お腹の中に赤ちゃんがいるので、妊娠中の体重増加は自然なことです。しかし、体重が増加しすぎるのは、ママにとっても赤ちゃんにとっても良いことではありません。
そこで今回は、妊婦さんの理想的な体重増加の目安や、おすすめの体重管理の方法などについてご説明します。
妊婦さんの体重って、どんな内訳なの?
妊娠40週時点での赤ちゃんの体重は約2.5~4.0kgが目安ですが、妊婦さんの体重は胎盤や羊水、血液、子宮・乳房の重さが加わり、これ以上に増加します(※1)。
個人差が大きいですが、妊娠40週には以下のような重さになるとされています(※2)。
● 血液や水分:約3kg
● 胎盤:約0.5kg
● 羊水:約0.5kg
● 子宮:約1kg
● 乳腺:約0.5kg
● 脂肪:約4kg弱 ※特に個人差が大きい
妊娠中の理想的な体重増加の目安は?
妊娠中の体重増加の目安は上表のとおりになります(※3)。体重増加の目安は妊娠前のBMI値によって異なるため、まず妊娠前の体重からBMI値を算出してみましょう。
妊娠前に標準的な体格だった人であれば、10〜13kgくらいまでの体重増加が理想的とされています。
一方、BMI値が肥満レベルに相当する人は、妊娠糖尿病などのリスクを抑えるため過度な体重増加に気をつけましょう。
妊娠中、体重をうまくコントロールする方法は?
妊娠中の体重増加は、先ほどご紹介した目安の範囲を超えていなければ問題ありません。
適切な体重増加のためには、以下のことを意識してみましょう。
食事の栄養バランスを見直す
まずは食生活を振り返ってみましょう。以下のポイントを意識して、塩分・糖分・脂質を抑え、バランスの良い食事に整えてみてくださいね。
⚫︎「主食」を中心に、エネルギーをしっかりと摂る
⚫︎「副菜」で、不足しがちなビタミン・ミネラルを摂る
⚫︎「主菜」を組み合わせてたんぱく質を十分に摂る
⚫︎ 乳製品、緑黄色野菜、豆類、小魚などでカルシウムを摂る
炭水化物の量を減らしてしまうという妊婦さんもいますが、1日3回主食を中心にしっかり摂りましょう。
さまざまな食品や栄養素をまんべんなく摂るように心がけてくださいね。
妊娠初期の妊婦さんが、1日3食で1回の食事に摂るべき栄養バランスの一例は以下の通りです(※3)。
体調が落ち着いているときは、いろいろな料理を組み合わせて必要量を摂れるように心がけましょう。
⚫︎ 主食:ごはん普通盛り1杯 or 食パン1〜2枚 or おにぎり1〜2個・うどんそば1人前
⚫︎ 副菜:サラダ or 野菜炒め or 煮物
⚫︎ 主菜:魚 or 肉料理1皿
牛乳・乳製品は、1日に牛乳コップ1杯またはヨーグルト2パック。果物は1日1〜2個を目処にして、食べ過ぎには注意してくださいね。
妊娠中期は上記に加え、1日の食事のなかで以下の料理を追加しましょう。
⚫︎ 副菜:ほうれん草や小松菜1品追加
⚫︎ 主菜:たんぱく質のとれる納豆や卵を1品追加
⚫︎ 果物:1つ追加
妊娠後期はさらに、おにぎり1個とヨーグルト1個を追加してみましょう。
食事の量と回数を変える
すぐにお腹が空いてしまうという妊婦さんは、少量ずつ、回数を増やして食事を摂るのも一つの手です。
3回食を5回食に変え、一回に食べる量を減らすことで、急激な血糖値の上昇を抑えることもできます。
間食は質を重視する
体重が気になっていても、どうしても甘いものが食べたくなるときもありますよね。
そんなときは、食物繊維を多く含む寒天ゼリーなど、低カロリーだけれど食べ応えがあるものを選ぶようにしましょう。
シリアル入りのクッキーやおからなどを使ったお菓子を手作りするのもいいですね。
お菓子の代わりに栄養満点な旬のフルーツを食べるのもおすすめですよ。
軽い運動をする
安定期に入って医師から許可をもらったら、マタニティヨガやスイミングなどの運動を取り入れてみるのもおすすめです。
近所をお散歩するだけの軽めのウォーキングだけでも体重管理に効果的です。気分転換にもつながるので、体調が落ち着いているときは積極的に取り入れてみてくださいね。
こまめに体重計に乗る
妊娠中は週に1回は体重計に乗り、自分の体重の増え方を把握しておくのがおすすめです。
アプリや手帳に日々記録すると体重の変化への意識を高めてくれて、急激な体重増加にも気付きやすいですよ。
妊娠中に体重が増加しすぎるとどんな影響がある?
