「もしかして妊娠?」のドキドキから産婦人科での心拍確認を経て、妊娠が確定する妊娠初期。妊娠初期は妊娠4ヶ月(15週)までを指しますが、流産が起こることもある時期なので、不安を感じている人も多いかもしれませんね。
今回は、妊娠初期の流産の原因や兆候、予防法はあるのかをご紹介します。
流産とは?妊娠初期に起こる確率は?
「流産」とは、妊娠22週0日より前に妊娠が終わってしまうことです(※1)。何らかの原因で妊娠の継続が困難になり、胎児が育たなくなってしまった状態をいいます。
流産はすべての妊娠の平均10%程度の頻度で起こります(※2)。特に、妊娠12週未満に起こる「早期流産」が多く、流産全体の約80%以上を占めます。
流産全体のうち、妊娠週数別の割合は以下の通りです(※2)。
● 妊娠5~7週:22~44%
● 妊娠8~12週:34~48%
● 妊娠13~16週:6~9%
妊娠初期に流産が起こる原因は?
妊娠12週までに起こる早期流産の原因は、赤ちゃんの染色体異常によるものがほとんどです(※1)。妊婦さんが運動や仕事などをしたことが原因で起こるケースは、ほぼありません。
また、高齢妊娠・出産も流産の原因となる可能性があるといわれています。特に35歳以上からは、流産の確率がぐっと高まることがわかっています(※2)。
加齢とともに流産の確率が高くなる理由は、年齢を重ねるにつれて卵子の質が低下し、染色体異常の発症率が増加するからと考えられています(※3)。
妊娠初期の流産の種類や症状は?手術は必要なの?
妊娠初期の流産には次のような種類があり、それぞれ症状の有無や現れ方、手術が必要かどうかなどが異なります(※1,2,4)。
稽留(けいりゅう)流産
胎児(胎芽)の発育が止まったまま子宮内に留まっている状態です。
出血や腹痛などの自覚症状は、ほぼありません。通院中にはじめて流産が確認されるケースが多いです。
手術をして胎児(胎芽)を取り出す場合と、経過を見ながら自然に排出されるのを待つ場合があります。どちらにするかは、妊婦さんと医師が相談しながら決めていきます。なお、胎芽が10mm以上の場合は、手術がすすめられることもあります(※5)。
進行流産
子宮口が開いて、流産が進んでいる状態です。出血や腹痛がみられ、病状によっては生理のときの症状より強いこともあります。
次に挙げる不全流産と完全流産のどちらになるかによって、症状や対処法が変わってきます。
不全流産
流産が進行したあと、胎児(胎芽)や胎盤などが完全に排出されず子宮内に一部が残っている状態で、出血や下腹部痛の症状が続いていることがほとんどです。
そのまま胎児(胎芽)や胎盤が自然に排出されれば、手術は必要ありません。排出されない場合は、子宮の収縮を促す薬や、手術が必要となることもあります。
完全流産
流産が進行した結果、胎児(胎芽)や胎盤などが、子宮の外に全て流れ出た状態で、出血や下腹部痛の症状は徐々におさまっていきます。
手術は不要ですが、子宮が元の大きさに戻ろうとする「子宮復古」の過程で、子宮収縮剤や鎮痛剤、止血剤などが処方されることもあります。
化学流産(生化学妊娠)
妊娠検査薬が陽性反応を示したものの、超音波検査で妊娠を確認する前に流産した状態です。
月経のような出血がみられます。妊娠検査薬を使用しなければ、妊娠と気づかず月経と捉えて過ごしてしまうことも多いです。
手術は特に必要なく、経過観察となります。
なお、流産の一歩手前の状態のことを「切迫流産」といいます(※1)。ほかの流産は妊娠を継続することはできませんが、切迫流産は妊娠を継続できる可能性があります。
妊娠初期の流産は予防できる?
妊娠初期の流産は、胎児の染色体異常原因であることがほとんどなので、完全に防ぐことは難しいです。
しかし、流産のリスクを上げないためにできることはあります。これから妊娠を希望する人や妊娠初期の妊婦さんは、以下のようなことに気をつけましょう。
タバコを控える
妊娠中に喫煙をすると、タバコを吸わない女性と比べて、流産する確率が高くなることが指摘されています(※2,6)。
また、早産や低出生体重児・胎児発育遅延のリスクを高めたり、子宮外妊娠や前置胎盤などを引き起こしたりすることもあります(※7)。
生まれてからも、注意欠陥・多動性障害(ADHD)を発症する確率が高まることも報告されています(※8)。
妊娠を希望する女性は、妊活を始める時点で禁煙し、受動喫煙にも注意するようにしてくださいね。
アルコールを控える
妊娠中に飲酒をすると、流産をはじめ、死産や赤ちゃんの先天異常が起こる頻度が高まります(※2)。
妊婦さんが摂取したアルコールは胎盤を通じてお腹の中の赤ちゃんの体に入り、発育を妨げると考えられています。
妊娠の可能性が少しでもある場合は禁酒をしましょう。
体を冷やさない、ストレスを溜めない、規則正しい生活をするといったことにも気をつけましょう。
妊娠初期の流産について正しい情報を知っておこう
安定期に入る頃までは、どうしても流産が気になってしまうものです。しかし、妊娠初期の流産はある程度の確率で起るため予防することは難しいといった正しい情報を知って、心配し過ぎないことも大切です。
無理をせずストレスを溜めないことを心がけながら、過ごすようにしてくださいね。
監修医師:産婦人科医 間瀬徳光
2005年 山梨医科大学(現 山梨大学)医学部卒。板橋中央総合病院、沖縄県立中部病院などを経て、現在は医療法人工藤医院院長。産婦人科専門医、周産期専門医として、産科・婦人科のいずれも幅広く診療を行っている。IBCLC(国際認定ラクテーション・コンサルタント)として、母乳育児のサポートにも力を注いでいる。
※1 日本産科婦人科学会「流産・切迫流産」
※2 メジカルビュー社『プリンシプル 産科婦人科学 2産科編 第3版』p.293-295,763
※3 日本生殖医学会「一般のみなさまへ:Q23.女性の加齢は流産にどんな影響を与えるのですか?」
※4 株式会社メディックメディア『病気がみえるvol.10 産科 第4版』p.90-91
※5 日本産婦人科医会「1.早期流産の処置方法の選択」
※6 日本産科婦人科学会 「No.99流産のすべて II.流産の原因 1.総論」
※7 厚生労働省 e-ヘルスネット「喫煙の妊娠出産などへの影響」
※8 ADHDの診断・治療指針に関する研究会「注意欠如・多動症 -ADHD- の診断・治療ガイドライン 第5版」