妊娠を望んでいる女性や妊娠初期の妊婦さんは、1日に食事から240μg+サプリメントなどの強化食品から400μg、妊娠中期〜後期は、食事から480μgの葉酸を摂ることが、厚生労働省から推奨されています(※1,2)。胎児の正常な発育や健康な母体のためにも、栄養バランスの良い食事を取る習慣をつけておきましょう。
今回は、葉酸が多い食品・食べ物を20品目セレクトしました。葉酸を効率よく摂ることができる食べ物を毎日の食事に積極的に取り入れてくださいね。
そもそも葉酸とは?
葉酸は、水溶性ビタミンの仲間で、ビタミンB群の一つです。(※3)。
妊娠を望んでいる女性や妊娠初期の妊婦さんが推奨量の葉酸を摂取することにより、胎児の神経管閉鎖障害の発症リスクを低減することができるといわれています(※2)。
先にも述べたように、妊娠前から妊娠初期は、吸収率の高い合成葉酸(プテロイルモノグルタミン酸)のサプリメントなどを活用することが推奨されていますが、サプリメントだけではなく、食事からもしっかり摂ることが大切です。
次からは、食品成分表をもとに、可食部100gあたりの葉酸含有量が高い食べ物をご紹介していきます(※4)。
葉酸を多く含む野菜
葉酸を多く含む食材というと、野菜を思い浮かべる人も多いですよね。さまざまな野菜に葉酸が含まれますが、ここでは特におすすめの5品をご紹介します。
1. モロヘイヤ
モロヘイヤはスタミナ野菜としてもおなじみですが、葉酸も豊富です。生で100gあたり250μg、茹でた場合は67μgの葉酸を含んでいます(※4)。
2. 枝豆
枝豆は、茹でた状態でも100g中に260μgの葉酸を含んでいます(※4)。冷凍の枝豆をストックしておくと、さっと食べられて便利ですよ。
3. ほうれん草
ほうれん草は、葉酸を摂取できる野菜として代表的な食材で、生で100gあたり210μg、茹でても100gあたり110μgの葉酸を含んでいます。鉄分やβカロテンも豊富です(※4)。
4. ブロッコリー(花序)
ブロッコリーは、茹でても100gあたり120μgの葉酸が含まれています。焼いた場合は100gあたり450μgもの葉酸を含んでいます(※4)。ビタミンCも含んでいるので、妊娠中の風邪予防にも積極的に摂りたい野菜のひとつです。
5. かぼちゃ
茹でたかぼちゃには100gあたり75μgの葉酸が含まれていています(※4)。ビタミンEを含み美容にも良い食材なので、肌荒れ気味の妊婦さんにおすすめです。
葉酸を多く含む果物
果物は葉酸をはじめ、ミネラルも含んでいるので、妊娠中に積極的に摂りたい食材です。ただし糖分が多いので、食べ過ぎには注意してくださいね。
6. いちご
洗うだけで食べられて、ビタミンCも豊富ないちごには、100g中に90μgの葉酸が含まれています(※4)。さっぱりとしているので、つわりのときでも食べやすいですね。
7. みかん
温州みかんには、100gあたり22μgの葉酸が含まれています(※4)。ふさについている白いすじは食物繊維がたっぷりなので、そのまま食べてくださいね。
8. バナナ
バナナには100g中に26μgの葉酸が含まれています(※4)。つわりの症状を緩和する効果があるとされるビタミンB6も豊富に含まれているので、つわり中の妊婦さんにもおすすめです。
9. キウイ
グリーンキウイ(緑肉種)は100gあたり37μg、ゴールデンキウイ(黄肉種)は100gあたり32μgの葉酸を含んでいます(※4)。ビタミンCや食物繊維、カリウムも多く含まれているので、風邪予防やむくみ解消にぜひ取り入れてみてくださいね。
10. アボカド
アボカドは、100gあたり83μgの葉酸を含んでいます(※4)。ビタミン類やミネラル、食物繊維がたくさん含まれています。ただし脂質を多く含むので、食べすぎには注意が必要です。
手軽に食べられて葉酸を多く含む食品
ここでは、葉酸を多く含み、手軽に食べられる代表的な食品を5つご紹介します。
11. たたみいわし
たたみいわしには、100g中に300μgの葉酸が含まれています(※4)。カルシウムも豊富で、おやつ代わりに食べられますよ。
12. 煮干し(かたくちいわし)
煮干しには、100gあたり74μgの葉酸が含まれています(※4)。こちらもカルシウムを多く含み、いつでも気軽に食べることができるので、妊娠中のおやつにぴったり。出汁を取るのもいいですね。
13. 焼きのり
100g中に1900μgもの葉酸が含まれる焼きのり(※4)。のり1食分は約3gですが、それだけでも約60μgの葉酸が摂れます。海苔だけでなく、わかめや青のり、こんぶなどの海藻類には葉酸が多く含まれています。
14. 納豆
