赤ちゃんのお尻や背中にある蒙古斑(もうこはん)を見ると、赤ちゃんならではの特徴だなと感じるのではないでしょうか。同時に、「いつごろ消えるのだろう?」「大きくなっても残っていたらどうしよう」と気になることもあるかもしれません。
今回は、蒙古斑とは何か、いつごろ消えるものなのか、腕や足、顔などに見られる青いあざも蒙古斑なのかなどをご紹介します。
蒙古斑とは?どうしてできるの?
蒙古斑とは、主に赤ちゃんのお尻の仙骨付近にできる青いあざのことです。
シミのように平らで境界線がぼんやりとしているのが特徴で、生後1週間から1ヶ月頃までに日本人の赤ちゃんのほぼ100%にみられます(※1)。
蒙古斑ができる仕組みには、「メラノサイト」という色素細胞が関係しています。
メラノサイトが皮膚の深い部分に集まると、青あざができます。蒙古斑は、赤ちゃんがママのお腹の中にいるときにお尻や背中にできた真皮メラノサイトが残ったものだと考えられています(※1)。
蒙古斑はお尻以外にもできる?背中、腕、足、顔にも?
蒙古斑というと、お尻付近にできるイメージが強いかもしれませんが、まれに腕や足、お腹、胸などにできることもあり、「異所性蒙古斑」と呼ばれます(※1,2)。異所性蒙古斑は、一般的な蒙古斑に比べて色が濃く、消えにくい傾向にあります。
また、思春期以降の大人になって頬や目の周りを中心とした顔の片側にできた青あざは「太田母斑」、肩から肩甲骨にかけてできた青あざは「伊藤母斑」と呼ばれます(※1,2)。
蒙古斑はいつ消える?
蒙古斑は、2歳頃までに色味が強くなっていきますが、その後は少しずつ色が薄くなっていき、10歳を迎える頃には多くが消失します(※1,2)。
ただし、約3〜4%は成人になっても蒙古斑が消えない「持続性蒙古斑」となることがあります(※3)。
蒙古斑で病院へ行くべき?
蒙古斑は体に悪影響を与えるものではなく、ほとんどが自然に消えるので、基本的に特別な治療は必要ありません。
ただし、大きくなってもなかなか消えず美容面を気にする場合には、レーザー治療を検討する目的で皮膚科に相談するのもひとつの方法です。
なお、蒙古斑とよく間違えられるものに、「青色母斑」があります(※2)。
お尻や背中以外の部位にも現れ、通常のほくろより青みが強く、皮膚が小さく盛り上がり、直径1cm以下の大きさです。
大きめの青色母斑は悪性化する可能性があるので、お尻や背中以外の部位に青いアザが見られるときは、念のため医師に診てもらうようにしましょう。
蒙古斑の治療法は?
蒙古斑の一般的な治療法は、レーザー治療です。レーザー治療では、蒙古斑の部分にレーザーを照射してメラノサイトを破壊し、青あざを消失させます(※3)。
基本的には大きな副作用はなく効果が期待できますが、あざを完全に消せるかどうかは人によって異なり、レーザー治療をしても色素が残ってしまうことがあります。
年齢が低いほど照射面積が小さくて効果が高い、治療回数が少なくて済む、といった理由もあり、最近は乳幼児期にレーザー治療をすすめられることも多いです(※3)。
その一方で、低月齢の子どもにはレーザー治療がストレスになったり、動いてうまく照射ができなかったりする可能性もあります。
特に、将来的に持続性蒙古斑や異所性蒙古斑として残る確率が高いと診断された場合や、蒙古斑が目立つ場所にある場合は、医師と相談して早めに治療を検討してもよいでしょう。
蒙古斑には落ち着いて対処を
赤ちゃんの蒙古斑を見て、「本当に消えるのかな」と心配になることもあるかもしれません。お尻や背中あたりにできる蒙古斑は、10歳頃までには消えることがほとんどなので、それまでは見守ってあげましょう。
直径1cm以下の盛り上がった青いあざがみられる場合は青色母斑の可能性があるので、念のため医師に診てもらってくださいね。
監修医師:小児科 武井 智昭
日本小児科学会専門医。2002年、慶応義塾大学医学部卒。神奈川県内の病院・クリニックで小児科医としての経験を積み、現在は神奈川県大和市の高座渋谷つばさクリニックに院長として勤務。内科・小児科・アレルギー科を担当しています。感染症・アレルギー疾患、呼吸器疾患、予防医学などを得意とし、0歳から100歳まで「1世紀を診療する医師」として診療を行っています。
※1 日本形成外科学会「太田母斑・異所性蒙古斑(青あざ)」
※2 日本皮膚科学会「皮膚科Q&A アザとホクロ Q3青アザにはどのようなものがあるのですか?」
※3 日本形成外科学会「形成外科診療ガイドライン 1 皮膚疾患」pp.118-120