妊娠中におけるトラブルのなかで、多くの人が悩まされるのが「便秘」。その原因は様々ですが、見落とされがちな原因に「普段の姿勢」があります。
今回は妊娠中の姿勢と便秘の関係、体操やストレッチなどで姿勢を正して便秘を解消する方法もご説明します。
妊娠中に姿勢が悪いと便秘になるの?
妊娠中の便秘は、ホルモンバランスの変化や、子宮による腸の圧迫、ストレスなどさまざまな原因で起こりますが、意外と忘れがちなのが「姿勢」です。
お腹が大きくなって重心が前に偏ると、妊婦さんは背中を反らしてお腹を突き出す「反り腰」になりやすいです。
実は、この姿勢は腰や背中などに負担をかけるだけではなく、下半身の筋肉を緊張させてしまうため、腸の動きが抑えられてしまい、便秘に繋がることがあります。
妊娠中の正しい姿勢って?
妊娠中の正しい姿勢は、壁を使うことで簡単にチェックできます。
壁に背中をつけるように立ってみましょう。このとき、「壁に後頭部と背中をピッタリとくっつけて立ち、両肩とお尻も壁との間に隙間ができないようにする」と正しい姿勢になります。
定期的に壁を背にして正しい姿勢の感触をつかみ、そのままの姿勢をキープして体を動かしてみるといいですよ。正しい姿勢を維持するための筋肉が発達して、便秘をはじめとしたさまざまなマイナートラブルへ効果が期待できます。
もし腰痛や骨盤痛などがあって姿勢を保つのが難しいときは「トコちゃんベルト」のような骨盤まわりをサポートしてくれるベルトを使うのもおすすめです。
妊娠中の日常動作で意識することは?
正しい姿勢を保つには、日常生活の動作にも気をつけましょう。
立つ
台所や職場で立ち仕事をするときは、正しい姿勢を意識しながら、両足をやや大きめに開いて片方の足は一歩踏み出しましょう。体が安定して、正しい姿勢を保ちやすくなります。定期的に前後の足を入れ替えると体のバランスがとれますよ。
中腰の姿勢は負担が大きいので、できるかぎり椅子に座って作業しましょう。料理をしたり掃除機をかけたりと家事をするときは中腰になりがちですが、できるだけ背骨をまっすぐ伸ばした状態で動くように心がけてください。
座る
椅子に座るときは深く腰かけて、背もたれに体をあずけるように背骨を伸ばします。座る椅子は柔らかすぎるとお腹が圧迫されるので、できるだけ座面の固いものを選びましょう。
座面の前側が下がるように傾斜がついた椅子は、腹部が圧迫されにくいのでおすすめです。お腹がそれほど大きくないと、座るときの癖で足を組みたくなるかもしれませんが、足を組むと腹部も圧迫してしまうので、控えましょう。
椅子ではなく床に直接座るときは、正座かあぐらが楽です。横座りやおしりをペタンと床につける座り方も、腰痛などにつながりやすいので注意が必要です。
階段の上り下り・持つ・寝る
立ったり座ったり以外の日常的な動作にも気をつけましょう。階段を上り下りするときは手すりにつかまって前かがみにならないように。片方の足に重心を乗せてから、ゆっくりともう片方の足を動かすのが基本です。
妊娠中はなるべく重い物は持たないようにしたいところですが、どうしても重い物を持ち上げる必要があるときは、一度しゃがんで片膝をつき、身体に引き寄せるようにして持ち上げましょう。
寝るときも仰向けやうつ伏せなどお腹に負担がかかる寝方に注意してください。基本的には横向きの「シムス体位」がおすすめです。お腹が圧迫されないように抱き枕やクッションを使って楽な姿勢を探しましょう。
妊娠中の便秘を解消する体操やストレッチ3選
正しい姿勢を心がけながら適度な運動をすると、筋肉が鍛えられ、さらに消化器官も刺激されてお通じがよくなる効果が期待できます。
以下のような手軽な体操やストレッチから始めてみましょう。ただし、お腹が張っているときや体に痛みがあるときは、無理をしないようにしてくださいね。
ねじりのポーズ
1. 床にあぐらをかいて座り、背筋を伸ばす
2. 目線はまっすぐ前を見て、腹式呼吸で息を吸う
3. 息を吐きながら腰をひねり、両手を前と後ろに回す(腰や背中は丸めないように背筋が伸びていることを意識する)
4. 体を下に戻したら、反対側へ同じようにひねる
腰回し
1. 脚を肩幅に開いたまま立ち、まっすぐ前を見る
2. 両手を腰に当て、腰を時計回りに2〜3回大きく回す
3. 一周したら逆周りに2〜3回大きく回す
背中伸ばし
1. 四つん這いになる
2. 顔を下に向け、腹式呼吸で息を吸いながら背中を上に持ち上げて丸める
3. 下に向けていた顔を正面に向けながら、息を吐くのにあわせて背中を下ろす
4. 胸を突き出すように上体を反らす
5. 1~4を5回繰り返す
妊娠中は正しい姿勢を意識しよう
妊娠中から正しい姿勢を保つようにしておくと、健康的になるだけでなく、立ち姿も綺麗になって振る舞いが美しく見えます。
妊娠中は体が思うように動かない時期ではありますが、できる範囲で正しい姿勢を意識するといいですね。
監修医師:産婦人科医 藤東 淳也先生
日本産科婦人科学会専門医、婦人科腫瘍専門医、細胞診専門医、がん治療認定医、日本がん治療認定医機構暫定教育医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医で、現在は藤東クリニック院長。専門知識を活かして女性の快適ライフをサポートします。