妊娠初期は、体にさまざまな変化が起きやすい時期です。特に38度以上の高熱が出ると、自分自身のつらさと同時に「お腹の赤ちゃんは大丈夫かな?」と心配になりますよね。
そこで今回は、妊娠初期に38度以上の高熱が出たときの赤ちゃんへの影響や受診の目安、対処法などをご紹介します。
妊娠初期に38度以上の高熱…赤ちゃんへの影響は?
妊娠初期に風邪を引いて熱が出ることもありますが、微熱や鼻水、咳などの軽い症状の場合、水分補給を十分に行い、安静にして数日で治るようであれば大きな問題はありません。
しかし38度以上の高熱が続くときは、何らかの感染症や病気の可能性を疑ったほうがいいでしょう。以下に、妊娠中の高熱の原因として考えられる病気と赤ちゃんへの影響をまとめました。
インフルエンザ(※1)
インフルエンザの場合、妊婦さんが感染すると肺炎などの合併症を引き起こすリスクが高くなり、妊娠週数が進むにつれて重症化しやすいといわれています。
赤ちゃんへの影響は少ないものの、重症化すると早産などにつながるおそれもあります。
新型コロナウイルス(※2)
新型コロナウイルスに感染すると高熱が出ることがありますが、妊娠初期での赤ちゃんへの感染や先天異常、流産などのおそれは低いといわれています。
ただし、妊娠中は重症化するリスクが高く、中期・後期に感染した場合は早産につながる可能性が高いことが報告されています。
風疹(※3)
風疹とは、風疹ウイルスに感染することで発症する感染症で、発熱、発疹、リンパ節の腫れなどが主な症状ですが、高熱が出ることもあります。
妊婦さんが風疹にかかると、お腹の赤ちゃんが風疹ウイルスに感染し、目や耳、心臓などの重い病気を引き起こすおそれがあります。
風疹の抗体の有無は、妊娠初期の妊婦健診でチェックしてもらえますが、もし抗体がなかった場合、妊娠中にワクチンを接種することはできません。
予防のため、家族に抗体検査と予防接種を受けてもらうようにしましょう。
妊娠初期に高熱が出たときの受診の目安は?
妊娠初期に38度以上の高熱があった場合、様子をみて症状が回復しなければ、まずは風邪やインフルエンザなどの感染症を疑い、かかりつけの産婦人科に電話で連絡しましょう。
高熱の他に、我慢できないほどの腹痛や生理のときより多い出血が続く場合は、切迫流産や子宮外妊娠(異所性妊娠)の可能性があるため、症状が見られたら夜間や病院時間外であってもすぐに病院を受診してください(※4)。
妊娠初期に体調に不安がある場合は、ささいなことでも遠慮せずに病院に相談するようにしてくださいね。
妊娠初期に高熱が出たときの対処法は?
高熱が出た際は、まずはゆったりとした服装で体をあたたかくして、楽な体勢で安静にするようにしましょう。
脱水症状に注意して、しっかりと水分補給をすることも大切です。つわりで水分補給もつらい場合は、少量ずつこまめに飲んだり、口に氷を含んだりするのがおすすめです。
また、妊娠初期は赤ちゃんの重要な器官が形成される時期で、薬を服用すると発育に悪影響を与えるおそれがあります(※5)。
高熱が出ると解熱剤に頼りたくなるかもしれませんが、自己判断で薬を飲まずに、かかりつけの産婦人科や薬剤師に相談してくださいね。
監修医師:産婦人科医 藤東 淳也
日本産科婦人科学会専門医、婦人科腫瘍専門医、細胞診専門医、がん治療認定医、日本がん治療認定医機構暫定教育医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医で、現在は藤東クリニック院長。専門知識を活かして女性の快適ライフをサポートします。
※1 厚生労働省「妊娠中の人や授乳中の人へ」
※2 国立成育医療研究センター「妊婦さんの新型コロナウイルス感染症に関するFAQ」
※3 国立感染症研究所「風疹Q&A(2018年1月30日改訂)」
※4 日本産科婦人科学会「流産・切迫流産」
※5 南江堂 『エビデンスをもとに答える妊産婦・授乳婦の疑問92』p.2-4