出産前にこれだけは知ってほしい、産後ママに起こりうる体と心の変化まとめ

赤ちゃんをお腹のなかで育て、生み出すのはとても大変なことで、出産後は体や心に大きな変化が起こります。

出産前に産後の心身の状態を事前に知っておくことで、心構えができたり上手に周囲に頼れるようになったりする手助けになりますよ。

今回は、産後のママにおこりうる体の不調や心の変化について詳しくご説明します。

産後に起こる変化:出産のダメージによる体の不調

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出産はたくさんのエネルギーを使うので、どれだけお産がスムーズだったとしても体は大きなダメージを受けています。

一般的に、出産後の体が妊娠前の状態に戻るまでには約6~8週間かかるとされていて、この期間を「産褥期」と呼びます。

産褥期には、以下のような体の不調が現れることが多いです。

後陣痛:分娩後しばらく続く下腹部の痛み

後陣痛とは、産後の子宮収縮に伴う下腹部の痛みのことを指します。

出産後は子宮を妊娠前の状態に戻す「子宮復古」と呼ばれる現象が起きます(※1)。子宮復古を促すために子宮の収縮が起こり、そのときに伴う痛みが後陣痛です。

後陣痛の痛みの程度は人それぞれで、「生理痛に似た鈍い痛み」「針でチクチク刺されるような痛み」などといわれます。

後陣痛は分娩後2~3日で治まるのが一般的です(※1)。しかし痛みを感じる期間は個人差が大きく、1ヶ月ほど続くこともあります。

悪露(おろ):産後1ヶ月ほど続く分泌物の排出

悪露とは、子宮や産道が妊娠前の状態に戻るときに排出される分泌物のことです。

悪露には、血液やリンパ液、粘液、子宮内に残った卵膜の一部などが含まれています。産後2〜3日は血が混じっているので赤っぽく生理の出血によく似ていて、産後10日ほど過ぎると血液成分が減って淡黄色になります(※2)。

子宮復古で子宮が収縮することによって徐々に止血され、一般的に産後1ヶ月ほどで出なくなります。

切開縫合部分の痛み:産後1ヶ月ほど痛みが続くことも

赤ちゃんの頭の通り道を広げるために会陰切開(えいんせっかい)をした場合や、帝王切開で出産をした場合は、産後に傷口が痛みます。

退院までに痛みのピークは落ち着いてきますが、退院後しばらく痛むこともあります。

産後に起こる変化:ホルモンバランスの乱れによる体の変化

妊娠中は、妊娠を維持するために「黄体ホルモン(プロゲステロン)」と「卵胞ホルモン(エストロゲン)」がさかんに分泌されます(※1)。

産後はこれらのホルモンの分泌量が急激に減少し、代わりに母乳を作るのに欠かせない「プロラクチン」や「オキシトシン」というホルモンの分泌量が増えます(※1)。

このホルモン量の急激な変化によって、肌が敏感になりかゆみや湿疹、かさつきなどが起こったり、シミができたり、毛が抜けやすくなったりします。

特に抜け毛は「産後脱毛症」や「分娩後脱毛症」とも呼ばれ、多くのママが経験します。多くは産後6ヶ月前後でおさまりますが、個人差があり、産後1年以上続く人もいます。

産後に起こる変化:ホルモンバランスの乱れによる心の変化

産後のホルモンバランスの急激な変化は、ママの体だけでなく心にも大きな影響を及ぼし、以下のような変化が起こることがあります。

涙もろくなったり、怒りっぽくなったりする

出産後、「わけもなく涙が出る」「なんでもないことにイライラする」といった症状が現れることがあります。これは「マタニティブルーズ」といい、産後数日〜2週間にみられる、一過性の情緒不安定のことです(※3)。

出産を終えたママの30〜50%が発症するとされており、特徴的な症状として涙もろさがあります(※3)。ほかにも、落ち込みやイライラ、集中力の低下などの症状が現れる人もいます。

マタニティブルーズは、出産という一大イベントを終えた後の心の変化や育児に対する不安、ホルモンバランスの乱れといったことが重なって発症しやすくなります。一般的に自然と落ち着くことが多いですが、この時期の感情の乱れはママ自身もコントロールできません。

産後は感情の起伏が激しくなる可能性があることをパートナーや家族へ事前に伝え、気持ちが落ち着かないときは早めに医師に相談するようにしましょう。

産後うつになることも

産後うつとはその名の通り、産後に現れるうつ症状のことです。日本産婦人科医会によると、産後の女性の10~15%が発症するとされています(※4)。

マタニティーブルーズに加え、育児疲れ、パートナーや周囲のサポートを得られないことへの孤独感、家事と子育てを両立できないことへの罪悪感などが重なると、産後うつを発症してしまうことがあります。

どれだけ明るく元気な人でも産後うつになる危険性は十分にあり、放っておくと悪化してしまうことを心に留めておきましょう。

産後うつに気づくには?

産後うつが重症化すると、子どもへの虐待や自殺につながるリスクが高まる可能性があります。

産後うつは早期発見が大切ですが、自分で気づくのは難しいため身近な人との協力が必要不可欠です。

悩みや不安は、小さなことでもパートナーや周りの人、自治体の育児相談窓口などに遠慮なく相談しましょう。

産後ママの精神状態をはかる方法に「エジンバラ産後うつ病質問票」があります(※5)。

下記の記事に質問リストがあるので、産後に少しでも心の状態に不安を感じたらチェックしてみてくださいね。

産後に起こりうる変化を知っておこう!

産後、自分の心身に起こりうる変化を今から知っておくことで、いざ変化を感じたときに冷静に受け止められることもあります。また、事前にパートナーや家族に伝えることで、自分では気づきにくい心の変化を察知してもらいやすくなります。

赤ちゃんを元気に育てていくためにも、事前に産後に起こりうる変化を知って理解し、準備をしておけるといいですね。

監修医師:産婦人科医 藤東 淳也

産婦人科医 藤東淳也先生
日本産科婦人科学会専門医、婦人科腫瘍専門医、細胞診専門医、がん治療認定医、日本がん治療認定医機構暫定教育医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医で、現在は藤東クリニック院長。専門知識を活かして女性の快適ライフをサポートします。

※1 株式会社メディックメディア『病気がみえるvol.10 産科 第4版』p.36-37,367-368
※2 メジカルビュー社『プリンシプル 産科婦人科学2 産科編』p.167
※3 日本産婦人科医会「マタニティブルーズについて教えてください」
※4 日本産婦人科医会「産後うつ病について教えてください」
※5 日本産婦人科医会MCMC「EPDSダウンロード」

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