風邪が流行る時期は、家族みんなで予防・対策をすることが大切です。しかし、具体的に何をしたらいいのか、意外と知らないことも多いですよね。
そこで今回は、日本小児科学会専門医である武井先生に、家族みんなでできる風邪の予防・対策方法をはじめ、万が一感染したときの対処法を教えてもらいました。
そもそも風邪ってどうやって広がるの?
そもそも風邪とはどうして流行るのか、主な感染経路を聞いてみました。
武井先生
風邪は、咳やくしゃみで飛び散った飛沫を吸い込んだり、感染者の唾液などがついたものに触れた手で口や目を触ってしまったりすることで感染します。
風邪は、主に細菌やウイルスが体に侵入することで発症しますが、体内に細菌やウイルスを持っていても発症しない人もいます。症状が出ていない人から感染するケースもあるので、ひとりひとりが予防を徹底することが大切です。
風邪がはやる時期に
家族で意識したい予防方法!
風邪が流行る理由や感染経路はわかりましたが、予防するには具体的にどのようなことをすればよいのでしょうか。
武井先生によると、原因となる細菌とウイルスは大きさや構造は違っても、対策方法はほぼ同じといいます。さまざまな対策方法がありますが、ここでは家族みんなができる効果的な方法をご紹介します。
手洗い・うがいをする
手は日常のなかでいろいろなものに触れるため、多くの細菌やウイルスが付着します。その手で口などに触れると、病原体が体内に侵入しやすく、感染してしまうことがあります。
手を洗うときは、石鹸などを使って手の平・指の間・手の甲までしっかりと洗い、きれいな状態に保つことが大切ですよ(※1)。
また、うがいをしたり、こまめに水を飲んだりすることも風邪予防になると武井先生はいいます。
武井先生
うがいには、喉を潤して乾燥を防いだり、花粉や汚れなどを流して口腔内を清潔に保ったりする役割があります。細菌やウイルスは、湿度の高い場所を嫌う傾向があるため、口全体と喉全体をしっかり潤すことが大切です。
乳幼児にはうがいができない子もいますよね。その場合は、水分を多く摂ったりトローチやのど飴をなめたりすることで、うがいの代わりになりますよ。細菌やウイルスは基本的に胃酸で溶けるので、水分を飲み込んでも問題ありません。
睡眠をしっかりとる
睡眠をとることも、風邪予防対策として有効です。睡眠にはどのような効果があるのか、武井先生に聞いてみました。
武井先生
睡眠には、細菌やウイルスなどの外敵や腫瘍などの異物を攻撃する「リンパ球機能」を高める効果があります。そのため、風邪予防対策として有効的なんです。
睡眠時間は、赤ちゃんは12時間、子供は8時間、大人は6〜7時間ほどとるのが理想です。しっかり睡眠時間を確保してくださいね。
栄養をしっかり摂る
十分な栄養を摂ることも、風邪予防につながります。主食・副菜・主催・乳製品・果物を、1日の食事の中でバランスよく食べるようにしましょう。
特に、感染予防に効果がある食材や栄養素について、武井先生に聞いてみました。
武井先生
風邪や感染症が流行る時期は、抗酸化成分の高い果物や野菜を食べるといいですよ。
また、ビタミンCが多いピーマンやブロッコリーなどを摂ると、抵抗力を高めることに繋がります。免疫の細胞であるリンパ球が活性化されて、免疫作用が強くなりますよ。
こまめに換気する
風邪やウイルスが蔓延する季節は、換気を定期的に行うのもポイント。細菌やウイルスの漂う空気を、クリーンな空気に入れ替えましょう。
換気も風邪予防対策としてはよく聞きますが、どれくらいの頻度で行うと良いのでしょうか。
武井先生
換気の目安としては、1時間に1回、5分ほど行うのが理想です。部屋全体が換気されます。
特にウイルスは、湿度50%以上で感染力は低下するので、換気する際は湿度も意識してくださいね。
除菌をする
風邪はこまめな除菌によっても予防できます(※1)。
外出先から帰ってきて触るドアノブや取っ手などには、特に多くの細菌やウイルスが付着します。
アルコールや次亜塩素酸ナトリウムなどでこまめに除菌しましょう。
子供がいる家で特に気をつけたいことは?
