出産後しばらくして、泣いている赤ちゃんをあやそうとしたときに、「おへそが出ている!」と気づいて不安になってしまうママやパパは多いかもしれません。このまま様子をみていてもいいのか気になりますよね。
今回は、赤ちゃんのでべその原因や治し方などについてご紹介します。
「でべそ」とは?
「でべそ」とは、本来凹んでいるはずのおへそが飛び出ている状態のことをいいます。
でべそと一言で言っても、皮膚だけが飛び出している「臍突出症(へそとっしゅつしょう)」と、腸も飛び出している「臍ヘルニア」に分かれます。
赤ちゃんのでべそのほとんどは臍ヘルニアといわれていて、約10人に1人の割合で起こります(※1)。
赤ちゃんが泣いたりいきんだりしてお腹に力が入ったときに、おへそ部分が4〜5cmほどのピンポン玉大にふくれ上がることもあります。
赤ちゃんのでべその原因は?
赤ちゃんのでべそは、へその緒が取れたあとにお腹の筋肉がうまくくっつかず、腸が飛び出した状態になることで起こります。そのため、押さえると腸が「ぐちゅぐちゅ」といった音を立てることがあります。
出産時のへその緒の切り方が悪いとでべそになると聞いたことがあるかもしれませんが、医学的な根拠はありません。
赤ちゃんのでべそは放っておくと危険なの?
でべそには危険がないのか心配になりますが、弾けたり破けたりはしないので安心してくださいね。
ただ、赤ちゃんの肌は弱いので、赤ちゃんが気にして引っかいたり触ったりしないように気をつけてあげてください。
でべそが大きくなるとびっくりすると思いますが、心配はいりませんよ。ただし、でべその部分が赤い、嘔吐がある、不機嫌であるといった症状が見られる場合には腸が圧迫されているおそれがあるので、すみやかに病院を受診してください。
赤ちゃんのでべそは自然に治るの?
赤ちゃんのでべそは、寝返りやハイハイができるようになると腹筋が発達することで次第に小さくなっていきます。
1歳までに約80%、2歳までに90%程度が自然に治るといわれているので、焦らずに小児科の医師と経過を観察しましょう(※1)。
赤ちゃんのでべその治し方は?
現在の治し方は、経過観察が主流です。
おへその見た目のために、かぶれにくいフィルムを使ってスポンジで押さえつける「スポンジ圧迫法」という治療が行われることもあります(※1)。
気になる場合はまずかかりつけの小児科医、あるいは小児外科に確認してみてくださいね。
家でできるケアとしては、おへそのあたりを清潔に保ってあげるといいでしょう。
「5円玉をおへそに張りつける」「ガーゼを丸めたものをばんそうこうで張りつける」などの方法は、赤ちゃんの肌がかぶれてしまったり、蒸れて細菌が繁殖して湿疹などの皮膚感染症の原因になってしまったりすることがあるため行わないようにしてくださいね。
赤ちゃんのでべそに手術は必要?
2歳を過ぎても治らず気になるという場合は、でべその手術をするかどうか小児科医と話し合いをしましょう。
手術する場合、でべその周辺を切開して、腸が出ている部分を縫って閉じてもらいます。
手術は入院が必要となり全身麻酔や点滴などが行われるので、子どもの負担は大きいです。
就学前の子どものでべそは自然に治る可能性があるので、医師と相談しながら手術をするか決めてくださいね。
でべそ(臍ヘルニア)の手術の入院日数は子どもの年齢によっても変わってきますが、異常がなければ2泊3日ほどで退院できることが多いです。
経過に問題がなければ、幼稚園や保育園、学校は退院翌日から行って良いとしている病院がほとんどです。
術後の痛みは数日ほど続き、徐々に軽減されていきます。しばらくは痛みが気になって触ってしまう子どももいるかと思いますが、細菌感染などを防ぐためにも触ったり引っかいたりしないように、ママ・パパがしっかりと見てあげてくださいね。
赤ちゃんのでべその手術費用はどれくらい?
でべそ(臍ヘルニア)の手術費用は、保険が適応されます。ほとんどの場合、乳幼児医療証があれば無料となり、入院中の食事代やおむつ代などの費用負担のみとなることもあります。
手術費用の補助に関しては、自治体によっても異なるので、詳しくは住んでいる自治体の担当窓口にご確認くださいね。
赤ちゃんのでべそは経過を観察しよう
出べそは新生児によく見られますが、多くが自然に治ります。
赤ちゃんがでべそだと、「何とかしてあげたい」と思うママやパパは多いと思いますが、ばんそうこうやテープで押さえつけるといったような自己流の治療は控えて、小児科医の指示に従うようにしてくださいね。
監修医師:小児科 武井 智昭
日本小児科学会専門医。2002年、慶応義塾大学医学部卒。神奈川県内の病院・クリニックで小児科医としての経験を積み、現在は神奈川県大和市の高座渋谷つばさクリニックに院長として勤務。内科・小児科・アレルギー科を担当しています。感染症・アレルギー疾患、呼吸器疾患、予防医学などを得意とし、0歳から100歳まで「1世紀を診療する医師」として診療を行っています。
【参考文献】
※1 日本小児科学会「臍ヘルニア」