出産後、「授乳がこんなに大変だと思っていなかった」と感じるママも多いのではないでしょうか。母乳が思うように出なかったり、夜中も授乳に追われてほとんど寝られなかったり…特に新生児期は、授乳に関する疑問や悩みが多いものですよね。
今回は新生児の授乳の仕方について、与える回数・量や抱き方の種類、姿勢のコツなどをご紹介します。
新生児の授乳の仕方は?回数や量は?
産後はママと赤ちゃんの体調をみながら、助産師さんに母乳やミルクの与え方を指導してもらいます。
完全母乳育児を希望していても、母乳の分泌量が少なかったり赤ちゃんがおっぱいを上手く吸えなかったりするため、状況に応じてミルクも与えることも多いです。
母子同室の場合は、基本的に昼夜を通して赤ちゃんが欲しがったり泣いたりしたときに授乳をします。
母子同室でない場合は、病院の方針にもよりますが産後数日は母体の回復を優先し、助産師さんがミルクを与えてくれることもあります。
退院時までに、母乳がどれくらい出ているか、赤ちゃんがどのくらい飲めているかなどをしっかりみてもらい、退院後の授乳方法を確認しておきましょう。
退院後の授乳の回数や量は以下が目安となります。
新生児期の母乳やミルクの回数・量
● 母乳:欲しがるときに欲しがるだけ与える(※1)
● ミルク:退院時に指導された1回の授乳で飲ませる目安量を参考にして、基本的に欲しがるときに与える
母乳の分泌量や赤ちゃんの飲む量には個人差があるので、欲しがるときに欲しがるだけ母乳を与えるのが難しい場合は、1日に少なくとも8回与えることを目標としてみてくださいね(※1)。
授乳時の姿勢・抱き方の種類は?フットボール抱きって何?
赤ちゃんに母乳を与えるときの抱き方には、次にご紹介するようにいくつかの種類があります。
ママが母乳を与えやすい抱き方と、赤ちゃんが飲みやすい体勢を見つけましょう。
ただ、いつも同じ抱き方ばかりをしていると、乳頭に負担がかかって亀裂ができたり、吸い残しの部分が出て乳腺炎を引き起こしたりすることもあります。
新生児期からいろいろな抱き方を試したり、意識的に姿勢を変えたりするようにしてくださいね。
横抱き
横抱きは、授乳の基本的な抱き方です。飲ませるおっぱい側の腕で赤ちゃんの頭を支え、胸の高さに抱き寄せます。
まだ体が小さい新生児期は、授乳用クッションなどを使って顔の位置を高くしてあげると授乳しやすくなりますよ。
縦抱き
縦抱きは、座ったママの太ももに赤ちゃんを向かい合わせで座らせる抱き方です。
横抱きに比べて赤ちゃんの顔の位置が高くなるので、口と乳首の位置をあわせやすくなります。
体が小さい新生児でも飲みやすいのが特徴です。
斜め抱き(交差横抱き)
斜め抱きは、飲ませるおっぱい側とは反対の腕で赤ちゃんの後頭部を支えながら赤ちゃんの体全体をママに引き寄せる抱き方です。
横抱きだけでは飲み残しがある部分を吸ってもらうことができます。
フットボール抱き
フットボール抱きは、赤ちゃんをラグビーボールのように小脇に抱え、脇から頭をおっぱいの方に、足はママの体の後ろ側に出す抱き方です。
授乳クッションや布団で高さを調節すると、腕も疲れず授乳しやすくなります。乳首が短い、陥没している、扁平などのママにもおすすめです。
新生児期の授乳のコツは?どんな姿勢がいいの?
このように授乳時の抱き方にはさまざまな種類がありますが、うまく授乳をするためには以下のような共通のコツがあります。
赤ちゃんの顔をまっすぐ乳頭に向ける
赤ちゃんの顔が乳頭に対して斜めになっていると乳首を浅くしか吸えず、母乳を十分に飲めなかったり、乳頭を傷つけたりする原因になることがあります。
乳頭に対して赤ちゃんの顔がまっすぐになるようにクッションなどで高さを調節しましょう。
赤ちゃんの体をよじらせない
体は仰向けなのに顔だけ横向き、というように赤ちゃんの体がよじれた状態になると。顔がおっぱいから離れやすくなり、乳首を浅くしか吸うことができなくなります。
赤ちゃんの耳・肩・腰のラインがまっすぐになるように抱きましょう。
前・左右に傾かないようにする
ママの体が前かがみになったり左右に傾いたりすると、肩や背中に負担がかかります。
また、安定した姿勢をとれないと、赤ちゃんがうまく飲めなくなることもあります。ママが座り心地が良い、リラックスしていると感じられる姿勢を取るようにしましょう。
体を真っすぐ支えるために背もたれや肘掛のある椅子に座ると、体が前や左右に傾きにくくなるのでおすすめですよ。
新生児に授乳するときの注意点は?
ママも赤ちゃんもストレスなく授乳するためには、赤ちゃんが飲みやすい抱き方や体勢、角度などを見つけてあげることが大切です。
「乳輪部までしっかりくわえられているか」「乳房で赤ちゃんの息がしづらい状態になっていないか」に注意しながら、赤ちゃんがスムーズに飲んでいるかを授乳中に確認してみてください。
赤ちゃんが飲みやすい抱き方や体勢はどれなのか、角度はどのあたりがいいのかを授乳を繰り返す中で覚えていきましょう。
新生児の授乳は少しずつ慣らしていこう
新生児期の授乳は慣れないことも多く、これでいいのかと不安や戸惑いを覚えるかもしれません。そんなときは、出産した病院などの母乳外来を受診して、母乳の出や赤ちゃんの飲み方、おっぱいの状態などをみてもらうといいでしょう。
相談するときには、授乳をした時間や回数などの記録があると便利です。普段から授乳記録をつけるようにしておくといいですね。
監修専門家:助産師 佐藤 裕子
日本赤十字社助産師学校卒業後、大学病院総合周産期母子医療センターにて9年勤務。現在は神奈川県横浜市の助産院マタニティハウスSATOにて勤務しております。妊娠から出産、産後までトータルサポートのできる助産院では、日々多くのママたちからの母乳相談や育児相談を受けています。具体的に悩みを解決でき、ここにくると安心してもらえる、そんな助産師を目指しています。
【参考文献】
※1 こども家庭庁「授乳のギモン解消ガイド」