小さな子供がいると、風邪予防には特に敏感になりますよね。どのようなことに気をつけるといいのか、武井先生に聞いてみました。
武井先生
子供がいる場合は、まずは寒暖差が大きくならないよう注意してあげましょう。体を冷やさないよう、服装に気をつけたり、温かいものを飲んだりして調整してあげてください。
加えて、人混みを避けて感染経路を断つのも大切です。特に乳児の場合は、抵抗力があまりないので、満員電車などはできるだけ避けるようにしてくださいね。
家族が感染してしまった…!
どんなことに気をつければいい?
風邪の予防・対策をしていても、かかってしまうことはあります。家族が感染してしまったら、以下の対応方法を参考にしてみてください。
咳やくしゃみをするときは鼻・口を覆うよう促す
感染した人が咳やくしゃみをするときは、鼻・口を覆ってもらうことが大切。マスクはもちろん、ハンカチや服の袖などで鼻と口を覆ってもらい、飛沫感染を予防しましょう。
普段から咳やくしゃみをするとき鼻・口を覆っていれば、気づかぬうちに自分が病原体を持っていても周りの人への感染予防になります。
エチケットとしても、日頃から気をつけるのがおすすめですよ。
感染者を別室に隔離する
感染した家族は、普段の生活スペースではない部屋に隔離する必要があります。感染者を隔離する期間について、武井先生に聞いてみました。
武井先生
家族が感染した場合、別室に隔離することで、感染拡大を防ぎます。解熱するまでは隔離するのが大切です。
とはいえ、赤ちゃんが感染した場合は、隔離するのはむずかしいかもしれません。そんなときは、赤ちゃん以外の家族が手洗い・うがいをこまめに行なったり、室内の環境を整えたりするといいですね。
隔離する場合は、こまめに様子を見に行くようにしましょう。
吐瀉物などの処理は素手で行わない
感染者の吐瀉物も感染源となります(※1)。処理するときは、直接素手では触らず、ビニールやゴム手袋などをつけるように意識しましょう。
必ず換気をしながら処理をし、汚れた場所もしっかり消毒することが大切です。吐瀉物を入れた袋はしっかりと袋の口を閉めて捨てるようにしてください。
鼻水がついたティッシュなども同様に感染源となりうるので、ゴミ箱に捨てたらフタをしておくと良いですね。
トイレはフタを閉めて流す
細菌やウイルスは、排泄物の中にも含まれている場合があります(※1)。トイレを流すタイミングで細菌やウイルスが飛び散ることがあるので、必ずフタを締めてから流すようにしましょう。
フタを開けたまま流すと、排泄物を含んだ水が飛び散ることもあり、トイレのニオイの原因にもなります。普段からフタを閉めるよう心がけられるといいですね。
家族みんなで予防を徹底しよう
もし家族が感染してしまっても、感染の広がりを防ぐために予防は引き続き行うようにしてくださいね。
武井先生によると、より感染しにくくするために漢方を取り入れるのも1つの方法とのこと。
武井先生
葛根湯あるいは補中益気湯の漢方がおすすめです。リンパ球の活性を高める効果があり、ウイルスを体内に入れるのを防いだり、また入っても速やかに免疫反応で治癒できるといった面で、風邪予防に有効的です。
体の抵抗力を高めるものも使いながら、風邪にかからないよう予防してくださいね。
家族みんなで風邪を予防して、心も体も元気に過ごしてくださいね。
取材協力:武井智昭
小児科/高座渋谷つばさクリニック
日本小児科学会専門医。2002年、慶応義塾大学医学部卒。神奈川県内の病院・クリニックで小児科医としての経験を積み、現在は神奈川県大和市の高座渋谷つばさクリニックに院長として勤務。内科・小児科・アレルギー科を担当しています。感染症・アレルギー疾患、呼吸器疾患、予防医学などを得意とし、0歳から100歳まで「1世紀を診療する医師」として診療を行っています。