切迫流産になると、「自宅で安静にして過ごすように」と医師からいわれることがあります。しかし安静にするといっても、何をどこまで気をつければいいのか分かりにくいですよね。
そこで今回は、切迫流産で自宅安静となったときの注意点や過ごし方などをご紹介します。
切迫流産で自宅安静するときの過ごし方は?
切迫流産とは、妊娠22週未満で「流産のリスクが通常より高い状態」のことです。切迫流産は今のところ有効な治療法はありませんが、妊娠を継続できる可能性があります(※1)。
腹痛や出血などの症状が重くなければ、医師から2〜3週間程度の自宅安静を指導されるのが一般的です。
症状の重さには個人差があるので、具体的には医師の指示に従うことになりますが、基本的には下記の過ごし方を参考にしてくださいね。
家事
料理や洗濯、掃除など家事全般は、体に負担がかかってしまいます。
普段家で行っている行動はできる限り制限し、パートナーや家族に協力してもらったり、家事代行や宅配サービス、ネットスーパーなどを活用したりしましょう。
お風呂
自宅安静中は、お風呂に浸かること自体は問題ありません。しかし、入浴は思っている以上に体力を消耗するので、長湯は避け、シャワーだけの日と組み合わせながら過ごすのがおすすめです。症状によっては入浴を控えるよう指導される場合もあります。
トイレ
トイレは、基本的に通常どおり行っても問題ありません。しかし、階段の上り下りは体に負担がかかるので、トイレが違う階にある場合はそのフロアで過ごすようにしましょう。
仕事
自宅安静を指導された場合は、仕事を休職するのが基本です。
休職の際は上司に申し出をすれば問題ありませんが、説明がしづらい場合や勤務先が証明できるものを必要とする場合は、かかりつけの医師に「母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)」を書いてもらいましょう。
休職だけでなく、勤務時間の短縮や作業の制限などの項目もあるため、勤務先での相談がしやすくなりますよ。
また、切迫流産での自宅安静が理由で仕事を4日以上休んだ場合、給料の3分の2が健康保険から手当金として給付される「傷病手当」という制度を利用できます(※2)。詳しくは、勤務先の健康保険の窓口に相談してみてくださいね。
性行為
一般的に、妊娠中の性行為は問題ないとされていますが、切迫流産の診断を受けた場合は控えるようにしましょう。
切迫流産で自宅安静するときの注意点は?
切迫流産で自宅安静となった際は、以下のことに注意して過ごすようにしましょう。
お腹に力を入れる・屈伸を伴う動き
重いものを持ったり、階段の上り下りをしたりすると、お腹に力が入ってしまうため注意が必要です。
スクワットやストレッチなどの軽い運動はもちろん、床に落ちているものを拾うなどのちょっとした動きも、積み重なると体に負担をかけてしまうおそれがあるので、気をつけるようにしてくださいね。
外出
「自宅安静」という言葉どおり、指示された期間内は病院の受診以外で外出をすることは避けてください。どうしても外出しなければいけない用事がある場合は、自己判断をせずに、かかりつけ医に相談してからにしましょう。
通院の際は、車の運転はせず、家族に送ってもらうかタクシーを利用するなど安全な方法で移動するようにしてくださいね。
切迫流産で安静にしなかったらどうなる?
切迫流産で自宅安静を指導されたにもかかわらず、体への負担をかけ続けたり、激しい運動をしたりすると、緊急入院や流産につながるおそれがあります。
切迫流産と診断されても妊娠継続の可能性があるので、自宅安静を指導されたら必ず医師の指示を守って安静に過ごすようにしましょう。
ベッドで横になって過ごす時間が長くなるので、「暇だった」という妊婦さんが多いですが、お気に入りの映画や本に没頭したり、好きな音楽を聴いてリラックスしたりする時間が増えたととらえて、無理せず過ごせるといいですね。
監修医師:産婦人科医 藤東 淳也
日本産科婦人科学会専門医、婦人科腫瘍専門医、細胞診専門医、がん治療認定医、日本がん治療認定医機構暫定教育医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医で、現在は藤東クリニック院長。専門知識を活かして女性の快適ライフをサポートします。
※1 日本産科婦人科学会「流産・切迫流産」
※2 全国健康保険協会「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」