「むくみ(浮腫)」は妊娠中にほとんどの妊婦さんが感じるトラブルの1つです。特に妊娠後期に多いのですが、デスクワークや立ち仕事など、同じ姿勢をとりつづけることの多い妊婦さんを中心に、妊娠中期からむくみに悩まされる人も少なくありません。
今回は妊娠中にむくみやすくなってしまう原因と、むくみを解消する5つの方法をご紹介します。
むくみ(浮腫)とは?
むくみは、体の皮下組織などに水分がたまって腫れる現象です。基本的に痛みはないことが多いのですが、顔や手足がパンパンに腫れて指で押すと跡が残ります。
妊娠中期・後期になると、赤ちゃんも大きくなってきて、妊婦さん自身の体重増加も気になる頃です。顔や足が丸くなり「もしかして食べ過ぎたかも?」と思う妊婦さんも多いのですが、実際にはむくみのせいで太ったように感じることもあるようです。
ただし、むくみがひどいときには妊娠高血圧症候群などの病気も疑われるので、かかりつけの産婦人科医に相談しましょう。
妊娠中にむくみやすい原因は?妊娠後期・妊娠中期で違う?
むくみは、塩分のとり過ぎや運動不足が主な原因ですが、妊娠中は赤ちゃんに届ける血液量が増えて体内の水分量が増えているので、妊娠前に比べてむくみやすい状態です。妊娠6週目あたりから血液のなかの血漿の量が増加しはじめ、妊娠20週後半には妊娠前の約1.5倍になると考えられています(※1)。
それ以外にも、妊娠中期・後期で次のような原因があります。
妊娠中期のむくみ
つわりも終わり、安定期に入って健康な日々を送れていると、ついつい家事や仕事などで活発に動いてしまいがちです。特に血液量が増加していく時期ですが、体内が変化していることに気づかず、妊娠前と同じように体を動かしているとむくんでしまいます。
妊娠後期のむくみ
妊娠後期になると、お腹の中の赤ちゃんが大きくなって重みが増してきます。そのため、お腹の周りの血管が圧迫され、足のむくみがより顕著に。あまりにむくみがひどいときには、妊娠高血圧症候群のリスクもあるので、産婦人科医の診察を受けましょう。
妊娠中は赤ちゃんの分の血液や水分も体に抱えることになるので、ある程度むくんでしまうのは仕方がありません。しかし、できるだけ不快感は解消したいところですよね。妊婦さんにおすすめの解消法を紹介しますので、ぜひ試してみてください。
妊婦のむくみ解消法1. 足を高い位置にあげる
寝るときや休息をとるときに、20cmくらいの高さが出るようにクッションなどを足の下に置いてみましょう。
仰向けに寝た状態で、両手両足を天井に向かって上げ、パタパタと10秒くらい振ってから寝るようにするのも効果的。妊娠後期は陣痛クッションや骨盤クッションを活用する人も多く、高さとしてもぴったりですね。
妊婦のむくみ解消法2. 足を冷やさない
体が冷えると、血管が収縮して血液が循環しにくくなり、むくみが現れやすくなります。特に下半身は、冬はもちろん、夏の冷房でもあっという間に冷えてしまうので、靴下やレッグウォーマーで体温調節をしましょう。また、足先の冷えにはフットバスがおすすめです。
ただし、足が水で濡れたままになっていると余計に冷えてしまうので、タオルで指の間までしっかり拭き取り、すぐに靴下を履くようにしましょう。妊娠後期は歩くだけでも疲れてしまうので、パートナーにマッサージしてもらうようにお願いしてみてはいかがでしょうか?
妊婦のむくみ解消法3. マッサージをする
マッサージで足の血液循環をよくすると、むくみの解消につながります。ただ、お腹が大きくなってくると、自分で足をマッサージするのは難しいものです。
そんなときはパートナーの出番です。足の裏をギュッギュッと押してもらうと、気持ちがいいのはもちろんですが、夫婦間のコミュニケーションにも効果を発揮しそうですね。
妊婦のむくみ解消法4. ウォーキングをする
「足を使う」ことは、滞りがちな血流の改善におすすめです。ただし、無理は禁物なので、自分の体調をみながら、余裕をもって歩くことを心がけてください。
膝を伸ばして、かかとから着地するよう意識することで、ふくらはぎの「ポンプ機能」がしっかり働き、足のむくみやだるさを解消してくれます。妊娠後期は運動不足になりがちなので、短い時間でも毎日コツコツとウォーキングしたいですね。
妊婦のむくみ解消法5. 塩分を控え、カリウムの多い果物を食べる
妊娠中は塩分を控えた食事をしましょう。人間の体は、塩分に含まれるナトリウム濃度を一定に保とうとする機能があります。そのため、必要以上に塩分を摂取すると、濃度を薄めようとして水分を体に多く取り込んでしまい、むくみを引き起こしてしまいます(※2)。
また、食事中の塩分を摂りすぎないように気をつけるのはもちろんですが、余分なナトリウムを体外に排泄してくれるカリウムを多めに摂取するのも、むくみ解消には効果的です(※2)。カリウムはアボカドや納豆のほか、バナナやメロンなどの果物にも多く含まれています(※3)。
妊婦のむくみ対策は「無理をしない」
積極的にむくみを解消するのも大切ですが、なによりも無理をしないことが一番のむくみ対策になります。疲れを感じたらこまめに休憩をとるなど、できるだけリラックスして日々を過ごしていきましょう。
また、妊娠中のむくみは、出産とともに自然に解消されるので、あまり心配しすぎないでくださいね。
まとめ
● 妊婦になると体内の水分量が増えるため、妊娠前よりむくみやすい
● むくみがひどいときには、妊娠高血圧症候群のリスクもあるため、産婦人科医の受診がおすすめ
● 妊婦のむくみの解消法には、足を高く上げる、足を冷やさない、マッサージをする、歩く、塩分を控えてカリウムを摂る、などがある
● 妊娠中のむくみは出産とともに解消されるので、心配しすぎなくてもいい
※1 国立循環器病研究センター「[86] 妊娠・お産と循環器病」
※2 新星出版社『図版オールカラー 栄養成分の事典』pp.82-84
※3 文部科学省「食品成分データベース」