納豆は1パックで約60μg(100g中120μg)の葉酸を摂取することができます(※4)。鉄分やカルシウムも含まれるので、妊婦さんにおすすめの食品です。
15. 茎ニンニク
ニンニクの芽とも呼ばれる茎ニンニクには、生でも茹でても100gあたり120μgの葉酸が含まれています(※4)。普通のニンニクより香りが弱いので、妊娠中も食べやすいですね。
16. 卵黄
鶏卵の場合、生の卵黄は100gあたり150μg、茹でた卵黄で100gあたり140μgの葉酸を含んでいます(※4)。Mサイズの卵1個の卵黄は約20gほどなので、卵だけで多くの葉酸を摂取するのは難しいですが、卵はさまざまな料理に取り入れやすく日々の食生活で摂取しやすいですね。
その他、葉酸を多く含む食品
上記でご紹介した食品のほかに、魚介類やきのこ類にも葉酸を多く含むものがあります。
17. ほたて
動物性たんぱく質食材の中で特に葉酸が豊富なのは、ほたてです。生のほたてには、100gあたり87μgの葉酸が含まれています(※4)。
18. エリンギ
焼いたエリンギには、100g中あたり53μgの葉酸が含まれます(※4)。むくみの改善を期待できるカリウムや、便秘の予防になる食物繊維も摂取することができますよ。
19. まいたけ
茹でたまいたけには100gあたり24μg、油炒めにしたまいたけは100gあたり57μgの葉酸が含まれます(※4)。他にも、鉄や亜鉛、ビタミンB群、ビタミンD、カリウム、食物繊維といった栄養素が含まれています。カロリーが低いのもうれしいですね。
20. えのき
茹でたえのきには100gあたり30μg、油炒めにしたえのきは100gあたり47μgの葉酸が含まれます(※4)。ビタミンB1やB2、食物繊維といった栄養素も摂取することができます。
葉酸を含む食品を食べるときのポイントは?
食品中に含まれている葉酸は、天然葉酸と呼ばれます。天然葉酸は水に溶けやすく、加熱に弱いため、調理によって成分が失われてしまうことがあります(※5)。
そのため、葉酸が含まれている食べ物を食べるときは、加熱する場合はなるべく油炒めに、茹でる場合なら煮汁まで飲めるスープに、といったように調理法を工夫して、できるだけ多くの栄養素を摂取できるようにしましょう。
また食べ物に含まれる葉酸の量は、食品100gあたりの含有量として表記されることがほとんどです。食品によって1回に食べる量は違うため、100gあたりの含有量が多いからといって、たくさんの葉酸を摂取できるとは限りません。1回に食べる量を把握しながら、適切な量の葉酸を摂るようにしましょう。
葉酸は食品とサプリの両方から摂ろう
今回ご紹介したように、普段何気なく食べている食べ物にも葉酸を含むものが多くあります。さまざまな食品をバランスよく組み合わせて、上手に葉酸を摂取していきましょう。
厚生労働省が妊娠前と妊娠初期に、食事に加えて葉酸のサプリメント(合成葉酸)から摂ることを推奨している理由は、胎児の神経管閉鎖障害のリスク低減結果が認められたのは合成葉酸のみであること、また食品に含まれる天然葉酸は合成葉酸と比べて吸収率が低いことです(※1,5)。
妊婦さんをはじめ妊活中や妊娠の可能性がある人は、食べ物と同時にサプリからも葉酸を摂取することをおすすめします。
また厚生労働省は、葉酸の1日当たりの上限摂取量を1,000μg(1mg)としています(※1,5)。くれぐれも過剰摂取には注意しましょう。
監修専門家:管理栄養士 渡辺 亜里夏さん
神奈川県立保健福祉大学卒業後、予防医学に興味を持ちドラッグストアへ就職。その後独立し、現在はフリーランスの管理栄養士として特定保健指導、ダイエット指導、コラムの執筆、企業様での研修などを中心に活動。いつまでも体と心を健康に保ち、人生を輝かせられる女性のサポートがしたいという想いで、食の大切さをお伝えしています。
【参考文献】
※1 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」 pp.232-240,262
※2 厚生労働省「妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針〜妊娠前から、健康的なからだづくりを〜解説要領」
※3 新星出版社『改訂版 栄養成分の事典』pp.66-67
※4 文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)第2章(データ)」
※5 厚生労働省「神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に関する情報提供要領」