妊娠中に体重が増えすぎてしまうと、主に以下の3つのリスクがあります。
妊娠高血圧症候群
「妊娠高血圧症候群」は、妊娠中に高血圧を発症した状態になります。妊娠中期以降に症状が出やすく、20人に1人の妊婦さんが発症するという報告があります(※4)。
妊娠高血圧症候群になると、赤ちゃんの発育が悪くなったり、生まれる前に胎盤が剥がれてしまう胎盤早期剥離などのおそれがあります。
妊娠糖尿病
妊娠糖尿病は、一般的な糖尿病までは至らないものの、妊娠中のホルモンの変化によって、血糖をコントロールするインスリンの働きが弱まってしまい血糖値が高くなりすぎてしまいます。
約12%の妊婦さんが発症し、肥満のほかにも糖尿病にかかっている家族がいる人や、35歳以上の高齢出産の人は、妊娠糖尿病にかかるリスクが高まります(※5)。
妊娠糖尿病によって、流産・早産リスクが上がるほか、胎児機能不全や胎児死亡の危険性もあります。また、生まれた赤ちゃんが将来的に肥満や糖尿病、高血圧になりやすくなります。
難産
過度な体重増加によって産道に脂肪がついてしまうと、難産につながることも(※2)。分娩時間が長くなったり、出血量が多くなったりするおそれがあります。
妊娠中に体重が増えないとどうなるの?
もともと痩せ型の人やつわりの症状がひどかった人は、体重が増えていないと心配かもしれません。
体重の増加具合が緩やかであっても、妊婦健診で「赤ちゃんは順調に育っていますよ」と医師から言われている限りは、あまり心配する必要はありません。
ただし、妊娠中の体重増加が不足していると、早産や低出生体重児になる可能性が高くなります(※3)。
産まれたあとの健康や命に関わる影響が高くなるほか、成人後の循環器疾患や糖尿病発症のリスクとなりやすいことがわかっています。
赤ちゃんの成長のためにも適切な体重増加が必要なので、医師と相談しながら少しずつ体重を増やしていくことを目指しましょう。
妊婦さんの体に合わせた体重管理をしよう
妊娠中の体重について気にしすぎてストレスを溜めないようにしてくださいね。まずは体調を最優先にして、落ち着いているときは健康的な食生活と運動を心がけましょう。
監修医師:産婦人科医 藤東 淳也
日本産科婦人科学会専門医、婦人科腫瘍専門医、細胞診専門医、がん治療認定医、日本がん治療認定医機構暫定教育医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医で、現在は藤東クリニック院長。専門知識を活かして女性の快適ライフをサポートします。
※1 日本超音波医学会「超音波胎児計測の標準化と日本人の基準値」
※2 メジカルビュー社『プリンシプル産科婦人科学 産科編 第3版』p.94,259
※3 厚生労働省「妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針~妊娠前から、健康なからだづくり」
※4 日本産科婦人科学会「妊娠高血圧症候群」
※5 日本内分泌学会「妊娠糖尿病」