避妊や生理不順の改善のために「低用量ピル」が使われることがあります。しかし、服用するとなると、その副作用が気になりますよね。今回は低用量ピルの副作用について、具体的にどんな症状が現れるのか、いつからいつまで続くのかなどをご説明します。
低用量ピルの効果は?
経口避妊薬である低用量ピルには「エストロゲン(卵巣ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」の2つの女性ホルモンに似た成分が配合されています。
低用量ピルを服用することで、体内のホルモンバランスが妊娠したときと同じ状態になり、脳に「妊娠した」と勘違いさせて排卵を止める効果があります。適切に服用すれば、ほぼ100%避妊ができます。
また、女性ホルモンの作用が補われることにより、生理周期が規則正しくなったり、月経前症候群(PMS)や生理痛、月経困難症の不快症状が軽減されたりする効果もあります。
また、子宮内膜症や子宮体がん、卵巣がんなど女性特有の病気リスクを下げる効果もあり、低用量ピルは様々な目的で処方されています。
低用量ピルの副作用は?
近年使われている低用量ピルは、避妊効果を保ちながら、ホルモン含有量が最小限に抑えられているため、体への負担はそれほど大きくありません。しかし、特に服用開始直後は、副作用が現れることがあります(※1)。
症状の程度には個人差がありますが、頭痛や吐き気、乳房の張りなどを感じる場合もあります。また、生理ではないときに少量の不正性器出血が見られることも。
低用量ピルの服用中に激しい下痢、嘔吐が続くと、ピルに含まれる成分がうまく吸収されず、避妊効果が低くなる可能性があるので、コンドームなどその他の避妊法も併用した方が良いでしょう(※2)。
これらの副作用は、低用量ピルを継続的に飲むことで徐々に治まっていくことがほとんどですが、どうしてもつらいときや長期的に続く場合は、担当医に相談してみましょう。場合によっては、服用を中止するなど適切な処置をとる必要があります。
低用量ピルの副作用で太るの?
「低用量ピルを服用すると太る」という噂を聞いて心配している人がいるかもしれません。
低用量ピルの副作用としてナトリウムや体液が溜まりやすくなり、「むくみ」や「体重増加」が見られることがあるため(※2)、「太った」と感じる人もいるかもしれません。
一般的に、軽い症状であれば経過を観察しながら服用を続けますが、症状が重い場合には低用量ピルの処方量を減らしたり、服用を中止したりするなどの対応がとられます。
低用量ピルの副作用で血栓症になる?
低用量ピルの副作用でもっとも重大なものが、血が固まって血管を塞いでしまう「静脈血栓症」です。発生頻度は低いものの、一旦発症すると命に関わる危険性もあります。
日本産科婦人科学会の見解によると、ピルを服用していない女性の静脈血栓症の発症率が年間1万人あたり1~5人であるのに対し、低用量ピルを服用していると1万人あたり3~9人です。低用量ピル使用中の死亡率は、10万人あたり1人以下と報告されています(※3)。
激しい腹痛や胸の痛み、頭痛、ふくらはぎが痛み・むくみ、手足のしびれ、舌のもつれや失神、けいれんなどが見られた場合、静脈血栓症の兆候の可能性があるので、病院をすみやかに受診しましょう。
低用量ピルの副作用が出やすい人もいるの?
次の条件に当てはまる女性は、低用量ピルによる副作用が現れるリスクが高いので、服用の際には注意が必要です。
40歳以上・肥満・喫煙者
一般的に、40歳以上の人や肥満の人は、心筋梗塞など心血管系の障害が発生しやすく、低用量ピルを飲むことでこれを助長する恐れがあります。
また、喫煙も心筋梗塞や静脈血栓症の発症リスクを高めるため、低用量ピルを服用するのであれば禁煙する必要があります。
婦人科系の病気の既往歴がある人
子宮筋腫や子宮内膜症、乳がんなどにかかっている、もしくはかかったことがある女性の場合、低用量ピルの服用により悪化・再発の恐れがあります。ピルを処方してもらう際に、必ず医師に申し出ましょう。
原則として、低用量ピル服用中は6ヶ月~1年ごとの検診を受け、乳房や子宮、卵巣などに異常がないかどうか検査する必要があります(※2)。
低用量ピルの副作用を理解し、適切な服用を
低用量ピルには、避妊のほか、婦人科系の病気の予防や、生理痛の症状緩和など、様々な効果があります。ただし、頻度は不明ながら副作用が現れることもあるので、医師による診察を受けたうえで飲み始め、定期的に検診を受けながら、適切な服用を続けてください。
また、避妊などの効果を得るには、正しく服用する必要があるため、用法・用量を守って飲むようにしましょう。
監修医師:産婦人科医 藤東淳也先生
日本産科婦人科学会専門医、婦人科腫瘍専門医、細胞診専門医、がん治療認定医、日本がん治療認定医機構暫定教育医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医で、現在は藤東クリニック院長。専門知識を活かして女性の快適ライフをサポートします。
※1 日本産婦人科医会「ピルの副作用と副効用を教えてください。」
※2 富士製薬工業株式会社「ファボワール錠」添付文書
※3 日本産科婦人科学会「低用量経口避妊薬、低用量エストロゲン・プロゲストーゲン配合剤 ガイドライン(案)」p.75