「子供が小さいうちはテレビを見せない方が良い」と世間で囁かれるなか、「赤ちゃんがいる部屋でテレビをつけているだけでも良くないの?」「いつまでもテレビをつけない生活はつらい」と、葛藤しているママやパパは多いのではないでしょうか。
そんななか、赤ちゃんにテレビを見せる時間や距離などを決めて、上手に付き合っているママも多くいます。
そこで今回編集部では、「赤ちゃんとテレビの付き合い方」についてアンケートを実施(※1,2)。赤ちゃんとテレビの上手なつき合い方を、ママと専門家に聞きました。
半数以上が赤ちゃんにテレビを見せている
2歳未満の子供・赤ちゃんのいるママに「子供・赤ちゃんにテレビを見せていますか?」と質問したところ、6割以上の人が「はい」と回答。
一般的に「2歳以下の子どもには、テレビ・ビデオを長時間見せないようにしましょう(※3)」といわれる中で、実際は多くの家庭が2歳以下の子供にもテレビを見せていることがわかりました。
アンケートでは、同時に「赤ちゃんにテレビを見せることに関する悩み」も聞いてみました。
1歳以上の子供がいるママから多く挙げられたのは、「赤ちゃんにテレビを見せる時間や距離」のこと。
生後6ヶ月頃の赤ちゃんがいるママから多く挙げられたのは、「テレビをじっと見ていなくても、赤ちゃんがいる部屋でテレビをつけているだけでもダメなのか」という内容でした。
テレビを赤ちゃんに見せている時間と距離
それでは、実際に「赤ちゃんにテレビを見せている」と回答した方は、どれくらいの時間、どれくらいの距離で見せているのでしょうか。
赤ちゃんにテレビを見せている時間
赤ちゃんにテレビを見せている1日の総時間を見てみると、特に多かったのは「約1時間」「3時間以上」、次いで「約2時間」という結果でした。
また、1回あたりの時間を見てみると、長くても1時間程度ということがわかります。
時間帯を分けて短時間ずつ視聴しているケースも考えられますが、1日の総時間と比べてみると、連続して数時間見せているケースも少なくないようです。
赤ちゃんとテレビとの距離
赤ちゃんにテレビを見せるときの距離で特に多かったのが、1~2m。意外と距離を保って見せていることがわかりますね。
月齢が低い赤ちゃんの場合は視力が未熟なので、テレビ画面ははっきり見えていないかもしれません。ママやパパが寝かせた位置から、音だけを聞いている可能性もあります。
ですが、自分で動けるようになると、楽しさにひきつけられてぐんぐん近づいてしまうので、成長したらテレビガードなどで距離を作ってあげましょう。
赤ちゃんにテレビを見せるときに
意識しているポイント
実際に赤ちゃんにテレビを見せている家庭では、どんなことに気をつけているのでしょうか?
赤ちゃんにテレビを見せるときに「意識しているポイント」について、上位5位をご紹介します。
順位 | 意識しているポイント |
1位 | 音量を下げて見せる |
2位 | テレビから2メートルは離れさせる |
3位 | 時間帯を決めている |
4位 | 1回に30分以上続けて見せない |
5位 | おやつやご飯を食べながら見せない |
特に多かったのはこちらの5項目ですが、少数意見のなかで印象的だったものも併せてご紹介します。
合間にコミュニケーションをとって、テレビだけをずっと見続けることがないようにしています。(ジェーンさん/子供:生後6ヶ月)
ジッと見せるのではなく、一緒に歌ったり踊ったりしています!(うよさん/子供:1歳半)
部屋を明るくするように意識しています。また、赤ちゃんがテレビを見ているときは一緒に見るようにして、内容に応じて話しかけることもしています。(かんさん/子供:生後6ヶ月)
テレビが赤ちゃんにとって良くないといわれる理由の1つに、会話のない一方通行なコミュニケーションによって、『意味のある言葉(有意語)の出現が遅れる率が高まるから』というものがあります。(※3)
月齢が低いうちは、ママやパパが見るためだけにテレビをつけているケースも少なくありません。
ママやパパがテレビに夢中になってしまい赤ちゃんとのコミュニケーションが減らないように、音量を下げて見るのは1つの配慮かもしれません。
1歳前後で赤ちゃんがテレビの内容をわかるようになってきたら、コミュニケーションを取りながら見せること、時間や距離を決めて見せること、家族のマナーを守りながら見せることを意識してみると良いですね。
先輩ママのリアルな疑問!
専門家に聞く赤ちゃんとテレビのつきあい方
ここでは、アンケートで集まった「テレビと赤ちゃん」に関するママのリアルな疑問について、専門家の先生に回答していただきました。
ママたちの疑問・質問に応えてくれたのは、日本小児科学会専門医である武井先生、助産師歴25年の河井さんです。
斜視になりやすいというのはホント?
赤ちゃんにテレビを見せることで「斜視」が多くなっているとよく聞きます。実際はどうなのでしょうか。どれくらいの距離があれば影響しませんか?(はっちさん)
斜視より、近眼になりやすくなります。テレビの大きさにもよりますが、最低でも1mは離した方が良いですね。
赤ちゃんの視界に入るだけでもダメですか?
