子どもの自家中毒ってどんな病気?症状や検査方法は?

子どもに多い「自家中毒」という病気を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。突然何度も吐いてしまうのが主な症状で、体が小さいうちは予防が重要です。

そこで今回は、自家中毒について、原因や症状、検査、治療法、予防法などをご紹介します。

自家中毒(周期性嘔吐症/アセトン血性嘔吐症)とは?

自家中毒とは、元気だった子どもが急に激しく嘔吐して、数時間から数日吐き続け、その後自然に治まる病気です。

自家中毒は、体内で脂肪を分解して作られるケトン体という物質が関係しています。このケトン体が血液中で増加しすぎると、一種の中毒症状を起こして吐き気をもよおしてしまうのです。

糖分を体内で作るといった代謝機能が未熟な子どもが発症しやすく、2~10歳くらいの間で見られます(※1)。

このように、何度も嘔吐を繰り返すことから「周期性嘔吐症」、その仕組みから「アセトン血性嘔吐症」とも呼ばれます。

自家中毒の原因は?

自家中毒は、肉体的な疲労・精神的なストレスが主な原因とされています。

空腹状態が長く続いたり、感染症で発熱したりしたときに起きやすくなります(※2)。

外出するなどで、あらかじめ肉体的な疲労やストレスが起こるとわかっているときは、こまめに糖分や水分を補給してくださいね。

自家中毒の症状は?

自家中毒になると、基本的に嘔吐を繰り返します。数日間嘔吐が続いて、その後治まったと思ったらまた嘔吐を繰り返すというのが特徴的な症状です。嘔吐物は甘酸っぱい匂いがあります。

飢餓状態になり糖分の不足すると、脂肪分が分解されてケトン体が産生されることで、血液が酸性に傾き、匂いが変化するといわれています。

重症化してしまうと、胆汁や血液が混ざった茶色の嘔吐に発展したり、元気がない感じやしびれなどが見られて、脱水症状・低血糖症状を引き起こすこともあります(※1)。

嘔吐の他には、腹痛、頭痛、軽い意識障害が現れることもあります(※2)。

自家中毒は病院に行ったほうがいいの?

子どもの嘔吐を見ると、食中毒やお腹の病気なのかと心配になりますが、一時的であれば様子を見てください。

しかし、自家中毒では、繰り返し嘔吐することで脱水症状になりやすくなります。さらに、血糖が低下する傾向があるため、糖分の補給が重要と考えられています。

嘔吐を繰り返す場合は、急いで病院を受診してください。

自家中毒の検査・治療法は?

自家中毒が疑われた場合、血液検査や尿検査などを受け、しばらく様子を見たあとに診断されます(※1)。

ただし、自家中毒には特効薬はなく、病院でも対症療法が基本です。嘔吐のしすぎで脱水症状を起こさないように、糖分も含めた点滴を行うなどで対処されます。

年齢とともに自然に治ることがほとんどなので過度な心配はいりませんよ。

自家中毒の対処法は?ホームケアはどうする?

自家中毒と診断されたときには、家庭でのホームケアも大切です。

安静にしてストレスの原因を取り除く

自家中毒のきっかけになるのは、風邪や疲労で体力を失ったとき、過度なストレスを感じているときが多いとされています。食事の間隔が伸びた場合も注意が必要です。

自家中毒のときは嘔吐が続いて苦しい状態なので、まずは横になって安静に過ごすようにしましょう。

嘔吐が治ったら、ママやパパとの時間をしっかり作り、子どもの話を聞いてあげる、調子が良ければ一緒に散歩に出かけるなどして、ストレス発散をサポートしてあげてくださいね。

水分と糖分をとる

自家中毒で特に大切なのは水分補給です。脱水症状を起こさないように、こまめに少量ずつ水分を飲ませてあげましょう。

糖分の補給も大切なため、スポーツドリンクやジュースなどを与えるといいでしょう。

ぐったりして口から水分が摂取できず、嘔吐がまだ続くようなら、飴をなめさせてあげてくださいね。

脂っこい食べ物を避ける

自家中毒の原因となるケトン体は、体内の糖が足りないときに脂っこい食べ物を食べるとさらに増加して、自家中毒の症状を悪化させることになります。

しばらくは脂っこいものや乳脂肪分の多い食べ物は控え、消化の良いおかゆやうどんから、栄養を摂っていくことがおすすめです。

また、家庭でのケアのほかに、子どもの通う保育園や幼稚園、小学校には、自家中毒を起こしやすいと伝えておくと安心ですね。

自家中毒の予防法は?

子どもが自家中毒を起こすのを予防するには、次のような点に注意しましょう。

夕食をちゃんと食べる

空腹によって糖が足りなくなると、体内で蓄えていた脂肪が分解されてケトン体が増えます。

夕食を食べずに寝てしまうと、寝ている間にケトン体が増加して翌朝自家中毒を発症する、ということもあります。

保育園や幼稚園から疲れて帰ってきて眠そうにしているときも、できれば糖質の多いご飯だけでも食べさせてあげましょう。

ストレス発散

自家中毒の予防に一番なのはストレスを発散させてあげることです。

環境が変わった、きょうだいがいてなかなかママやパパと話せないなど、子どもは大人が想像しているよりもストレスを溜め込んでいることがあります。

特に環境が変わったときに、気だるそうにしていたり、普段とちょっと違う様子が見られたりしたら、子どもと接する時間を増やしてあげてくださいね。

生活リズムを整える

自家中毒の予防には、生活リズムを整えてあげることが大切です。早寝早起きをする、休日はしっかり休ませるなど、疲れを溜めない生活を心がけましょう。

自家中毒の症状があれば、まず病院へ

突然子どもが吐き始めても、自家中毒かどうかは素人では判断できません。赤ちゃんや子どもが急に吐いて治まる気配がないような場合は、一度小児科で検査を受けてみてくださいね。

自家中毒と診断された場合は、子どもの疲労やストレスに気を配りながら、中毒症状が現れないように注意してあげましょう。

監修医師:小児科 武井 智昭

日本小児科学会専門医 武井 智昭先生
日本小児科学会専門医。2002年、慶応義塾大学医学部卒。神奈川県内の病院・クリニックで小児科医としての経験を積み、現在は神奈川県大和市の高座渋谷つばさクリニックに院長として勤務。内科・小児科・アレルギー科を担当しています。感染症・アレルギー疾患、呼吸器疾患、予防医学などを得意とし、0歳から100歳まで「1世紀を診療する医師」として診療を行っています。


【参考文献】
※1 南山堂『開業医の外来小児科学』p.299-300
※2 今日の臨床サポート「周期性嘔吐症(アセトン血性嘔吐症)」

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