子どもがかかりやすい皮膚の病気に「とびひ」があります。人から人にうつる厄介な病気なので、感染したら周囲にうつさないようにしないといけませんね。今回は、「保育園や幼稚園には登園できなくなるの?」「プールにはいつから入れるの?」など、子どもがとびひになったときの疑問にお答えします。
とびひとは?保育園や幼稚園で集団感染しやすいの?
とびひは、正式名は「伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)」といい、その多くは皮膚から黄色ブドウ球菌や溶血性連鎖球菌(溶連菌)などの細菌が感染して起こる皮膚の病気です。
あせもや虫刺されのかき壊し、湿疹などの皮膚にできた傷口から原因菌に感染すると、膿(うみ)を持った水ぶくれが体のあちこちにでき、ジュクジュクした汁が出たり、かさぶたができたりします。
水ぶくれや傷口に触れると感染するほか、感染した子どもが触った物を共有することで、皮膚からうつることもあります。
また、感染から発症までの潜伏期間が2~5日ほどありますが、1ヶ所での症状からかきむしり、広がる可能性があります。
そのため感染に気づかないまま保育園や幼稚園に登園してしまい、知らない間に周りの子にうつしてしまうこともあります。
とびひになっても保育園や幼稚園には行けるの?
とびひは、「学校保健安全法」という法律の中では「学校感染症第三種(その他の感染症)」として扱われています。基本的には、発熱がなく医師の診察と適切な治療を受け、患部をガーゼや包帯で覆っていれば、登園・登校の許可を得られます(※1)。
ただし、「患部がガーゼなどで覆えないほど大きく広がっている」「膿が多く出ていて感染の危険性が高い」「かゆみが強く、患部を手でかいてしまう」といった場合は、患部が乾燥して症状が治まるまでは感染のリスクがあるため、登園を控えたほうが望ましいとされます。
また、保育園や幼稚園によっては、園児がとびひに感染したときの登園ルールを定めていることもあるので、事前に確認しておきましょう。
とびひになったらプールに入れるのはいつから?
プールの水を介してとびひがうつるわけではありませんが、患部に触れることで症状が悪化したり、ほかの人にうつす恐れがあるため、日本臨床皮膚科医会と日本小児皮膚科学会は「とびひが完治するまでプールや水泳は禁止」という統一見解を出しています(※2)。
なお、患部が乾燥してかさぶたになると「もう大丈夫」と思ってしまうかもしれませんが、かさぶたの中に細菌が残っている可能性があるので油断は禁物。完治したと医師から診断されるまでは、子どもをプールに入れるのを我慢させてくださいね。
とびひで保育園・幼稚園を休んでいる間のケアは?
とびひが治るまでは、子どもを保育園・幼稚園を休ませて家でケアを続ける必要があります。次のことに気をつけて、根気強く子どものお世話をしてあげてくださいね。
爪を短く切る
かゆみが強いので、子どもはどうしても我慢しきれず爪でひっかいてしまうもの。そうすると、かいているうちに汁のついた手でほかの部分を触ってしまい、全身に広がってしまうので大変です。
子どもの爪を短く切り、夜だけゆるく包帯を巻いてあげるなど、症状が悪化しないよう工夫してみてください。
お風呂はシャワーだけ
とびひの患部は清潔にしておく必要がありますが、お風呂は湯船につからず、シャワーだけにしましょう。皮膚への刺激を避けるため、シャワーの温度は38~39℃前後に設定してください。
石けんをよく泡立てて、患部をこすらないようにそっと洗ってから、シャワーでやさしく流してあげるのがポイントです。
薬を適切に使う
シャワーで患部をきれいにしたあとは、病院で処方された薬を適切に塗ってあげます。かさぶたになってきても、医師から完治の診断が出るまでは、用法・用量を守って薬を使い続けてくださいね。
かゆみ止めの軟膏など、自己判断で市販薬を使わないようにしましょう。
とびひを保育園・幼稚園でうつさないように注意
とびひは、保育園や幼稚園で感染が広がりやすい病気の一つです。普段から、「虫刺されやあせもがかゆくても爪でかかない」「手洗いの習慣をつける」ことを徹底し、とびひの予防に努めましょう。
万が一とびひにかかってしまったら、なるべく他の人にうつさないよう、すぐに小児科や皮膚科を受診しましょう。「家族でタオルを共用しない」「湯船にはつからない」といったことに気をつけ、医師から処方された薬を適切に使ってケアしてあげてくださいね。
保育園や幼稚園に行けない間、家でずっと子どもの面倒を見るのは大変ですが、とびひが完全に治るまでは、周囲にうつさないよう細心の注意を払って子どものケアをしてあげましょう。
監修医師:小児科 武井智昭先生
日本小児科学会専門医。2002年、慶応義塾大学医学部卒。神奈川県内の病院・クリニックで小児科医としての経験を積み、現在は神奈川県大和市の高座渋谷つばさクリニックに院長として勤務。内科・小児科・アレルギー科を担当しています。感染症・アレルギー疾患、呼吸器疾患、予防医学などを得意とし、0歳から100歳まで「1世紀を診療する医師」として診療を行っています。
※1 厚生労働省「保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)」
※2 日本皮膚科学会「皮膚科Q&A とびひ」