わが家では、1日中テレビをつけっぱなしにしています。ずっと画面を見ているわけではありませんが、赤ちゃんの視界にはテレビ画面が入っていると思います。それでも悪影響が出たりしますか?(うたぺそさん)
長時間、じっと画面を見続けていなければ影響することは少ないでしょう。
まったく影響しないとはいえないので、テレビをつけている時間を短めにしたり、テレビと距離をとるようにしてみてください。
家事の間だけでも1人で見せるのは良くない?
テレビなどを見せていないと、家事をする時間が確保できません。テレビはあんまり見せたくないのが本音ですが、見せざるをえないときが結構あります。
手を離せないときだけでもテレビを見せるのは、良くないことですか?(ちぇるりらさん)
それくらいなら問題ないでしょう。「見せると毒」というわけではなく、赤ちゃんが1人でテレビを長時間見ているということがなければ、大丈夫です。時々「何が出てきた?」「好きな歌だね」と声をかけてあげるといいですね。
兄弟がいると「2歳まで見せない」のは難しい…
「2歳まではテレビを見せない方がいい」と聞きますが、現実的にはテレビを見せない方が難しいと思います。
特に年が離れた兄弟がいる場合、上の子はテレビやDVDを見たがりますが、下の子も同じ部屋にいます。このような場合、どのように対応したらいいのでしょうか。(紬ママさん)
できれば、「〇〇が出てきたね」「赤い車だね」と、コミュニケーションを取りながら、親も一緒に見るといいですね。
また、歌やダンスが出てきたときは、赤ちゃんの手や身体などを動かしてあげると楽しい時間になるでしょう。
2歳までテレビを見せては「いけない」の?
「赤ちゃんにはテレビを見せない方が良い」といわれていますが、実際はどのような内容が提言されているのでしょうか。
赤ちゃんとテレビのつき合い方に関して、日本小児科学会の提言を見てみましょう(※3)。
提言
● 2歳以下の子どもには、テレビ・ビデオを長時間見せないようにしましょう。内容や見方によらず、長時間視聴児は言語発達が遅れる危険性が高まります。
● テレビはつけっぱなしにせず、見たら消しましょう。
● 乳幼児にテレビ・ビデオを一人で見せないようにしましょう。見せるときは親も一緒に歌ったり、子どもの問いかけに応えることが大切です。
● 授乳中や食事中はテレビをつけないようにしましょう。
● 乳幼児にもテレビの適切な使い方を身につけさせましょう。見おわったら消すこと、ビデオは続けて反復視聴しないこと。
● 子ども部屋にはテレビ・ビデオを置かないようにしましょう。
ここで注目したいのは、「2歳以下の子どもには、テレビ・ビデオを長時間見せないように」ということ。
「2歳以下には絶対に見せてはだめ」と認識しているケースが多いかもしれませんが、「絶対に見せてはだめ」ということではないのです。
とはいえ、むやみに見せてしまうと、赤ちゃんの発達に悪影響を与える可能性があると考えられています。
赤ちゃんへの影響も考え、先輩ママたちが意識しているポイントや専門家の意見を参考にしながら、テレビとつきあっていけると良いですね。
赤ちゃんとテレビ、上手なつき合い方をみつけよう
これまで好きなように見ていたテレビ。赤ちゃんが生まれたことで気にしなければならないことも増え、悩んだり不安になったりすることもありますよね。
なかには「テレビをまったく見せない」という方法を選択するケースもありますが、そういった環境が難しい場合は、上手につきあう方法を知ることが大切です。少しずつ取り入れてみてくださいね。
※1 アンケート概要
実施期間:2019年3月11日~3月12日
調査対象:0~4歳の子供を育てているママ
有効回答数:942件(赤ちゃん・子供とテレビ)
収集方法:Webアンケート
※2 アンケート概要
実施期間:2019年3月11日~3月12日
調査対象:0~4歳の子供を育てているママ
有効回答数:1110件(授乳中のテレビ)
収集方法:Webアンケート
※3 日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会「乳幼児のテレビ・ビデオ長時間視聴は危険です」
取材協力:小児科/高座渋谷つばさクリニック 武井智昭先生
日本小児科学会専門医。2002年、慶応義塾大学医学部卒。神奈川県内の病院・クリニックで小児科医としての経験を積み、現在は神奈川県大和市の高座渋谷つばさクリニックに院長として勤務。内科・小児科・アレルギー科を担当しています。感染症・アレルギー疾患、呼吸器疾患、予防医学などを得意とし、0歳から100歳まで「1世紀を診療する医師」として診療を行っています。
取材協力:助産師、看護師/エミリオット助産院 河井恵美さん
看護師・助産師の免許取得後、大学病院、市民病院、個人病院等に勤務。救急、外科外来等も経験し、看護師教育や思春期教育にも関わっていました。助産師の仕事が大好きで、25年以上この仕事をしています。青年海外協力隊でコートジボアールとブルキナファソに赴任した後、国際保健を学ぶために兵庫県立大学看護学研究科修士課程に進学・修了。2008年から夫の仕事関係により、シンガポールに住んでいます。2人の子どもを育てつつ、現地の産婦人科に勤務し、日本人の妊産婦さん方に関わっています。