「子どもは薄着がいい」という話を聞いたことはありますか?これは根拠のあることで、保育園や幼稚園でも、風邪への免疫力をつけるなど、健康的な体づくりのために冬場でも薄着を実践しています。今回は子どもが薄着で過ごすことによる効果と、正しい薄着のポイントをご紹介します。
子どもが薄着で良い理由は?
もともと人間は「暑さ」や「寒さ」に対して対応できる力を持っていて、子どもの頃からの「暑い」「寒い」を肌で感じることで、この対応力が高まっていくといわれています。そのため、冬場でもある程度寒さを感じるようにしておくことが、健康的な体づくりには大切です。
体温調節機能が育つ
そもそも子どもは大人よりも体温が高いため、そこまで服を着込む必要がありません。
むしろ、あまり服を着込み過ぎると、汗をかいてかえって風邪をひいてしまったり、体の体温調節機能を養うことができなくなってしまいます。普段はできるだけ薄着で、外気温の変化に対応できるような体を作っていきましょう。
また、屋内でも冷暖房に頼らず、冬場の時期なら体を動かして温かくすることで、体温調節機能が養われます。
自律神経が強化される
自律神経は生命活動を維持するために必要な神経で、眠っているときの呼吸や心臓の動き、暑いと汗を掻くなどの体温調節をコントロールしています。自律神経の機能に支障をきたすと、子どもも大人と同様に、貧血、頭痛、冷え性、低体温、下痢や便秘などの体調不良が起こりやすくなります。
薄着で過ごすことにより、皮膚は暑さや寒さを敏感に感じやすくなります。血管の収縮・拡張を繰り返し、体の体温調節機能が養われると、自律神経のバランスが発達していきます。
逆に言えば、普段から厚着をしていると、皮膚の感覚が鈍くなり、本来なら寒いときに体を温めようと働いてくれる自律神経の働きも鈍くなってしまうのです。
動きやすい
寒さ対策のために厚着をするのも一つの方法ですが、薄着を心がけて動きやすい服装にして、たくさん運動させてあげることも寒さ対策になります。
子どもは大人よりも基礎代謝が大きいため、少しの運動でも体が温まりやすいといえます。自分自身で動いて温まる、ということを教えてあげてくださいね。
子どもが薄着だと風邪への免疫力がつく?
風邪を引く原因は、寒さではなくウイルス。そして、ウイルスを撃退するのは人間の「免疫力」です。薄着で自律神経を鍛えることにより、免疫力が高まるため、風邪を引きにくい体になります。
「風邪を引かないように、子どもには厚着をさせたほうがいい」と思うかもしれません。しかし、厚着することで体温を外に追い出そうとして、体の放熱反射(体熱を放出する反射)が強くなってしまい、逆に体の芯が冷えてしまいます。
その結果、免疫力が低下し風邪を引きやすくなってしまうのです。
正しい子どもの薄着は?注意点はあるの?
子どもを薄着にしたほうがいいとはわかっても、急に薄着にしすぎて風邪を引かないかも心配です。子どもを薄着にするときには、次のようなポイントに注意しましょう。
肌着はちゃんと着せる
子どもに着せる服を減らすときにも、肌着はちゃんと着せてあげるようにしましょう。肌着を着ないと必要な体温が逃げてしまい、冷えを感じてしまいます。肌着を着てお腹や背中を覆い、しっかり体を保温してくださいね。
また、背中には内臓につながるつぼがたくさんありますので、背中の大きく空いたシャツは着せないようにしましょう。
服の枚数は徐々に減らす
子どもは薄着のほうがいいとはいえ、これまで厚着だったのに急にシャツ1枚になるなどすると、それこそ風邪を引いてしまいます。コツは寒くなる前の秋くらいから、厚着になりすぎないように注意してあげることです。
もしすでに冬に突入しているときには、1枚だけ服を減らしたり、薄い服に変えたりして、様子を見ながら薄着にしてあげるといいでしょう。
首・手首・足首は重点的に暖かく
冬場の時期に外出するときは、神経が集中し、寒さを感じやすい首、手首、足首の「首」のつくところを温めましょう。具体的には、マフラーや手袋、レッグウォーマーなどで体の冷え過ぎを防ぐことです。
また、厚手の服に頼るよりも、薄手の服を重ねて着るほうが空気の層ができるため温かく、後で脱ぎ着して体温を調整できるのでおすすめです。
子どもの冷えに気づくポイントは?
言葉が話せるくらいに成長した子どもであれば、本人が寒いと言っていることに対応してあげればいいのですが、まだ言葉が不自由な時期だと、どう気づいてあげたら良いか迷いますよね。
特に冬場の赤ちゃんだと手足が冷たくて心配なのに、本人はご機嫌なこともあります。
子どもの冷えに気づくポイントとしては、顔色の変化がないことや、お腹や背中に触ってみることです。お腹や背中が冷たいと、赤ちゃんが寒がっているサインです。薄着にしすぎたかなと思ったら、お腹と背中の温かさをチェックしてあげてくださいね。
子どもは薄着で健康な体作りを
近年、自律神経の乱れから、体調不良を感じる子どもが増加しているといわれています。子どもの自律神経はまだ発達の途中段階なので、今回ご紹介した「薄着」を取り入れ、強い体作りを目指しましょう。
また、冬はつい自宅にこもりがちになってしまいますが、「外遊び」をすることで、より体の体温調整機能も養われ、自律神経の発達を促してくれます。無理のない薄着で、外に出て元気に遊ばせてあげてくださいね。
監修医師:小児科 武井 智昭
日本小児科学会専門医。2002年、慶応義塾大学医学部卒。神奈川県内の病院・クリニックで小児科医としての経験を積み、現在は神奈川県大和市の高座渋谷つばさクリニックに院長として勤務。内科・小児科・アレルギー科を担当しています。感染症・アレルギー疾患、呼吸器疾患、予防医学などを得意とし、0歳から100歳まで「1世紀を診療する医師」として診療を行っています。