「最近疲れやすくなったと思ったら妊娠していた」「妊娠がわかってから体がだるい日が増えた」など、妊娠初期に疲労を感じるのはなぜでしょうか。
今回は、妊娠初期に疲れやすくなる原因のほか、少しでも快適に日常生活を送れるよう、おすすめの対策法についてもご説明します。
妊娠初期に疲れやすい原因とは?
妊娠初期は、見た目はまだそれほど変わらないものの、体内ではさまざまな変化が起こっています。具体的には、次のようなことが原因で「疲れやすい」と感じる妊婦さんが多いと考えられます。
ホルモンバランスが変わる
まず、妊娠すると「ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)」というホルモンが作られはじめます。hCGによる刺激で、女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンの分泌が増え、体内のホルモンバランスが大きく変化していきます(※1)。
プロゲステロンには基礎体温を上昇させる作用があるため、分泌が盛んになると、体温がいつもより少し高くなり、ボーっとしたり、だるさを感じやすくなったりします(※2)。
さらに、このようなホルモンバランスの変化により、わけもなくイライラしたり気分が落ちこんだりと精神的に不安定になり、それが疲労感につながることもあります。
つわりで体力を消耗する
個人差はありますが、妊娠初期はつわりがつらく、思うように食事や水分を摂れない人も多くいます。何度も吐き気をもよおしたり、嘔吐を繰り返してしまったりすると、体力を消耗してしまいます。
貧血気味になる
妊娠すると、初期のうちから体内の血液循環量が増加します。一方で、血液中で酸素を運ぶヘモグロビンの濃度が低くなるので、貧血気味になることもよくあります(※3)。
この貧血によるフラフラも、妊娠初期の疲れやすさにつながっていると考えられます。
心拍数が上がる
妊娠初期の後半、妊娠12週(妊娠4ヶ月)頃から、心臓から全身に送り出される血液量(心拍出量)が増えていき、妊娠前と比べて30~60%も増加します(※3)。普段よりも心拍数も増えているため、疲れやすくなるのも納得ですよね。
妊娠初期に疲れやすい人におすすめの対策は?
妊娠初期は赤ちゃんの器官や胎盤などが作られる大切な時期なので、理想としては、妊娠初期の間はできるだけ無理をせず、ゆっくり休みたいところです。
しかし現実には、仕事や家事があるとなかなかゆっくりできませんよね。まだ安定期に入る前だと、妊娠したことを周りに言いづらく、普段どおりアクティブに動いてしまう人も多いのではないでしょうか。
そんな忙しい妊婦さんたちには、妊娠初期の疲労対策として次の2つがおすすめです。
アロマの香りで気分転換する
お風呂上がりや夜寝る前に、アロマの香りでリラックスするのはいかがでしょうか。
妊娠初期の場合、アロマオイルとして肌につけると、妊娠経過や胎児に影響することがあるので、使用する前に確認しましょう(※4)。ボトルから手で扇いで香りをかぐだけでも、気分がリフレッシュできますよ。
妊婦さんには、気分がすっきりする柑橘系のオイルがおすすめです。しかし、つわりで匂いの感じ方が変わることもあるので、そのときにいい匂いだと感じる香りのオイルを使うといいでしょう。
なお、妊娠中はあまり使わない方が良いとされるアロマの種類もいくつかあるので、下の関連記事を参考に選んでみてくださいね。
マタニティヨガや簡単なストレッチを行う
マタニティヨガやストレッチなどの軽い運動も、疲労回復や気分転換に効果的です。妊娠中に定期的に運動を続けることで、腰痛などのマイナートラブルが改善されることも期待できますよ(※4)。
ただし、妊娠初期は体調が変わりやすい時期なので、自己判断せず、かかりつけ医に相談しながら運動量を決めてくださいね。脱水症状を起こさないよう、こまめな水分補給も大切です。
妊娠初期に疲れやすいときは無理をしないで
妊娠前はアクティブに動き回っていた人は特に、ちょっとしたことで疲れやすく感じるとフラストレーションが溜まったり、心配になったりするかもしれません。
疲れたと感じたときは、くれぐれも無理をしないようにしましょう。家族などの理解と協力を得ながら、健康に安定期を迎えられるといいですね。
監修協力:看護師・助産師小児科 岡 美雪さん
看護師・助産師を免許を取得後、未熟児病棟、脳神経外科病棟、産科病棟で医療業務に従事。その後、医療現場での経験を活かして、青年海外協力隊の看護職としてアフリカに2年間駐在し、現地の医療技術向上に貢献。日本に帰国後、現在は大学院で助産学の研究活動をしている。
【参考文献】
※1 株式会社メディックメディア『病気がみえるvol.10 産科 第4版』p.35
※2 株式会社メディックメディア『病気がみえる Vol.9 婦人科・乳腺外科 第4版』p.10
※3 日本産科婦人科学会「正常妊娠の管理」p.90
※4 南江堂 『エビデンスをもとに答える妊産婦・授乳婦の疑問92』pp.82-84