帝王切開が決まると術後の様子が気になりますよね。経腟分娩とはどのような違いがあるのでしょうか。
今回は、帝王切開後の過ごし方について、術後の痛みはいつまで続くのか、骨盤ベルトを使ってもいいのかなどをご説明します。
帝王切開の術後の過ごし方は?
帝王切開をした当日は、ママは酸素マスクや点滴、尿の管などを付けた状態で、できるだけ横になったまま安静に過ごします。
帝王切開した翌日には血液検査が行われ、術後の経過に問題なければ食事がはじまります。
経腟分娩なら産後5日前後で退院となりますが、帝王切開の場合は傷口や痛みが落ち着くまで様子を見る必要があるため、退院までにおよそ7日前後かかることが多いです(※1)。
帝王切開の術後、痛みはいつまで続く?
帝王切開後にママが感じる主な痛みは、「後陣痛」と「傷口の痛み」です。
後陣痛
後陣痛は、妊娠で大きくなった子宮が産後に収縮して元の大きさに戻っていくときに起こる痛みです。帝王切開と経腟分娩、どちらで出産したママにも共通する痛みで、産後2~3日がピークとなり徐々におさまっていきます(※1)。
母乳を出す作用があるオキシトシンというホルモンには、後陣痛を促進する作用もあるため、授乳の最中にはさらに後陣痛を強く感じることもあります。
傷口の痛み
帝王切開の手術中は麻酔が効いているためほとんど痛みを感じませんが、術後に麻酔が切れると傷口の痛みを感じるようになります。
術後直後の夜から産後2日目くらいまでが痛みのピークとなり、その後は徐々に落ち着いてきます。
ただし、寝返りをうったり咳をしたりと、お腹に刺激が加わる場面では痛むこともあるので、あまり無理しないようにしましょう。
帝王切開の術後、傷跡はいつまで残るの?
帝王切開の術後は、痛みのほかにお腹の傷跡がいつまで残るのかも気になるママが多いかもしれません。
個人の体質にもよりますが、切開したところの皮膚がミミズ腫れのように赤く盛りあがることがあります。また、術後しばらく経つとかゆみを感じることもあります。
傷跡の変化には個人差がありますが、術後3ヶ月もすれば赤みが引いて、1年もするとほとんどの傷跡は白っぽくなります。
年月が過ぎるごとに傷跡は目立たなくなっていきますよ。
ただし、体質や年齢によっては、傷跡がケロイドになってしまうこともあります。ケロイドを予防する薬もあるので、気になるママは産婦人科や皮膚科で早めに相談してみましょう。
帝王切開後は骨盤ベルトをしてもいいの?
産後の骨盤まわりは痛みが出やすい状態のため、骨盤ベルトを使いたいという人もいるかもしれませんが、帝王切開後は傷口を締めつけてしまう恐れがあります。
傷の回復を待つため、少なくとも術後1ヶ月ほどは骨盤ベルトの使用を控え、1ヶ月健診で医師に相談したうえでやわらかい腹帯などを巻くほうが安心です。
骨盤ベルトを着けてもいい時期については、かかりつけの産婦人科医に確認してくださいね。
帝王切開の術後に母乳は出る?
どんな出産方法であっても、産後はホルモンの作用によって母乳が作られます。帝王切開で出産したことが原因で、母乳が出づらくなるということはありません。
出産を終えてママのお腹から胎盤がなくなると、「プロラクチン」というホルモンの分泌が活発になり、母乳が作られるようになります(※1)。
ただし、母乳の出やすさや量については個人差が大きく、産後思うように母乳が出ないこともあります。授乳について悩んだときは、産婦人科医や助産師に相談してみてくださいね。
また、帝王切開の術後に痛み止めの薬を使っている場合、母乳をあげてもいいか不安に思う人もいるかもしれません。
病院では、授乳中に飲んでも母乳や赤ちゃんへの影響がほとんどない薬を処方してもらえるので、飲み方や量を守って適切に飲めば心配ありませんよ。
帝王切開の術後、夫婦生活はいつから?
一般的に、産後に夫婦生活を再開できるのは、1ヶ月健診で医師の許可が出てからとされています。
ただし、帝王切開の場合、手術の傷口が回復するまで待つ必要があり、術後2ヶ月以上空けてから夫婦生活を始めるように医師から指示されることもあります。
傷口が回復するスピードは人それぞれです。術後は体をいたわることを最優先に考え、医師の許可をもらってから夫婦生活を再開するようにしましょう。
帝王切開の手術では子宮を切り開いているため、回復するまで子宮に大きな負担をかけないために、次の帝王切開で分娩するまでは1年ほど空けるよう医師からアドバイスされます。
術後に夫婦生活を再開したあとも、避妊が必要な期間には個人差があるので、かかりつけの医師に確認するようにしましょう。
パートナーにも状況を理解してもらえるよう、夫婦でよく話し合っておきたいですね。
帝王切開後の妊娠・出産は注意が必要?
一般的に、帝王切開を経験したあとは、次の出産も帝王切開を勧められます。
帝王切開のあとに経腟分娩を行うと、帝王切開したときの傷口部分から裂けて、子宮破裂を起こすリスクが大きいためです(※1)。
次の出産を経腟分娩できるかどうかは、妊娠中の経過や分娩時の状況によっても異なり、母体と胎児の安全を最優先に考える必要があります。
起こりうるリスクなどについて医師の話をよく聞き、パートナーともよく話し合ったうえで決めましょう。
また、帝王切開を経験したことのある女性の場合、次の出産のときに胎盤が子宮壁と強く癒着し、赤ちゃんが生まれたあとに胎盤が自然に剥がれにくい「癒着胎盤」が起こって大量出血が起きる可能性もあります(※1)。
次の妊娠を希望する場合、こういったリスクについてもあらかじめ産婦人科医に確認しておきましょう。
帝王切開後の術後は、体の回復を最優先に
退院したあとは子どものお世話で忙しい毎日が始まります。しかし、帝王切開の傷口が回復して体力が戻るまで、無理は禁物です。家族と協力しながら、休めるときはしっかりと体を休めましょう。
監修医師:産婦人科医 藤東 淳也
日本産科婦人科学会専門医、婦人科腫瘍専門医、細胞診専門医、がん治療認定医、日本がん治療認定医機構暫定教育医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医で、現在は藤東クリニック院長。専門知識を活かして女性の快適ライフをサポートします。
※1 株式会社メディックメディア『病気がみえるvol.10 産科 第4版』p.132, 331, 364, 365, 371