状が出ていた」という声が。
なんと、社員の子供の3人に1人に花粉症らしき症状が現れていることがわかりました。
赤ちゃんも花粉症になるの?
結論から言うと、赤ちゃんも花粉症になります。
2006年の国立病院機構を中心とした研究のチームの発表で、以下のことがわかっています(※1)。
● なんらかのアレルギーがあると、乳幼児期の後半(4〜6歳)には約6割がスギ花粉が陽性になる
● 子供のスギ花粉症が増加、低年齢化が進んでいる
花粉症になる子供の数は、年々増加しています。そのため、研究から10年以上が経過した現在では、もう少し多くの赤ちゃんがスギ花粉にかかっている可能性もあります。
赤ちゃんの花粉症は、遺伝?
今回、ママ・パパ社員に話を聞いたところ、多くの人が「自分が花粉症だから、遺伝したのかも」と回答していました。
ですが、先の研究チームの報告では「2親等以内の親族(※)がなんらかのアレルギーをもっていても子供への影響はない」とあります。
そのほか、住んでいる地域(都心・山間部)、ペットの飼育の有無なども大きな差異はない、としています。
ただ一つ、乳幼児期に花粉症になる子供で大きな差があったのが「誕生月」なのです。
※赤ちゃんにとって祖父母、ママ・パパのきょうだい
赤ちゃんはどうやって花粉症になるの?
「誕生月?」と驚いた人も多いかもしれませんね。その前に「どのようにして花粉症になるか」からご説明します。
花粉症になる仕組みは?
花粉症は、アレルギーの一種です。
1. 体の中に花粉が入ると、体はそれを異物(抗原)と見なして抗体を作ります。
2. 再び花粉が体内に入ることで抗体と反応しあい、花粉症の症状が出ます。
何月生まれの子に花粉症が多いの?
この調査の対象となった子供(年齢の中央値は4歳)の誕生月を1〜3月、4〜6月、7〜9月、10〜12月ごとに区分けしたところ、スギ花粉に陽性だった子供は1〜3月生まれが有意に多かったのです。
また、海外の研究チームが以下のような報告もしています(※1)。
● 3シーズン目に花粉症を発症することがある
1〜3月に生まれた赤ちゃんは、同じ年に生まれた赤ちゃんより1回多くスギ花粉に触れていることになります。
そのため、翌年の1〜3月に2回目のスギ花粉に触れることで体が花粉に対して敏感な状態になり、場合によっては花粉症のような症状が現れると考えられます。
乳幼児期に花粉症を発症する場合は2歳以降が多く、ピークは3歳であることもわかっています。
学童期を過ぎる頃には、どの子も花粉にさらされた回数が複数回にのぼります。そのため、就学前には誕生月に関係なく花粉症を発症する子が増え始め、思春期になるころに半数の子が花粉症になるとされています。
赤ちゃんの花粉症、どんな症状が出る?
それでは、赤ちゃんの体が花粉に対して敏感になったり、花粉症を発症するとどのような症状が見られるのでしょうか。
赤ちゃんはまだ症状や不快感をうまく伝えられないため、風邪と勘違いをしてしまうこともあるそうです。
花粉症かどうかを見極めるポイントを、小児科医の武井先生に教えてもらいました。
〜花粉症が疑われる症状〜
● 水っぽい鼻水が出る
● くしゃみを何度もする
● 目や目の周りが赤くなっている
● まぶたが腫れぼったい
これらの症状が、風邪でもないのに見られたら花粉症かもしれません。
赤ちゃんはかゆみなどの不快症状を訴えられないので、グズグズと不機嫌になったり、顔などをかきむしってしまうこともあります。
花粉症が疑われるときの対策は?
赤ちゃんや小さな子供に花粉症が疑われる場合は、どのように対策したらいいのでしょうか?
引き続き、武井先生に教えてもらいました。
花粉症のような症状が見られたら、原因物質の花粉との接触を減らすことが大切です。
● 洗濯物は室内干しにする
● 外出先から帰宅したら、玄関の外で衣服や髪の毛についた花粉を払い落とす
● 外遊びは花粉が少ない午前中にする
● 掃除をこまめに行い、拭き掃除も行う
● ベビーカーにレインカバーをつける
● 外出時は、ポリエステルのような素材の服を着せる
● 空気清浄機を使用する
目のかゆみや充血がひどかったり、涙目だったりするときは皮膚科や小児科を受診するといいでしょう。
ただ、赤ちゃんのうちは、血液検査をしても花粉症かどうかわからないこともあるようです。
適切なケアで不快を取り除こう
花粉症になると、目や鼻のかゆみだけでなく、集中力が低下することもあるので憂鬱ですよね。
大人ならマスクをしたり、薬を飲んで対処もできますが、赤ちゃんの間は難しいこともあります。
赤ちゃんに「花粉症かも?」という症状が見られたら、なるべく花粉との接触を減らして不快を取り除いてくださいね。
監修:小児科/高座渋谷つばさクリニック 武井智昭先生
日本小児科学会専門医。2002年、慶応義塾大学医学部卒。神奈川県内の病院・クリニックで小児科医としての経験を積み、現在は神奈川県大和市の高座渋谷つばさクリニックに院長として勤務。内科・小児科・アレルギー科を担当しています。感染症・アレルギー疾患、呼吸器疾患、予防医学などを得意とし、0歳から100歳まで「1世紀を診療する医師」として診療を行っています。