子どもが耳を痛がっていると、「大きな病気なのではないか」「耳が聞こえなくなってしまうのではないか」と心配になることもあるかもしれません。特に初めて痛がったときは、焦ってしまいますよね。
そこで今回は、子どもが耳を痛がるときの原因や治療方法などをご説明します。
子どもが耳を痛がる原因は?
子どもが耳を痛がっているときは、以下のような原因が考えられます(※1)。
中耳炎
鼓膜の奥の中耳で炎症を起こしている状態です。中耳炎にはいくつかの種類がありますが、一般的には「急性中耳炎」を指していることが多いです。
鼻のウイルスや細菌が鼻の奥から中耳(鼓膜から奥の部分)に入ることで、炎症を引き起こし中耳炎となります。
耳を激しく痛がるのが特徴なので、子どもが耳の痛みを訴えたらまずは急性中耳炎を疑ってみましょう。痛みのほかに、耳が詰まる感じがしたり中耳に膿が溜まったりすることもあります。
外耳炎
鼓膜の手前の外耳道で炎症が起きている状態です。耳をかき過ぎたり、耳の入り口にできたアトピー性の湿疹などをかきむしったりして細菌が入って、炎症を引き起こすことで起こります。
耳を引っ張ったり少し触れたりしただけでも非常に痛がるのが特徴です。
傷や異物
耳掃除をしていて、綿棒や耳かきを深く入れすぎたときに耳が傷ついたり、おもちゃなどの異物が耳の中に入ったりしたときにも痛みが生じます。
耳以外の場所の痛み
子どもが耳の痛みを訴えていても、耳ではない場所が原因で痛みが生じていることもあります。例えば、耳の穴のすぐ前にある顎関節や、耳管という管でつながっている喉の炎症などがあげられます。
また、耳の下が腫れ上がる「おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)」や「頸部リンパ節炎」を発症した際にも、耳の周りに痛みを感じることがあります。
子どもの耳が痛いときは何科を受診したらいい?
子どもが耳を痛がるときは、耳鼻科または小児科を受診しましょう。「耳に関することだから耳鼻科へ連れていかなくては」と思うかもしれませんが、小児科でも耳鏡で鼓膜など耳の中まで診察してくれることもあります。
ただし、耳の痛みに加えて、鼻水が出ているときや喉の痛みがあるときには、耳鼻科を受診した方がいいでしょう。
必要な場合は他の科を紹介してもらえるので、まずは子どもの状態をよく知っているかかりつけの医師に相談してみてくださいね。
子どもが耳を痛がるときの治療法は?
子どもの耳が痛いときの治療法は、その原因となる病気によって異なります。
中耳炎・外耳炎が原因の場合、抗生物質の飲み薬や点耳薬によって治療することがほとんどです。
治らない場合や、膿がたまるほどひどい場合は、膿が溜まっている部分や鼓膜の切開手術を行うこともあります。切開した鼓膜はすぐに再生し、膿が出てしまえば強い痛みもやわらぎます。
中耳炎や外耳炎以外が原因の場合、その原因となる傷や病気の治療が優先されます。
耳の痛みが強い場合は、対症療法として、痛み止めの服用を行うこともあります。
子どもの耳が痛いときの応急処置は?
子どもが耳を痛がるときは、冷たいタオルなどを耳の後ろにあてて冷やしてあげましょう。冷えると次第に痛みが和らぐこともあります。
もし、以前に小児科で処方された子ども用の鎮痛剤があれば、医師に確認をした上で服用させてもいいでしょう。
その際は、耳が痛みを和らげるために使うことを伝え、用法・用量を必ず守って飲ませてくださいね。
夜中に子どもの耳が痛いときは?病院に行くべき?
子どもが耳を痛がる原因の多くは急性中耳炎で、基本的に中耳炎に緊急性はありません。
子どもが夜中に耳を痛がった場合は、耳を冷やしたり子ども用の解熱剤や鎮痛剤を服用させたりして、次の日まで様子を見てもいいでしょう。翌日に痛みがひいていても、念のため小児科や耳鼻科を受診することをおすすめします。
ただし、耳と同時に頭を痛がって発熱しているときは、他の病気が隠れている可能性があるので、夜間や休日でも救急外来を受診してください(※2)。
子どもの耳が痛いときは焦らず対処を
子どもが「耳が痛い!」というときの原因は、大きな病気ではないことがほとんどですが、まずは耳鼻科や小児科を受診するようにしましょう。
特に小さい子どもは突然耳を痛がることもあるので、今回ご紹介した疑われる原因や対処法を事前に知っておき、いざというときに落ち着いて対処できるといいですね。
監修医師:小児科 武井 智昭
日本小児科学会専門医。2002年、慶応義塾大学医学部卒。神奈川県内の病院・クリニックで小児科医としての経験を積み、現在は神奈川県大和市の高座渋谷つばさクリニックに院長として勤務。内科・小児科・アレルギー科を担当しています。感染症・アレルギー疾患、呼吸器疾患、予防医学などを得意とし、0歳から100歳まで「1世紀を診療する医師」として診療を行っています。
※1 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「耳の病気」
※2 日本小児科学会「こどもの救急」