母体血清マーカーテストとは?検査方法や時期、費用は?診断確率は?

出生前検査(出生前診断)について調べていると、「母体血清マーカーテスト」という言葉を目にすることも多いかもしれません。ほかの出生前検査とは何が違うのか、いつからいつまで受けられるのかなど気になりますよね。

今回は母体血清マーカーテストについて、検査の目的や方法、受けられる時期、費用などをご説明します。

母体血清マーカーテストとは?

採血 血液検査

「母体血清マーカーテスト」とは出生前検査のひとつで、採血だけで検査することができます(※1)。

血液中の物質のバランスと、妊婦さんの年齢、体重、妊娠週数などから、お腹の赤ちゃんに「数種類の病気がある確率」がわかります。

調べる物質の数に応じて、クワトロ検査やトリプル検査などと呼ばれることもあります。

出生前検査には母体血清マーカーテストの他にもいくつかあり、それぞれ「非確定的検査」と「確定的検査」にわけられます(※2)。

母体血清マーカーテストは非確定的検査で、結果はあくまでも確率になります。

確定診断をするためには、「羊水検査」や「絨毛検査」といった確定的検査を受ける必要があります。

母体血清マーカーテストで可能性がわかる病気は?

母体血清マーカーテストによって可能性を調べられる病気は、以下の3つです(※1)。

● ダウン症
● 18トリソミー(エドワーズ症候群)
● 開放性神経管奇形(二分脊椎症、無脳症)

ダウン症と18トリソミーは、染色体異常が原因となる病気です。

母体血清マーカーテストを受けられる時期は?費用はどれくらい?

母体血清マーカーテストは、妊娠15~18週に受けることができます(※1)。採血後、結果が出るまでには10日〜2週間ほどかかります。

検査費用は病院によって異なりますが、2~3万円程度で、健康保険は適用されません。

母体血清マーカーテストは、どこの産婦人科でも受けられるわけではありません。

妊婦健診で通っている産婦人科で実施していない場合は、紹介してもらうのが一般的です。

他の非確定検査との違いは?

母体血清マーカーテストと同じように採血によって調べる非確定的検査には、「NIPT(非侵襲性出生前遺伝学的検査)」や「コンバインド検査」があります(※2)。

NIPTは非確定検査の中では最も精度が高く、妊娠9〜10週以降に調べられることが特徴ですが、検査費用として10万〜20万円かかることが多く、他の検査と比べて高額です。

コンバインド検査は、超音波検査と血液検査を組み合わせて行われます。

妊娠11〜13週に検査することができ、費用は5千〜5万円程度と検査する場所によって幅があります。検査精度は母体血清マーカー検査よりやや高くなります。

NIPTやコンバインド検査では、ダウン症と18トリソミーの他に、同じく染色体異常の病気である「13トリソミー」の可能性も調べられます。

ただし、どちらも母体血清マーカーテストで調べられる「開放性神経管奇形」については調べることはできません。

母体血清マーカーテストの判定の出方は?

母体血清マーカーテストの結果は、3つの病気それぞれに対して、以下の2つの判定方法で示されます(※1)。

分数

「1/256」「1/8」といったように分数によって判定が表示されます。

例えば1/256の場合、「1/256という結果の人が256人いたら、そのうち1人にその病気があり、255人にはない」という意味になります。最大の数値は1/2で、「1」や「0」といった結果が出ることはありません。

スクリーニング陽性・スクリーニング陰性

「スクリーニング陽性」または「スクリーニング陰性」どちらかの判定が出ます。

「スクリーニング陽性」と判定されるのは、病気にかかっている可能性を示した「カットオフ値」と呼ばれる基準値を上回った場合です。

スクリーニング陽性だからといって、必ずしも病気であるわけではありません。

海外のデータでは、スクリーニング陽性だった妊婦さんが実際にその病気だった割合は、20代後半で1.0%、35歳で3.2%、40歳で9.2%でした(※1)。

一方、スクリーニング陰性だった妊婦さんが実際にその病気がなかった割合は非常に高く、20代後半で99.98%、35歳で99.95%、40歳で99.83%でした(※1)。

そのため、結果がスクリーニング陽性だった場合は確実な結果を得るために、羊水検査に進むケースが多いです。

羊水検査に適している時期は妊娠16〜18週頃のため、受ける場合は早めの検査をする必要があります。

母体血清マーカーテストを受ける際に気をつけたいことは?

母体血清マーカーテストは採血だけで検査ができるため、体への負担やリスクが少なく、気軽に受けられるように感じる人もいるかもしれません。

しかし、「検査結果の解釈が複雑である」「陽性的中率が低い」といったことをしっかり理解し、もしスクリーニング陽性の判定が出た場合に羊水検査を受けるのかなどについて、事前にパートナーや家族とでよく話し合うことが大切です。

また、母体血清マーカーテストによって可能性が推定できる病気は、生まれつきの病気のごく一部だけであるということを認識しておく必要もあります。

こういった理由を含め、日本産科婦人科学会は検査を受ける前後に、専門家による遺伝カウンセリングを受けることを推奨しています(※3)。

母体血清マーカーテストを検討するならしっかり情報収集を

母体血清マーカーテストをはじめ、出生前検査を検討している場合は、検査によって受けられる病院や時期、調べられる病気、費用などが異なるため、早めに情報を集めておきましょう。

遺伝カウンセリングを受けて疑問や不安な点を聞いたり、実際に検査を受けた妊婦さんの体験談を読んだりして、パートナーや家族と共に、納得のいくかたちで検査を受けるかどうか決められるといいですね。

監修医師:産婦人科医 間瀬徳光

産婦人科医 間瀬徳光先生
2005年 山梨医科大学(現 山梨大学)医学部卒。板橋中央総合病院、沖縄県立中部病院などを経て、現在は医療法人工藤医院院長。産婦人科専門医、周産期専門医として、産科・婦人科のいずれも幅広く診療を行っている。IBCLC(国際認定ラクテーション・コンサルタント)として、母乳育児のサポートにも力を注いでいる。

※1 出生前検査認証制度等運営委員会 一緒に考えよう、お腹の赤ちゃんの検査「母体血清マーカー検査」
※2 出生前検査認証制度等運営委員会 一緒に考えよう、お腹の赤ちゃんの検査「お腹の赤ちゃんの検査の種類」
※3 日本産科婦人科学会『産婦人科診療ガイドライン産科編2020』p.94

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